A24スタジオが目をつけた新しい才能、監督チーム“ダニエルズ”
2007年のフィルム・インディペンデント・スピリット賞以来、作品賞ノミネートの対象上限は20万ドルだったが、今年から30万ドルまでに引き上げられている。（ 参考リンク：スピリット・アワード賞選考基準表 ）
全世界興収一億ドルを突破した映画『エブエブ』の監督は日本ではまだ知られていない監督ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートの2人組。“ダニエルズ”という相性で知られる監督2人組はDJスネイクとラッパー、リル・ジョンのミュージックビデオで注目されたあと、サンダンス・インスティテュートの映画ラボで『スイス・アーミー・マン』を開発。
アドバイザーの一人だった監督クエンティン・タランティーノが「君たちがどんな方向を目指しているか分からないけれど、脚本の最後で泣けてきたよ。」と後押し。見事、2016年のサンダンス映画祭で監督賞を受賞し、A24が映画の配給権を買い取るという夢の切り札を手に、新人映画監督デビューしたのである。（ 参考リンク：The Filmmakers Behind ‘Swiss Army Man’ on Making Tarantino Cry and Finding Magic in the Macabre ）
彼らの映画は一見、破天候に見えるが、ダニエルズがモットーにしている映画作りの信念は最初から変わっていない。サンダンス・ラボに参加した際のダニエル・クワン監督のインタビューでは、「映画『スイス・アーミー・マン』では、俳優ダニエル・ラドクリフのおならのシーンが何かと注目されて批評されているが、ぼくたちの仕事は何かしら恥ずかしいとか、良くないとされていることを映画の中で取り上げ、その中に秘められている大事な部分を描くことで、他人の気持ちを理解するやさしい気持ちになれるんだ。」といたって真剣なのである。
『エブエブ』の撮影は6週間。ほとんどがロサンゼルス、その近郊のシミ・バレーのビルの中でおこなわれ、20から30の多元宇宙を一軒家を借り切って、丸一日で撮影した日が最も充実していたと低予算で作る醍醐味も語っている。ダニエル・クワン監督は幼い頃、香港出身の父親と香港カンフー映画を観て育ち、いかに、この映画のアクションをリアルに仕上げるかを、カンフー映画ファンや専門のスタントマンを募ってリサーチし、笑いもあるアクションシーンを完成させたという。（参考リンク：Jamie Lee Curtisインスタグラム）
相棒のダニエル・シャイナート監督、そしてプロデューサーのジョナサン・ワンとともに、今年8月にユニバーサル映画と5年間の契約を結ぶという快挙も成し遂げ、すでにユニバーサル映画と組んでいる監督ジョーダン・ピールなどと並んで、今後の米コンテンツ界を盛り上げていくようである。
文 / 宮国訪香子
破産寸前のコインランドリーを経営するエヴリンは、気が弱く優柔不断な夫、いつまでたっても反抗期の娘、ボケているのに頑固な父を抱え、更に税金申告の締め切りが迫りテンパりモード、まさに人生どん底状態。そんな彼女が国税庁の監査官に厳しい追及を受けている最中に、突然、夫のウェイモンドに連れていかれたのはなんと並行世界(マルチバース)‥‥。めくるめく三千世界に迷い込んだ彼女の前に現れたのは、「僕は君の夫じゃない。別の宇宙(ユニバース)から来た“僕”だ」と言う、見違えるようにたくましい夫。さらに「マルチバース全体に巨大な悪が。君だけがそれを止められるんだ。」と告げられたエヴリンは救世主へと覚醒?! カンフーマスターばりの身体能力を手に入れた彼女は全人類の命運を掛けた壮大な闘いに挑んでいく。
監督：ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
出演：ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティス
配給：ギャガ
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2023年3月3日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
公式サイト gaga.ne.jp/eeaao/
