キャメロンらが唱えるハイフレームレート
そんな映画界において、ハイフレームレート(以下HFR)の必要性、すなわち既存の24fpsより高いフレームレートが必要だと唱える人物が出てくる。それが、映画における映像技術の革命家ジェームズ・キャメロンである。
キャメロン監督が提唱するのは、3D上映に対してのHFRの必要性だ。ご存知の通り、3Dは映像に立体的な奥行きをもたらし、観客に対して“そこにある”と錯覚させる表現方法である。キャメロン監督によると、既存の24fpsでは動きのあるシーンで映像がブレてしまうが、HFRにすることで全体がくっきりと描写され、観客はより現実と錯覚できるのだという。事実、キャメロン監督は2009年の『アバター』で倍の48fpsで撮影したかったそうだが、時期尚早と判断して24fpsにしている。2021年に全米公開予定の『アバター2』(仮)では、3D&HFRでの上映になる模様だ。
そしてキャメロン監督同様、3DにおけるHFRの必要性を感じ、いち早く48fpsでの上映を導入したのがピーター・ジャクソン監督の『ホビット』三部作(12・13・14年)だ。3D&48fpsでの上映は、設備の問題で一部の劇場に限られたが、その映像体験はすさまじく、初めて目の当たりにするヌルヌル動く“48fpsの映画”は、いつもの映画とは違う何かを感じるに十分なものだった。
彼らが3Dという表現方法で追求しているのは“映画っぽさ”ではなく、映画体験をより現実へと近づけること。そのためにはHFRという新しい概念が必要不可欠なのだ。
3Dという映像表現に魅せられたアン・リー
そんな3DとHFRに表現の可能性を追求する、もう一人の監督がアン・リーである。2003年の『ハルク』でデジタル技術に興味を持ったリー監督は、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』で自身初の3D作品に挑んだ。そこで3Dという表現方法に新たな可能性を見出した彼は、2016年に全米公開された『ビリー・リンの永遠の一日』で4Kカメラによる3D、そしてHFRを導入。ラスト12分のみではあるが、そのフレームレートは通常の作品の5倍にあたる驚異の120fps。この超高フレームレートでリー監督が狙ったのも、やはり圧倒的な臨場感による観客の疑似体験だ。そしてリー監督によれば、120という超高フレームレートでは、役者の演技がより自然に見えるのだという。
しかし、同作はあまりのハイスペックに、対応できる上映劇場が限られ過ぎてしまい、作品は一定の評価を得たものの、日本では劇場未公開。監督の意図した映像で本編を観ることができた人は、かなり限られた人数だったはずだ。