May 04, 2023 column

これぞ問題作 行儀良くなんていられない若者の熱き番狂わせ「サンクチュアリ -聖域-」

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今年のゴールデンウィークは最大9連休と長めのお休み。otocotoでは4月29日から5月6日まで、選りすぐりの人気作・話題作を毎日紹介します。明日のことを考えず、夜更かしが許されるこの機会に話題となっている配信オリジナルの映画、ドラマシリーズを一気見してはいかが?

挑戦的な主人公とドラマ内容

本日5月4日にNetflixで独占配信が開始されたドラマ「サンクチュアリ -聖域-」。控えめに言って問題作だ。

作品の舞台は大相撲。神事として日本に受け継がれてきた、1,500年以上続く我が国の伝統文化は、アンタッチャブルなまさに聖域<サンクチュアリ>だ。

この誰も侵すことができないサンクチュアリに挑む主人公は、北九州出身のヤンキー、小瀬清。彼は大金を稼ぐためだけに力士を目指す。稽古では頭突きに噛みつき、取り組み相手にはガン飛ばす彼は、礼節を重んじる相撲業界で、問題児として関係各所から目をつけられる。本ドラマシリーズは、そんな手のつけられない人生崖っぷちの荒くれ者が力士としてのし上がり、人間としても成長していく姿を描く。

主人公、小瀬清こと力士・猿桜役に、元プロ格闘家の一ノ瀬ワタル。同門の関取を夢見るもやしっ子に染谷将太、猿桜をスカウトした親方役にピエール瀧、その妻で部屋の女将役に小雪らが出演。清の両親に、きたろうと余貴美子、相撲番の記者として田口トモロヲ、忽那汐里、その他、松尾スズキ、岸谷五朗ら実力派豪華キャスト陣が、この物語に熱を加える。

先に問題作と書いたのは、稽古中、気合を入れるために行われるかわいがり、旧態依然とした大相撲協会とその内部にある力関係、八百長疑惑、タニマチとの関係性、これまでなにかと問題視され報道されてきた角界の暗部と呼ばれている部分が、どぎつく描かれているからだ。

それでも自分を曲げずに「角界ぶっ壊す!」と中指を立てる猿桜に、スカッとすると同時に笑いが込み上げてくる。かといって、物語は相撲を否定してるわけではない。

猿桜は柔道経験者で、強かったからスカウトされた。自分自身、稽古をしなくても勝てる自信があった。しかし先輩力士にまったく歯が立たない。文字通り砂を噛む日々が続くなか、ある出来事をきっかけに「四股を踏んだところで強くなれない」といった考えを改め、四股を踏むようになる。小瀬清が猿桜として活躍していくにつれて、視聴者は物語に相撲の魅力に引き込まれていく。

また猿桜のライバル力士役に「ノーサイド・ゲーム」に出演した元ラガーマンの佳久創、2017年に引退した元大相撲力士の住洋樹と、屈強な体格の俳優をキャスティングしており、映像が嘘っぽくなっていない。リアリティーという点で、「力士は歌がうまい」「女将さんが美人ばかり」など、いわゆる我々が感じている”相撲あるある”が盛り込まれているのも面白い。

一方で主人公・猿桜のキャラクターが、こちらが礼節を重んじる力士像とかけ離れている。先輩力士の情報を売って小遣いを稼ぎ、タバコを吸ってラウンジ嬢と遊び、株に手を出しクラブで暴れる。かと思えば、巨乳に釘付けになる女性に対してはピュアな一面があったり、悪態をつきながらも家族を大事に想っていたりと、案外いい奴でもある。キャラクターそれ自体が個性的ゆえ、「次は何をしでかすのか」と観るものを飽きさせない。

本ドラマシリーズは、主人公同様、聖域と呼ばれる日本の伝統文化へ果敢に挑んでいる。Netflixだからこそできたと思われる、ともすれば炎上しそうな内容かもしれない。全世界配信されるこのドラマを日本人である我々が目を背けてはいけない。

作品情報
「サンクチュアリ -聖域-」(全8話)

借金・暴力・家庭崩壊…と人生崖っぷちで荒くれ者の主人公・小瀬清が、若手力士“猿桜”として大相撲界でのし上がろうとする姿を、痛快かつ骨太に描く人間ドラマ。猿桜を筆頭に、相撲愛に溢れながらも体格に恵まれない清水や、相撲番に左遷された新聞記者・国嶋ら、ドン底でもがく若者たちの“番狂わせ”がはじまる。

監督:江口カン

出演:一ノ瀬ワタル、染谷将太、忽那汐里、田口トモロヲ、きたろう、毎熊克哉、住洋樹、佳久創、戌井昭人、おむすび、寺本莉緒、安藤聖、金子大地、仙道敦子、澤田賢澄、石川修平、義江和也 、小林圭、めっちゃ、菊池宇晃、余 貴美子、岸谷五朗、中尾彬、笹野高史、松尾スズキ、小雪、ピエール瀧

2023年5月4日(木) Netflixにて世界独占配信

公式サイト netflix.com/jp/title/81144910