男女問わず夢中にさせるBL作品の魅力とは?
2作品のBL映画を紹介したが、これまでBLには興味がなかったという方にも、少しは「面白そうじゃん」と思ってもらえただろうか。そう、BLは面白いのだ。
BLは単に男女の恋愛ものの“女性”を“男性”に置き換えただけではない。たとえば『ダブルミンツ』は、男性同士が惹かれ合うからこそ意味のある物語だ。恋人とも友人とも違う主従という関係性、愛と憎しみが入り混じり、それでも惹かれずにはいられない厄介な心情……。男女の恋愛ものではこうはいかない。
『ひだまりが聴こえる』もそうだ。航平はルックスだけで寄ってきては離れていってしまう女性を敬遠している。航平と太一の関係は、二人が同性だからこそ生まれたものなのだ(そして皮肉なことに、それが航平を悩ませることになる)。
こうしたBLならではの関係性をいきなり「理解できるわ~」という人は少ないだろう。しかし、だからこそBLは面白い。これまで知らなかったという人も、ぜひ奥深いBLの世界に飛び込んでみてほしい。
ビギナー向けおすすめBLコミックは?
BL未経験者におすすめしたいのは、中村明日美子の代表作『同級生』や、社交ダンスをモチーフにした井上佐藤による『10DANCE』、学校一のモテ男と非イケメンが主人公の田中鈴木によるラブコメ『アイツの大本命』など。どれもすべて雰囲気の違う漫画であり、BLの幅の広さを感じてもらえるはずだ。
今後も、代理店勤務のサラリーマンと美大生の関係を描く日高ショーコの『花は咲くか』など、BLコミックの映画化が予定されている。そちらもチェックしておきたいところだ。
文/山田井 ユウキ
『ダブルミンツ』
「女を殺した――」。ある日突然、壱河光夫(淵上泰史)のもとに、チンピラの市川光央(田中俊介)から電話がかかってくる。高校時代に同級生として出会った同じ“イチカワミツオ”の名前を持つ二人。当時、光夫(川籠石駿平)は冷酷で高飛車な光央(須賀健太)と主従関係を結んでいた。数年を経て、再会を果たした光夫と光央。かつての隠微な記憶が忘れられない光夫は、逆らうことなく共犯者となる。一方の光央は、怖くなってあっさり自首。しかし埋めた場所を警察が捜索しても、何も出てこない。取調べを受ける光央の前に現れたのは、光央が出入りする暴力団を監視している中岡刑事(高橋和也)だった。この事件をきっかけに、光夫と光央の関係は、主従関係ではない新しい形の関係へと姿を変えていく。そして光央のボス、佐伯(小木茂光)も絡み、やがて二人は犯罪の世界へと落ちていく――。
映画『ダブルミンツ』
原作:中村明日美子
監督・脚本:内田英治
出演:淵上泰史 田中俊介 須賀健太 川籠石駿平 冨手麻妙 高橋和也 小木茂光
配給:アーク・フィルムズ、スターキャット
2017年6月3日(土)公開 R-15
©2017『ダブルミンツ』製作委員会 ©中村明日美子/茜新社
公式サイト:www.d-mints.jp
■原作紹介
『ダブルミンツ』中村明日美子(著)/茜新社/EDGE COMIX
『ひだまりが聴こえる』
中学生の時に難聴を患い、何かと誤解を受けて周囲と上手く馴染めないまま大学生になっ た杉原航平(多和田秀弥)は、いつしか人と距離を置くようになっていた。そんな時に大学の裏庭で出会った佐川太一(小野寺晃良)は、明るい性格で思ったことを何でも口にする同級生だった。いつしか太一との距離が近づくようになるが、それでも学校での陰口や嫌がらせで卑屈になる航平に対し太一から「聴こえないのはお前のせいじゃないだろ!」と言われ、航平はその言葉に心の底から救われる。そんな太一との出会いが航平を少しずつ変えていくのだが、近づけば近づくほど、航平は二人の距離に期待と不安が募らせるようになる――。
映画『ひだまりが聴こえる』
原作:文乃ゆき
監督:上條大輔
出演:多和田秀弥 小野寺晃良 三津谷亮/山崎あみ 大坂美優 井桁弘恵 松田リマ 福本有希 島田翼 荒木秀行 木島杏奈 野村涼乃/平沼紀久 中丸新将 高島礼子
配給:日本出版販売
2017年6月24日(土)公開
©文乃ゆき/プランタン出版 ©2017「ひだまりが聴こえる」製作委員会
公式サイト:http://hidamari-kikoeru.com/
■原作紹介
『ひだまりが聴こえる』文乃ゆき/プランタン出版/Canna Comics
『同級生』中村明日美子(著)/茜新社/EDGE COMIX
『10DANCE』井上佐藤/竹書房/麗人
『アイツの大本命』田中鈴木/リブレ/ビーボーイコミックス
『花は咲くか』日高ショーコ/幻冬舎コミックス/ルチル