日本のアニメは特別枠か?
今年のアウト・オブ・コンペティション部門では、細田守監督が自身の新作『果てしなきスカーレット』という挑戦作を披露、声優として参加している芦田愛菜と岡田将生もベネチア入りし、改めて2人は細田守監督の欧米での人気ぶりを目の当たりにして感激した様子であった。
今年の映画祭トレンドとしては、5月開催のカンヌ国際映画祭に完成が間に合わなかった新作やNetflixなどのデジタル配信会社が製作に関わる新作が大集結し、近年稀に見る“大豊作“と言われていた。また、今年はトロント国際映画祭(9月4日―14日)の開催期間がヴェネチアと数日被ってしまったため、前半戦に欧米の作品が一気にお披露目されていた。
そんな中、細田守監督の新作はベネチアでは後半戦に参戦しており、筆者としても少しだけ寂しくなったベネチアの映画祭会場で、どのように本作が受け入れられるのか、不安であったが、そんな思いは杞憂であった。彼の欧米におけるマイルストーン的作品『バケモノの子』(2015)がフランスの最老舗映画配給会社であるGaumont(ゴーモン) に見そめられて以降は、着実に細田ファンが欧米に根付いており、今回のベネチアでの記者会見会場も、蓋を開けてみたらほぼ満席の状態で海外メディアから熱い視線が向けられていた。今までのベネチアは、世界に独自の目線で紹介し続けてきた。過去には、宮崎駿監督、今敏監督、押井守監督らのように、商業的なアニメーション映画も作りながら独自の世界観を構築し続けているクリエーター達を、どの映画祭よりも大事にしてきている。そして、この系譜に乗った細田守監督もまた、一見、特別枠に見られがちな“日本のアニメ”というジャンルで紹介されていると錯覚されがちだが、実はジャンル関係なく世界トップクラスの映画人達と対等に戦っているのだ。そんな安定感が如実に実感できる、細田守監督の新作発表であった。
