今年の年末はいかがお過ごしでしょうか? 予定のある方もない方も、いま話題となっている配信オリジナル作品をじっくり観るのにいい機会。otocotoでは選りすぐりの人気作・話題作をご紹介します。
DC映画ユニバースでお馴染みのザック・スナイダー版スターウォーズ
『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2017)や『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』(2021)などを手がけたDC映画ユニバースの“大将”ザック・スナイダーが、長年にわたるオリジナルの構想をついに具現化した。Netflix映画『REBEL MOON — パート1: 炎の子』は、彼がゼロから創り出した新たなユニバースの開幕作。自身初の2部構成による、壮大なSFスペクタクル巨編だ。
「宇宙を舞台にした『七人の侍』(1954)を作りたい」。スナイダーがそんな夢を最初に抱いたのは大学時代だったというが、本作はまさしく『七人の侍』にインスパイアされた、そしてザック・スナイダー版『スター・ウォーズ』ともいうべきストーリーである。
巨大銀河帝国・マザーワールドが宇宙を制する時代。帝国の支配を受けない衛星・ヴェルトで、主人公のコラ(ソフィア・ブテラ)は静かに暮らしていた。ところが突如、ヴェルトはノーブル提督(エド・スクライン)率いる帝国軍によって支配されてしまう。帝国との因縁を抱えたコラは、仲間を救うため反乱を決意。ヴェルトの農民・ガンナーと、銀河の反乱者たちを集める旅に出るのだった。仲間になるのは殺し屋のカイ、酒浸りの将軍タイタス、奴隷の戦士タラク、二刀流の女剣士ネメシス、そして戦士たちを率いるデブラ&ダリアン姉弟。ところが一同の前に、憎むべきノーブル提督が再び姿を現して‥‥。
キャリアの初期から『300〈スリーハンドレッド〉』(2007)や『ウォッチメン』(2009)などのスーパーヒーロー映画を手がけてきたスナイダーだが、この『REBEL MOON』もまぎれもなくスーパーヒーロー映画のひとつ。DCユニバースを離れたのち、Netflixで『アーミー・オブ・ザ・デッド』(2021)というオリジナルのゾンビ映画――『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)以来の原点回帰だった――を手がけたが、本作では再びスケールアップ。DC時代も冴えわたった世界設計の巧みさ、コミックに影響を受けたビジュアル演出は健在だ。
賛否が分かれがちなスナイダー作品だが、キャスティングの慧眼ぶりはハリウッドのスタジオや目利きの批評家も認めるところ。バットマン役にベン・アフレック、スーパーマン役にヘンリー・カヴィル、ワンダーウーマン役にガル・ガドットといった名采配は、すべてスナイダーのビジョンに基づくものだった。そして、彼らが演じるヒーローを最も愛しているのがスナイダー自身なのだ。どの作品でも俳優陣が魅力的に見えるのは必然だろう。
『REBEL MOON』では、コラ役のソフィア・ブテラが切れ味ばつぐんのアクションを見せ、相棒・ガンナー役のミヒウ・ハウスマンが細やかな心理表現で向こうを張る。脇を固めるメンバーも、チャーリー・ハナムやジャイモン・フンスー、そして久々のハリウッド作品となる韓国人女優ペ・ドゥナら演技巧者ばかりで、見せ場は短くとも確かなインパクトを残した。
筆者の注目は、強力な顔ぶれのなかで悪役をイキイキと演じるエド・スクラインと、スナイダーとのタッグはDC映画のサイボーグ役以来となるダリアン役のレイ・フィッシャー。役者としての魅力を知り尽くしたキャラクターとアクションが見どころだ。ロボット騎士・ジミー役を演じる、アンソニー・ホプキンスの声も世界観に渋みを与えている。
この『REBEL MOON』は本作を経て、『パート2: 傷跡を刻む者』(2024年4月19日配信)でさらなる展開を迎える。今後もR指定のディレクターズカット版やさまざまなメディアミックスが予定されているスナイダー入魂の新ユニバース、その第1弾をお見逃しなく。
文 / 稲垣貴俊
『REBEL MOON:パート2 傷跡を刻む者』
舞台は、巨万の富と政治力、そして軍事力を持つ巨大帝国“マザー・ワールド”が支配する銀河。主人公・コラが住む衛星“ヴェルト”は、そんな“マザー・ワールド”の支配を受けない平和なコロニーだったが、ある日突然、彼らは侵略を開始する。コラは“ヴェルト”の人々を守るため“マザー・ワールド”に挑むことを決意し、共に戦う有能な戦士を探し始める。そして、それぞれ異なる世界から来たはみ出し者、反乱分子、農民、孤児らを集め、小さな戦士団を結成。衛星“ヴェルト”に帝国の脅威が迫る中、銀河の運命をかけた戦いの火蓋が切られる。
監督:ザック・スナイダー
出演:ソフィア・ブテラ、ジャイモン・フンスー、エド・スクライン、ペ・ドゥナ、レイ・フィッシャー、チャーリー・ハナム、アンソニー・ホプキンス
『REBEL MOON:パート1 炎の子』 Netflixにて世界独占配信中
『REBEL MOON:パート2 傷跡を刻む者』 2024年4月19日(金) Netflixにて世界独占配信