世界で活躍する映画レジェンドたちが次々登場
2021年から本映画祭のトップ・ディレクターに就任しているジオナ・A・ナッザロ氏は、ここ数年のロカルノの作品傾向が、より芸術性を求めカンヌとヴェネチアの狭間で新人発掘に躍起になっていた傾向から、もっと娯楽性を求めるラインアップやゲストを集めて、欧州の映画界とのバランスを再構築している。そして、今年はカンヌの話題作はもちろん、現地プレスの注目作の一つでもあったルーマニアの鬼才ラドゥ・ジューデによる新作『ドラキュラ』など、ロカルノらしい作品が目白押し、日本人の監督による作品も3作品が紹介されていた。『旅と日々』(三宅唱監督)と『たしかにあった幻』(河瀨直美監督)は、インターナショナル・コンペティション部門にて、『まっすぐな首』(空音央監督)はパルディ・ディ・ドマーニ部門にてそれぞれ、ワールドプレミアとして上映され、世界に向けてお披露目された。



また、今年のゲストとしてキャリア・レオパード賞を受賞し、『プロジェクトA』(1983)と『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985)の上映にも登壇したジャッキー・チェンを一目見ようとする観客が世界中から大挙、全ての上映がソールド・アウトしていた。
レオパード・クラブ賞を受賞したエマ・トンプソンは、スペシャル・トークイベントで「両親の影響で映画業界には近い距離にいたが、まさか自分が女優になるとは思ってもいなかった。最初は政治的な風刺を入れたスタンダップ・コメディなどもやっていたのよ」と述べ、1997年ごろ、当時はビジネスマンであったトランプ氏からいきなりデートの申し込み電話をもらい、丁寧にお断りしたが「あの時、彼とデートしていたらアメリカの歴史は変わっていたのかも」と回顧し、ちょうどアメリカからスイスへの輸入関税が39%に引き上げられるというニュースがスイス中を駆け巡っていた時だったので、対談相手であったディレクターのナッザロ氏も苦笑いを浮かべていたが、彼女の出演作の上映やイベントもまた、ジャッキー・チェンと同様に、全て即完売の状況だった。