Jun 20, 2024 column

第49回:南仏 アヌシー国際アニメーション映画祭2024  ーコンペ映画13作品を予告編とともに一挙公開! 

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ミスフィット、社会に馴染めない主人公たちが魅力

コンペのクリスタル賞を受賞した映画『Memoir of a Snail(原題)』(2024) は、映画の題名(原題訳:カタツムリの記憶)から、小林一茶のかたつむりが登場する俳句を思いおこさせる哀愁のある秀作。アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞したオーストラリア出身の奇才アダム・エリオットの過去作『ハーヴィー・クランペット』(2003) も、ポーランド生まれのある男の誕生から老いまでを描き、名優ジェフリー・ラッシュのナレーションがマッチした感動作。現在、YouTubeで全編が視聴できる。長編『Memoir of a Snail』は、かたつむりと本の虫である少女グレースが主人公。幼いときに兄と別れ、さまざまな逆境を経験。不安障害に見舞われて日常生活にも支障をきたすほどのグレースは、たくましい年配の女性ピンキーに出会い、日常の喧騒の中で、生きる希望を見出すという珠玉のオーストラリア製作クレイ・アニメーション映画である。

スタジオジブリ作品の北米配給で知られるGKIDSがすでに北米権利を購入した『きみの色』(2024) もまた、登場人物3人がミスフィット。どこか周囲とそぐわないティーンが集まってバンドを結成していくのだが、彼らの不思議な魅力はスクリーン・デイリー誌でも高評価。「キュートさを残しながらも、日常の事柄にまごついたり悩んだりと、思春期の男女の描き方のバランスが卓逸している。主人公が共感覚者ということもあり、色で人柄を想像するという行為もどこか夢のような美意識で、ソフトな映像と主人公の目線が一体となっている。」と、山田尚子監督の人気作『映画 けいおん!』(2011) の全世界評価も受けて、全米公開も期待されている。

GKIDS配給の日本発音楽映画『BLUE GIANT』(2023) がジャズファンに熱く支持されていたのが去年。今年のアヌシー、コンペ作品の中で唯一、アニメーション・ミュージカルに挑んだのが、事故でバンドのドラマーとしての生命をたたれたシンガー・ソングライター、ロバート・ワイアットのソロ・アルバムを映画のタイトルにした『Rock Bottom(原題) 』(2024) 。コアな音楽ファンを射止める詩的なアニメーション映画は大人向けで、ロコフィルムがセールスを担当。監督はマリア・トレノーでスペインとポーランドの合作映画。