ピカソ、モネ、ルノワール…多くの画家が登場
そのなかでも多く登場するのは画家たちだ。印象派の巨匠であり、同世代の友人でもあるクロード・モネとオーギュスト・ルノワールが、池を前に並んで絵筆を動かしている姿が見える。彼らは対照的に、それぞれが興味を持つ風景と人物画を描いている。
パリで最も高い丘に位置するモンマルトル。先鋭的な若い芸術家たちのたまり場となっていた“洗濯船”と呼ばれるアトリエでは、アンリ・マティスやアンリ・ルソー、パブロ・ピカソやコンスタンティン・ブランクーシらがワインを飲みながら製作に励んでいる。
赤い風車が目印のキャバレー“ムーラン・ルージュ”では、店の象徴的な常連客である、画家のトゥールーズ=ロートレックが登場。幼少期に脚を骨折したことで背の低いままで育ったロートレックは、カンカン踊りでスカートをまくり脚を上げる、ラ・グーリュをはじめとする踊り子たちやジャンヌ・アヴリルなど、画家のためだけに大人しくポーズをとるモデルではなく、激しい動きのある対象を優れた動体視力でとらえ表現する、いわゆる“ムーヴマン”を体得した描き手である。その技術は、まさにアニメーションの原点だといえよう。
これらの芸術家や作家、作曲家やダンサー、科学者や発明家などは、顔を出すだけで登場シーンが終わる場合がほとんどだ。その代わり、著名な文化人が当時のパリにはこんなにも多かったのかと思うほど、まだまだ大勢現れる。これにはいったい、どういう意味があるのだろうか。