Jun 16, 2023 column

第33回:M3GAN から学ぶ!AI時代の子育て戦略

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監督ジェラルド・ジョンストンのAI時代の親目線

アメリカではニコラス・カーダラス著「グロー・キッズ」という本から親への警告が発信されたように、iPadなどの 画面から目が離せない子供たちの教育問題は、子を持つ監督ジェラルド・ジョンストンにとっても他人事ではなかったようである。ミレニアル世代以降の子供たちは、スマートスピーカーのアマゾンのアレクサや、スマートフォンの携帯、例えばiPhoneのSiriに話しかけ、「今日の天気は?」「トップチャートの音楽をかけて!」など、コンピューターに指令して、知りたい情報を得る行為は当たり前。AIがベビーシッターになったら、親と子供の関係はどうなるのかという問いは監督にとっても重要な課題。映画では、自らの都合でスクリーンタイムなしというジェマの最初のミスが、そのあとのプロットを大きく動かしていく。

M3GANの目的はジェマに教えられた事ただ一つ。ケイディの傷ついた心を癒し、一番の理解者になって守ってあげること。しかし、M3GANはAI。彼女の好奇心はジェマのコマンドを待たずに自身のAI頭脳をアップグレードしていき、死について、そして人間の悪意について学んでいく。いわばM3GANは勉強熱心な子供なのである。かわいいフランス人形だったM3GANが、キラードールと変貌していく過程はごく自然で、ときにはざっくばらんなフェミニストであるM3GANの考え方に賛同したくなるシーンまで登場する。AIだからこそ可能なプロファイリングで人間を区分し、その弱みにつっこみ、ときには、動物の声を真似て、隣人をおびき寄せるなど、ケイディが嫌がる全てを排除していく。しかし、そのターゲットが自らを作り上げたジェマになったとき、フランケンシュタインと生みの親のバトルを見るかのように、物語は血みどろのホラーの恐怖に包まれていくのである。