Dec 01, 2023 column

悪魔に呪われているのか!? 黒歴史を祓う新作『エクソシスト 信じる者』

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『エクソシスト 信じる者』は、1973年公開の『エクソシスト』(ウィリアム・フリードキン監督)から始まるシリーズ最新作という位置づけだ。悪魔に憑依された2人の少女をめぐる壮絶な物語。娘が同じ経験をした過去を持つ母親クリス・マクニール役を、オスカー女優のエレン・バースティン(90)が50年ぶりに演じるのが話題になっている。

悪魔に呪われたシリーズ化

映画史上、オカルト映画は数多く作られてきたが、『エクソシスト』だけは別格だろう。刑事アクション『フレンチ・コネクション』(1971)のウィリアム・フリードキン監督が、ウィリアム・ピーター・ブラッティの原作・脚本を映画化した本作は1973年12月26日に全米公開され、全世界興収4億4107億ドルの大ヒットとなった。

フリードキンは『フレンチ・コネクション』でも見せたリアリズムを、オカルト映画にも持ち込み、キリスト教社会のアメリカを恐怖に陥れた。アカデミー賞でも、作品賞、監督賞、主演女優賞など主要9部門にノミネートされ、脚色賞、音響賞に輝いた。この大ヒット、評価を受け、日本では翌74年7月13日に公開。配給収入27億3000万円、洋画第1位を記録し、全世界的な社会現象となった。

その後も、悪魔ブームは続く。洋画配給会社はこぞってホラー映画を輸入し、『悪魔のシスター』『悪魔のはらわた』『悪魔のいけにえ』など邦題に“悪魔”を取り入れ、1976年には悪魔の子をめぐるオカルト映画の第1弾『オーメン』(リチャード・ドナー監督)も製作されている。

では、『エクソシスト』はどんな話だったのか。

考古学者でもあるメリン神父(マックス・フォン・シドー)がイラクの古代遺跡の発掘現場で悪魔パズズの偶像を発見し、不吉な予感を覚える。パズズとはアッカドに伝わる風と熱風の悪霊。ライオンの頭と腕、ワシの脚、背中には5枚の翼とサソリの尾を持つ魔神だ。

舞台は変わって、米ワシントン近郊ジョージタウン。女優クリス・マクニール(エレン・バースティン)は娘リーガン(リンダ・ブレア)とともに教会近くの借家に住み、学園映画の撮影をしている。その家ではベッドが激しく揺れるなど怪奇現象が続き、リーガンは、自らを悪魔だと名乗り、汚い言葉を放つ。

© 1973 – Warner Bros. Entertainment

マクニールは娘を病院に連れていき、検査を受けさせるが、原因は分からずじまい。やがて、娘は顔も声も変わっていき、悪魔そのものになっていく。さらには、マクニールの友人で映画監督のバークがナゾの転落死を遂げる。その首は180度ねじ曲がっており、キンダーマン警部(リー・J・コッブ)も疑惑の目を向ける。クリスは、近くの教会にいたカラス神父(ジェイソン・ミラー)に助けを求め、悪魔との壮絶な戦いが始まる‥‥。

『エクソシスト』はその後、シリーズ化されたが、実は内輪もめの歴史だった。

77年には、映画オリジナルでリーガンのその後を描いた『エクソシスト2』(フリードキン製作、ジョン・ブアマン監督)が作られる。しかし、原作者のブラッディがこの出来栄えに激怒。90年には、ブラッディは自身が最もお気に入りのキャラ、キンダーマン警部(ジョージ・C・スコット)を主人公に正当な続編として『エクソシスト3』を製作している。

さらには、ポール・シュレイダー監督がメリン神父の若き日を描いた“エピソード0”というべき『ドミニオン』を製作。ところが、製作会社のモーガン・クリークが出来栄えに不満を持ち、レニー・ハーリンを監督に迎え、全面的に作り直したアクション風味の強い第4作『エクソシスト ビギニング』(2004)を製作。しかし、映画は興行的にも批評的にも大失敗。お蔵入りになっていた『ドミニオン』が2005年に公開されたが、こちらも成功とは言い難かった。

結局、最も高く評価されたのは第1作だ。2000年には、別エンディングや不気味なシーンなど15分の未公開シーンを加えたディレクターズ・カット版も公開され、再評価を得たが、このディレクターズ・カット版もオリジナル版の方が優れているという意見も根強い。