アカデミー賞のノミネーションが1月23日午前(現地時間)に発表された。日本からは3部門にノミネートされ、長編アニメーション賞にスタジオジブリの『君たちはどう生きるか』、国際長編映画賞には、役所広司主演、ヴィム・ヴェンダース監督作品『PERECT DAYS』、日本作品で視覚効果賞初ノミネートとなった『ゴジラ-1.0』と賑やかな結果となった。今年は伝記映画のラインアップも目立ち、作品賞ほか7部門でノミネートされている『マエストロ : その音楽と愛と』はアメリカを代表する世界的指揮者で作曲家レナード・バーンスタインの私生活の苦悩を描いた作品。昨年、日本でも劇場公開済みのリドリー・スコット監督のスペクタクル大作『ナポレオン』は、美術賞、視覚効果賞、衣装デザイン賞の3部門でノミネート。64歳でキューバからフロリダまでの外洋を泳いで渡るという偉業を果たしたダイアナ・ナイアドの実話をもとに描かれた『ナイアド〜その決意は海を越える〜』は主演女優賞アネット・ベニング、そして助演女優賞ジョディ・フォスターと2大俳優がノミネートされるなど、今年も伝記映画が熱い。
アカデミー賞7部門ノミネートの『マエストロ : その音楽と愛と』
俳優ブラッドリー・クーパーが2019年に『アリー/ スター誕生』で主演兼、初監督としてアカデミー賞でノミネートされたのは記憶に新しい。監督として、再度、音楽映画に挑んだ意欲作がこの『マエストロ : その音楽と愛と』。指揮者カラヤンと人気を二分するほどクラシック音楽界の指揮者として有名なレナード・バーンスタインを知っている人でも、ミュージカル「ウェスト・サイド物語」(1957)を経て、作曲家として躍進した頃のマルチな音楽家の私生活を知る人は少ない。大成功したバーンスタインが同性愛に目覚めてからの心の葛藤は、音楽以上に激しく高鳴る壮絶なドラマとして描かれている。
俳優・監督として、プロデューサー、スティーヴン・スピルバーグのお墨付きをもらい、監督としての腕をあげたブラッドリー・クーパーも本作で主演男優賞にノミネート。彼の妻役を演じた、『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)などのキャリー・マリガンも主演女優賞にノミネートされている。実際に女優として活躍していた女性フェリシア・モンテアレグレが、どのような経緯でバーンスタインと恋におちて家庭に入り、社交界での体裁を保つために自らの苦悩を押し殺す妻となっていくかを熱演している。
作品賞、主演男優賞、主演女優賞、脚本賞、音響賞、撮影賞にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞のチームの1人として日本出身アメリカ人、カズ・ヒロ氏がノミネートされている。『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)などで知られる監督ギレルモ・デル・トロは、『ナイトメア・アリー』(2021)の主演ブラッドリー・クーパーの監督業を、製作前から応援していたようで、デル・トロ監督によって特殊メイクにカズ・ヒロが推薦されるなど、デル・トロ監督が仕切る和やかなインタビューがアカデミー前哨戦用でも注目されていた。