Nov 19, 2019 column

江戸の人々の奮闘劇に現代人も思わず共感!“お金×時代劇”映画の魅力

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2014年に公開された『超高速!参勤交代』の大ヒット以来、続編となる『超高速!参勤交代 リターンズ』(16年)や『殿、利息でござる!』(16年)などお金をうまくやりくりしてピンチを切り抜ける時代劇エンターテイメント映画が人気だ。11月22日に公開される『決算!忠臣蔵』では“討ち入り予算”がテーマとして描かれ、新しい忠臣蔵としても楽しめる映画となっている。コンスタントに作られる“お金×時代劇”ムービーの人気の秘密を紐解いてみる。

当時の貨幣価値をわかりやすく描く

東大教授の山本博文による『「忠臣蔵」の決算書』を、『殿、利息でござる!』や『忍びの国』(17年)など時代劇のヒット作を生み出してきた中村義洋監督が映画化した『決算!忠臣蔵』。忠臣蔵と言えば、殿のために忠義を誓い、仇討ちを果たした四十七士の話としてこれまでに300以上のドラマや映画で語られてきた。ところが『決算!忠臣蔵』は、限られた予算の中で仇討ちを果たそうとする赤穂浪士たちの奮闘劇をコミカルなタッチで描いており、これまで語られてきた忠臣蔵とは異なる“お金×時代劇”エンタメムービーとなっているのだ。筆頭家老の大石内蔵助を堤真一、勘定方の矢頭長助を岡村隆史が演じているのも本作の魅力で、内蔵助が討ち入るのか討ち入らないのかで藩士たちが翻弄される姿や、お金のこととなると厳しい現実を容赦なく叩き付ける長助とお金に無頓着な内蔵助のやり取りなど、クスっと笑えるシーンが満載なのである。

忠臣蔵と言えば、いまから300年前の江戸時代に起こったことであるため、例えば劇中に貨幣に関する場面が登場すると、“1文とは現代に置き換えるといったいいくらぐらいなのか?”“1両とは?”と頭の中が?マークでいっぱいになってしまう人も多いだろう。だが、本作にはそばを食べるシーンが多くあり、1杯の値段は16文、そして現代のそば1杯の値段はだいたい500円前後であることから、そば以外の物の値段を当時の貨幣価値で聞いてもなんとなくわかる親切な作りになっている。家賃や食費といった生活にかかるお金はもちろん、討ち入りのための旅費や武器の購入費といったことまでひとつひとつ細かく金額を提示することは、こういった作品において非常に大切なことではないだろうか。

また予算内で収まるよう少しでも安い武器を購入したい内蔵助、そして長助と、確実に討ち入りを成功させようと武器のクオリティを下げることを許さない妻夫木聡演じる参謀の菅谷半之丞との攻防戦もどこか他人事とは思えない。どちらの意見にも共感できてしまうのは、現代に生きる我々にも目的は違えど予算内に収めなければいけないことがたくさんあるからだろう。自らと重ね合わせることで登場人物たちに自然と感情移入できるのも本作のポイントだ。

原作者の山本博文は江戸時代研究の第一人者であることから、細部に至るまで忠実に史実に基づいた話であることは間違いないうえに、討ち入りをここまでポップに描けてしまう中村監督の手腕もさすがである。キャスト陣も西村まさ彦や笹野高史といったベテラン勢から人気女優の石原さとみや竹内結子、そして横山裕や橋本良亮などバラエティに富んでいる点も本作の魅力と言える。