Jun 12, 2020 column

脚本家 岡田惠和が描くリモートドラマ 吉田羊×大泉洋W主演「2020年 五月の恋」

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間違い電話から毎日電話するようになった元夫婦。さて4日目はどうなる? というシンプルなストーリーだが、岡田惠和が書いた会話劇は軽妙で、情報と笑いが過不足なく盛り込まれ、毎回、ふたりが強がっているところと弱いところと、緩急自在の脚本と芝居で楽しめる。吉田は、大泉を「間や呼吸を読むのがうまい人」と信頼していて、そのとおり、大泉と吉田の電話ごしの会話の間合いはじつに見事であった 。

2020年 五月の恋

ユキコとモトオのあまりの息の合い方に、こんなお似合いなふたりがなぜ離婚したのだろうかなんてことも不思議に思いもするが、やはり離婚した夫婦だから完全に仲良しではなくて、どこか牽制しあっているし、何か含みも感じる。探りあう男女の心理戦の様相も呈する大泉と吉田の芝居には少しの緩みもない。でも見ているほうにはそんな緊張の圧迫感は感じさせず、軽やかに時が過ぎていく。ひたすら楽しく、ふいに泣きそうになったり、キュンとしたりしながら、ひとときも目が離せない。

タイトルに、“2020年の5月”とあるだけに、実際の2020年の社会状況下で働く人々の気持ちをダイレクトにすくいあげている台詞も多い。ユキコの抱える辛さのモトオの受け止め方がこれぞ私達の大好きな大泉洋! という感じで癒やされる。ぼやきもするが、ちょっと塩対応の元妻扱いが絶妙なのである。岡田惠和の脚本と大泉洋の演技の最高のコラボだと思う 。この企画を立ち上げた吉田羊はすばらしい(もちろん吉田の演技もすばらしい) 。

いま、この時期のリモートドラマは、見ている側(発信者側も?)の閉塞感のガス抜きと、明日はきっといいことがあるというちょっとした希望かなと思う。ちょうど、再放送中の朝ドラ「はね駒」で樹木希林が「明日はいいことあっぺ 明日はいいことあっぺ 明日のことがわからねえから人は今日一生懸命生きていかれんだ」という台詞を言うのだが(脚本:寺内小春)、まさにそんな感じのドラマである 。

「はね駒」は岡田惠和作品ではないが、岡田も朝ドラを3作も書いている。毎日15分の朝ドラを書いてきただけあって、次回への引っ張り方もじつに巧みだ。スムース過ぎてもつまらないが、いい流れをちょっと脱線させるアイデアが効いていて会話劇の見本のよう。毎回の余韻もいい。監督は、吉田の主演映画『ハナレイ・ベイ』を撮った松永大司。『トイレのピエタ』で新藤兼人賞の銀賞を受賞している才人である。

ドラマなんだけど、舞台的でもあり、映画的でもあり、コロナ禍という予想しえなかった出来事から生まれた新しいスタイルのとば口のような気もする。

文・木俣冬

放送情報
『2020年 五月の恋』

脚本:岡田惠和(「連続ドラマW そして、生きる」、連続テレビ小説「ひよっこ」、「最後から二番目の恋」)
監督:松永大司(『ハナレイ・ベイ』、『トイレのピエタ』)
出演:吉田羊 大泉洋
製作著作:WOWOW

無料配信中(6月末まで)
YouTube WOWOWオフィシャルチャンネルhttps://www.youtube.com/user/WOWOWofficial
WOWOWメンバーズオンデマンド
https://mod.wowow.co.jp/series?id=45662

7/5(日)午後1:00より WOWOWプライムにて[特別版]無料放送

公式サイト: https://www.wowow.co.jp/drama/original/gogatsunokoi/

©2020 WOWOW INC.

木俣冬

文筆家。著書『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説 なつぞら」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など。 エキレビ!で「連続朝ドラレビュー」、ヤフーニュース個人連載など掲載。 otocotoでの執筆記事の一覧はこちら:[ https://otocoto.jp/ichiran/fuyu-kimata/ ]

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