Jun 14, 2017 column

BLって面白い!最新映画&コミックで楽しむBLガイド

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男性同士の恋愛を描くボーイズラブ(BL)と呼ばれるジャンルが盛り上がっている。最近ではBL漫画を実写化した映画も立て続けに公開され、注目を集めているのだ。「ああ、BLって一部の女性が楽しむやつね」と避けてしまう人もいるかもしれないが、それはもったいない! と声を大にして言おう。たしかにBL未経験者には最初はハードルが高いかもしれないが、これまで読んだことがない人でも、楽しめるBL作品はたくさん存在するのだ。本稿では、最近公開された、あるいはこれから公開されるBL映画2本を通して、BLの魅力をお伝えしていこう。

 

ノワール的作品が描き出す、男性同士だからこそ複雑さを増す関係性

 

まずは現在公開中の『ダブルミンツ』を紹介しよう。BLファンにはおなじみ、『同級生』などのヒット作で知られる中村明日美子原作の同名コミックを実写化した作品である。“ダークBL”と呼ばれるこの作品を映画化したのは、『下衆の愛』(16)の内田英治監督。同姓同名の二人の男が犯罪と暴力の世界へと堕ちていくというノワール的なストーリーが展開する。

ある日、壱河光夫のもとに「女を殺した」と一本の電話がかかってくる。その声の主は光夫の高校時代の同級生で、今はチンピラになった、同姓同名の市川光央だった。高校時代、冷酷な光央の下僕として言いなりになっていた光夫。当時の記憶が忘れられない光夫は、逆らうことなく光央の共犯者となり、女の死体を埋めるために車を走らせる――。

 

3.『ダブルミンツ』メイン

 

中村明日美子作品の実写化と聞いて、不安に感じたファンは多いだろう。あの耽美で流麗な空気感を実写で再現できるのか、と。筆者もその一人だったので、最初は怖いもの見たさという感じで鑑賞したのだが、これがなかなかどうして! 思ったよりもずっと完成度の高い映像で驚いた。

なんといっても、主人公である二人のミツオが良い。高校時代、光央の下僕だった光夫は、屈辱を感じながらもどうしようもなく光央に惹かれており、愛憎が混ざりあった複雑な想いを抱いている。一方の光央も、光夫を下僕扱いしながらも、どこか愛情や信頼にも似た想いを向けている(ように筆者には見える)。

4.『ダブルミンツ』サブ3

男性同士ということも手伝って、二人の関係は非常に複雑だ。原作でも映画でも、「二人はこういう想いをお互いに抱いていますよ」という説明はない。二人の会話や、時折見せるちょっとした仕草、視線などから探っていくしかないのだ。これが男女だったらまだしもわかりやすいのかもしれないが、同姓同名、同級生の男性同士であることで、二人の関係はより複雑さを増しているように思える。

この難解な役どころを表現するのはさぞ難しかったと思うのだが、主演の淵上泰史と田中俊介は見事にそれをやってのけている。「タバコをくれ」という光央に、光夫が自分が吸っていたタバコをくわえさせる原作のシーンが筆者は大好きなのだが、そのあたりの「ここは外せない」というシーンもばっちり再現されていて大満足だ。

友人でも恋人でも家族でも他人でもない、二人の間に流れる空気感を表現するのは大変だっただろう。原作の良さを可能な限り映画というフィールドで再現した本作には「お見事」と言いたい。

 

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距離が近づいても、同性であるがゆえに倍増する不安な想い

 

続いては『ひだまりが聴こえる』。6月24日から公開される映画で、文乃ゆきによる同名の原作コミックを実写化した作品だ。ダークな雰囲気だった『ダブルミンツ』とは打って変わって、こちらは大学生二人を主人公にした爽やかな作品。ただ、扱っているテーマは“難聴”で、こちらも役どころとしては非常に難しい。

 

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中学生のときに難聴を患い、周囲とも上手く馴染めず、人と距離を置くようになった杉原航平。大学生になった航平がある日出会ったのは、バカみたいに明るくて、思ったことを何でも口にする同級生の佐川太一だった。少しずつ太一に惹かれていく航平だったが、距離が縮まれば縮まるほど、期待と不安が募るようになる――。

 

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なんといっても「イイ!」と思ったのは、主役の二人。難聴を患う航平は街を歩けば人が振り返るほどのイケメンということでかなりルックス方面のハードルは高いのだが、演じる多和田秀弥はまさにそれにふさわしいイケメンっぷり。雰囲気まで含めてまさにハマり役だ。そして、太一に想いを寄せながらも、同性であるがゆえに悩んでしまうという役柄を見事に演じきった。

 

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一方の太一を演じる小野寺晃良もぴったりだ。声が大きくてとにかく元気で明るく、それでいて航平を惚れさせてしまうような魅力を醸し出している。二人を主役に据えた時点で本作は完成したといっても過言ではない。
ストーリーも原作の良さをしっかり踏襲している。少しずつ二人の心の距離が近づく様を繊細に描写しながら、当事者として、周囲の人間として、それぞれの立場から難聴と向き合うということが丁寧に描かれており、誰しもがこの作品から何かの想いを受け取るだろう。あと、太一の友人役として登場する三津谷亮がかなりいい味を出していたことも付け加えておきたい。