Jan 23, 2020 column

映画界のドン・キホーテ!テリー・ギリアムの強烈な作家性、渾身作完成までの苦難の道のり

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苦節の30年を経てたどり着いた集大成

2000年の撮影中止で大ダメージを食らいながらも、ギリアムは『The Man Who Killed Don Quixote』を決して諦めようとはしなかった。保険会社が関わる複雑な権利問題をなんとかクリアして、再び企画を自分の手に取り戻すことはできたが、ジョニー・デップは離脱し、一時はユアン・マクレガーがトビー役を演じると報道された。ドン・キホーテ役はジャン・ロシュフォールから、ジェラール・ドパルデュー、ロバート・デュバル、ジョン・ハートとさまざまな名前が挙がり、最終的にジョナサン・プライスが演じることになった。

『未来世紀ブラジル』では主人公の若い役人を演じていたプライスが、実現までに30年かかったことでドン・キホーテ役を手にしたことは、ファンにとってはなんとも感慨深いキャスティングだ。としてトビー役にはいまをときめく売れっ子スター、アダム・ドライバーが選ばれた。

脚本は初期のものから何度も改稿が重ねられ、17世紀にタイムスリップするのではなく、現代を舞台に、CMディレクターのトビーが、自分を“ドン・キホーテ”だと信じ込んでしまった名もない老人の冒険旅行に巻き込まれる物語に変わった。

興味深いのは、おそらく予算の都合もあったのではないかと思われるこの変更によって、ギリアムならではのテーマ性がより強固になったと感じられることだ。主人公のトビーは、時空を超えて“冒険の世界”に飛び込むのではない。自分を“ドン・キホーテ”だと信じる“ただの老人”の狂気に巻き込まれて、現実の中に“冒険”を見出す、いや、取り戻すのだ。

はたして本当に“想像力は現実に打ち勝てる”のか? ギリアムは、『~ブラジル』『バロン』、『Dr.パルナサスの鏡』(09年)や『ゼロの未来』などで、同じテーマを執拗に追求してきた。そして『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』で、ひとつの決着をつけようとしている。本作は、“映画界のドン・キホーテ”でもあるギリアムがついにたどり着いた、まさに集大成と呼ぶべき渾身作なのである。

文/村山章

公開情報
『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』


『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』
仕事への情熱を失くしたCM監督のトビー(アダム・ドライバー)は、スペインの田舎で撮影中のある日、謎めいた男からDVDを渡される。偶然か運命か、それはトビーが学生時代に監督し、賞に輝いた映画『ドン・キホーテを殺した男』だった。舞台となった村が程近いと知ったトビーはバイクを飛ばすが、映画のせいで人々は変わり果てていた。ドン・キホーテを演じた靴職人の老人ハビエル(ジョナサン・プライス)は、自分は本物の騎士だと信じ込み、清楚な少女だったアンジェリカ(ジョアナ・リベイロ)は女優になると村を飛び出していたのだ。トビーのことを忠実な従者のサンチョだと思い込んだ老人は、無理やりトビーを引き連れて、大冒険の旅へと出発するのだが──。
監督:テリー・ギリアム
脚本:テリー・ギリアム トニー・グリゾーニ
出演:アダム・ドライバー ジョナサン・プライス ステラン・スカルスガルド オルガ・キュリレンコ ジョアナ・リベイロ オスカル・ハエナダ ジェイソン・ワトキンス セルジ・ロペス ロッシ・デ・パルマ ホヴィク・ケウチケリアン ジョルディ・モリャ
配給:ショウゲート
2020年1月24日(金)公開
© 2017 Tornasol Films, Carisco Producciones AIE, Kinology, Entre Chien et Loup, Ukbar Filmes, El Hombre Que Mató a Don Quijote A.I.E., Tornasol SLU
公式サイト:donquixote-movie.jp

ブルーレイ情報
『未来世紀ブラジル』

Blu-ray:1905円(税抜)
発売中
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
©2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『ゼロの未来』

Blu-ray:1800円(税抜) DVD:1200円(税抜)
発売中
ハピネット
©2013 ASIA & EUROPE PRODUCTIONS S.A. ALL RIGHTS RESERVED.

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