Jun 06, 2025 column

“ラブ・ジャパン”の流行は、世界で熟成されている! 1本のビデオテープから始まり、規模拡大を続ける世界最大の日本映画祭ニッポン・コネクション

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国籍を超える日本映画、続々

今回、自身がプロデュースに関わった作品 (『アイヌプリ』(2024 / 福永壮志監督) 、『Black Box Diaries』、『ウィール・オブ・フェイト~映画『無法松の一生』をめぐる数奇な運命~』(2020/山崎エマ監督) 、『HAPPYEND』(2024/ 空音央監督) が本映画祭で上映されていたニューヨーク出身の映画プロデューサーであるエリック・ニアリ氏に話を伺うことができた。ニアリ氏が最近タッグを組む監督の共通点として“監督本人が海外での経験やバックグラウンドを持つ”人であるということだが、ニアリ氏曰く「それは、あえて人選している」ということであった。また、彼が何を持って企画を通しているのか、という点に関しては「儲かる・儲からない、で映画の企画を選んだことは一度もない。自分でしかできない企画であるかどうか、が唯一の判断基準」と断言した。また、彼は「最近の日本映画の監督やプロデューサーは“カンヌの呪縛”に囚われすぎてしまって、創作活動において遠回りしているような気がする。それぞれの作品に合った映画祭に出品していくことの重要性をもっと考えた方が良い」と述べる。

「日本映画界には、いろんな課題がある。お金集めの限界、国の支援、配給会社のマンネリ的な思考回路、現場の熱量だけで編集を判断する現場の制作力‥‥。でもそれ以上に、僕と同年代の監督たちの才能が面白い。」と明確に語るニアリ氏やニッポン・コネクションに集まる人たちを見ると、まだまだ日本映画のポテンシャルには余白があるような気がした。

文・写真 / 高松美由紀

第25回 ニッポン・コネクション2025

2000年に設立され、NPO法人ニッポン・コネクションの、主にボランティアで活動するチームによって運営されている。日本映画に関する世界最大のプラットフォームであり、毎年初夏にドイツのフランクフルト市内の複数の会場で開催。過去には、桃井かおり、豊田利晃、若松孝二、塚本晋也、緒方明 、平沢剛、荒井晴彦 、篠崎誠、河崎実、山下敦弘、廣木隆一、佐藤信介、堤幸彦、熊切和嘉、安藤サクラ、武正晴、西川美和、緒方明、田口トモロヲ、山村浩二、行定勲、渋川清彦、阪本順治、役所広司らといった映画人たちが本映画祭に参加。

開催:2025/05/27 ~ 2025/06/01

公式サイト: https://nipponconnection.com/

高松 美由紀

スイス特派員
1973年生まれ、兵庫県出身。アメリカの大学卒業後、(株)トライアルで映画宣伝に従事。その後、東京国際映画祭はじめ国内外の映画祭にて運営や広報を経験しながら、映画の宣伝などを続ける。1999年から(株)TBSテレビにて、映画専門の海外セールスチームに所属、「下妻物語」「NANA」「日本沈没」など日本映画を海外に販売、映画祭への出品などを経験、退社後の2013年に(株)Free Stone Productions(映画&アニメなどの国内外PRおよび海外展開を提供する会社)を立ち上げ、現在も継続しつつ、合同会社Wonder M(ワンダーエム)でスイスを拠点にエンタテインメントの魅力を発信中。