Feb 12, 2026 column

意外と知られていない、ヨーロッパ最大規模のロッテルダム国際映画祭 懐の深さでは、群を抜いて世界一

A A
SHARE

「NETPAC賞 (最優秀アジア映画賞)」の審査員として参加した経験

この映画賞は、映画祭とは独立した賞で、主催であるNETPAC (Network for the Promotion of Asian Cinema=アジア映画のプロモーション向けネットワーク)が独立映画賞として運営している。1990年に設立され、カンヌやヴェネチア、ベルリンなどの三大映画祭はもちろん、世界60以上の映画祭で設けられ、アジア映画の国際的評価を担う重要な賞として位置付けされている。今回も通常の規定にのっとって、新人監督の1~2作目を対象として審査、今年は合計で14作品が審査対象となっていた。

日本映画も『ペリリュー 楽園のゲルニカ』(久慈悟郎監督)と『遺愛』(酒井善三監督)がノミネートされていたが、最終的には審査員スペシャル・メンションとして2024年大韓民国非常戒厳令の緊迫の6時間を描いた韓国のドキュメンタリー『The Seoul Guardians』(Kim Jong-woo監督、Kim Shin-wan監督、 Cho Chul-young監督)と、大賞にはフィリピンの田舎で家庭内暴力をふるっていた父親がある日、近所の友達に殺されてから対峙する少年の感情を描いた『i grew an inch when my father died』(P. R. Monencillo Patindol監督)に授与することができた。審査期間の1週間、朝から深夜近くまで毎日2〜3作品を観続け、審査員たちと対象作品の映画製作過程やバックグラウンドなどを議論し、最終日は審査員だけが密室に籠り、お弁当をご用意いただいた上で、最終審査。その後、審査理由の文言を一語一句作文して、賞状を準備したり、クロージング・セレモニーのリハーサルなどを重ね、発表に至った。審査中においては、隔離された環境で対象作品に対峙する空間を作るべく、映画祭の専任スタッフが会期中全ての上映や食事会に同席して、徹底した審査環境の管理をしていた。

今回、審査を通して改めて見えてきたのが、ロッテルダム国際映画祭と日本映画の相性の良さである。オランダ人の自由で寛容な国民性が映画祭の運営の端々に反映されており、そのため異国の文化を受け入れることに対してハードルが低い観客が集まっており、世界一ふところが深い映画祭であることが、全ノミネート作品からも再認識する事ができた。その上で、日本からはアニメ映画をはじめ『8番出口』のようなゲーム・ベースの企画映画、モノクロで構成された原発反対を真っ向から訴える『こんな事があった』のような硬派な作品までが招待されており、これからもロッテルダムは“個性上等”の感性で、世界からの映画を受け入れ続けるのだろう、と実感した。

文・写真 / 高松美由紀

第55回 ロッテルダム国際映画祭2026

1972年に設立、来場者数が毎年30万人、上映作品数約600本という規模はヴェネチア国際映画祭よりも遥かに大きく、ヨーロッパではカンヌ国際映画祭などと並び最も重要な国際映画祭である。ヨーロッパの映画祭の中でもインディペンデント映画やアジア映画を多く紹介するのが特徴。

開催:オランダ・ロッテルダム

映画祭:2026/01/29 ~ 2026/02/8

公式サイト https://iffr.com/en/

高松 美由紀

スイス特派員
1973年生まれ、兵庫県出身。アメリカの大学卒業後、(株)トライアルで映画宣伝に従事。その後、東京国際映画祭はじめ国内外の映画祭にて運営や広報を経験しながら、映画の宣伝などを続ける。1999年から(株)TBSテレビにて、映画専門の海外セールスチームに所属、「下妻物語」「NANA」「日本沈没」など日本映画を海外に販売、映画祭への出品などを経験、退社後の2013年に(株)Free Stone Productions(映画&アニメなどの国内外PRおよび海外展開を提供する会社)を立ち上げ、現在も継続しつつ、合同会社Wonder M(ワンダーエム)でスイスを拠点にエンタテインメントの魅力を発信中。