Feb 25, 2026 column

次の“宮崎駿”を狙い続ける海外の主要映画祭の中で、ベルリン国際映画祭という社交界デビューを果たした『花緑青が明ける日に』

A A
SHARE

次の宮崎駿はどこに

日本のアニメブームは、もはや世界の映画界、もといエンタメ界を席巻している。Hayao Miyazakiブランドは、老若男女が知るところ。かつて「アルプスの少女ハイジ」や「キャプテン翼」が世界では自国制作のアニメと思われるほどに浸透しているように、日本のアニメは字幕版であっても、ハイレベルなクオリティと (海外の人たちにとっては) 奇想天外なストーリー構成で、世界中を魅了している。そんな中、世界の主要映画祭は、“次の宮崎駿 (スタジオジブリ) ”に出会うため、熾烈な攻防戦を繰り広げており、ベルリン国際映画祭もその先頭に立って獲得合戦に参加している。

今回ベルリン国際映画祭が、コンペティション部門に堂々と長編デビューさせた新作アニメ『花緑青が明ける日に』。原作・監督・脚本は日本画家である四宮義俊監督。ワールド・プレミア上映での舞台挨拶では「(この映画のテーマにある) 花火というのは、日本では8月に打ち上げるもので、故人を偲ぶ意味だったり、第二次世界大戦で亡くなった方の慰霊の意味もあったり、お祭りという側面と鎮魂という側面があります」と述べ、時代の波に流される老舗花火工場を舞台に奮闘する若者を描いた本作で伝えたかった強いメッセージを述べた。

『花緑青が明ける日に』レッドカーペットにて (左から入野自由、四宮義俊監督、萩原利久) ©2025 A NEW DAWN Film Partners

第 52 回ベルリン国際映画祭で金熊賞を (同時) 受賞した『千と千尋の神隠し』(宮崎駿 監督) でハク役を演じ、『花緑青が明ける日に』にも声優として参加した入野自由は、同作で主人公の声を担当した萩原利久とベルリン入り。宮崎作品のキャラクターの一人を演じた入野の知名度は高く、レッドカーペットなど公の場所での積極的にファンサービスを行っていた。


同映画祭は、過去 (第73回) にも新海誠監督の『すずめの戸締り』(2022) で、アニメーション作品を長編コンペティション部門にノミネートしており、定期的に日本のアニメーション作品をピックアップして世界に紹介し続けているが、長編アニメデビューの監督作品を一気にコンペティションに持ち上げてきたことに関しては、海外メディアからは「日本アニメに対するベルリンの挑戦的な賭け」とも言われている。

カンヌ国際映画祭は、2024年にスタジオジブリに対して宮崎駿監督と高畑勲監督の功績を讃えて(団体に向けては史上初の) 名誉パルムドール賞を授与している。過去には押井守監督の『イノセンス』(2004) が日本アニメとして初のコンペティション部門にノミネート、その後は『かぐや姫の物語』(2013 / 高畑勲監督) や『未来のミライ』(2018 / 細田守監督) などが紹介されてきた。一方、ヴェネチア国際映画祭でも、積極的に日本アニメは寵愛されており、2004年に『ハウルの動く城』(宮崎駿監督) 、2006年には、今やカルト的作品と昇華されている『パプリカ』(今敏監督) などがコンペティション部門に選出されており、ヴェネチアは元々日本アニメ&漫画の文化が他の欧州以上に広く浸透しているため、三大映画祭の中でも最も日本アニメに寛容な映画祭と言われ続けている。

 ©2025 A NEW DAWN Film Partners

そこで、今欧州の中でも最も日本のアニメ&漫画需要が急増しているドイツのベルリン国際映画祭でも“次世代の日本アニメ”の頂点を見出すべく、今回の四宮義俊監督が大抜擢されたと見られている。四宮義俊監督は、新海誠監督をリスペクトしていると公言しており、今回のベルリンでのデビューをきっかけに大きな世界の映画界に飛び出してもらいたい。ベルリンのような三大映画祭の一つが、こういう新しい挑戦をし続けてくれることは、後進の映画人たちにとっても大きな励みにもなり、先に述べたヴィム・ヴェンダース監督の発言の余波の大きさを含めて、良くも悪くも活性化されていることが如実に感じ取れたベルリン国際映画祭であった。

文・写真 / 高松美由紀

第76回ベルリン国際映画祭2026

1951年に設立、来場者数が毎年30万人、上映作品数約600本という規模はヴェネツィア国際映画祭よりも遥かに大きく、ヨーロッパではカンヌ国際映画祭などと並び最も重要な国際映画祭である。ヨーロッパの映画祭の中でもインディペンデント映画やアジア映画を多く紹介するのが特徴。

開催:ドイツ・ベルリン

映画祭:2026/02/12 ~ 2026/02/22

公式サイト https://www.berlinale.de/

作品情報
映画『花緑青が明ける日に』

「その花火は、宇宙を切り取ったんだ――」 老舗の花火工場・帯刀煙火店は、町の再開発により立ち退きを迫られている。そこで育った帯刀敬太郎は、蒸発した父に代わり幻の花火<シュハリ>を完成させようと独りで奮闘していた。夏の終わりの日、東京で暮らす幼馴染のカオルが地元に戻ってきた。敬太郎の兄で市役所に勤める千太郎から立ち退き期限が明日と知らされ、4年ぶりの再会を果たす3人。失われた時間と絆を取り戻すようにぶつかり合いながら、花火の完成と打ち上げを巡る驚きの計画を立てるのだが――。幻の花火に託された希望と、その鍵を握る「花緑青」。火の粉が夜を照らし、新しい朝を迎えるとき、敬太郎たちが掴むそれぞれの未来とは?

原作・脚本・監督:四宮義俊

出演:萩原利久、古川琴音、入野自由、岡部たかし

©2025 A NEW DAWN Film Partners

2026年3月6日(金) 全国公開

公式サイト hanaroku

高松 美由紀

スイス特派員
1973年生まれ、兵庫県出身。アメリカの大学卒業後、(株)トライアルで映画宣伝に従事。その後、東京国際映画祭はじめ国内外の映画祭にて運営や広報を経験しながら、映画の宣伝などを続ける。1999年から(株)TBSテレビにて、映画専門の海外セールスチームに所属、「下妻物語」「NANA」「日本沈没」など日本映画を海外に販売、映画祭への出品などを経験、退社後の2013年に(株)Free Stone Productions(映画&アニメなどの国内外PRおよび海外展開を提供する会社)を立ち上げ、現在も継続しつつ、合同会社Wonder M(ワンダーエム)でスイスを拠点にエンタテインメントの魅力を発信中。