Jun 06, 2025 column

“ラブ・ジャパン”の流行は、世界で熟成されている! 1本のビデオテープから始まり、規模拡大を続ける世界最大の日本映画祭ニッポン・コネクション

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冷静に、映画を通して日本の潮流を見守り続けるニッポン・コネクション

もう一つの特徴として、本映画祭では<日本の今>を見守り続ける取り組みが重視されていることが挙げられる。本映画祭がもともと純朴な大学生達の思いつきによる企画として誕生した経緯もあり、初年度から一貫して日本映画に対する学術的なセミナーやイベントを実施している。毎年、フランクフルト大学の日本学科および映画学科との共催企画が行われ、国内外の多くの日本映画専門家を招き、レクチャーや討論会を開催している。今年実施されたセミナーの一つ、Kinema Club 2025では、「日本映画はどこに向かうべきか?」という大枠のお題をもとに、活発な議論が交わされ、参加者には地元であるフランクフルト大学以外にもハーバード大学、イエール大学、ミシガン大学、明治学院大学などの教授や学生が多く参加。1960年代の日本のサラリーマン社会を反映した映画『ニッポン無責任時代』(1962 主演:植木等)や、故・黒沢和雄監督がかつて手がけた原子力発電を想起させるPR映画までを取り上げつつ、現代の日本映画の傾向などが議論された。通常は、華やかなレッドカーペット、上映、そしてマーケット(映画の売買)の3点で構成される映画祭が多いが、ニッポン・コネクションは、日本映画および日本文化に興味を持つ初心者へは映画を通して五感(食、音楽、ビジュアルなど)に訴えるエンタメを提供しつつ、上級者へはよりアカデミックなイベントなども楽しんでもらえるように構成されている、唯一無二の映画祭として位置付けられる。