名作ホラー復活&80年代ブーム
この『チャイルド・プレイ』に限らず、ここ数年、『サスペリア』(77年)、『ハロウィン』(78年)といった伝説的ホラーが新作として復活している。少し前だが、『キャリー』(76年)もリメイクされた。もちろん、映画の世界で“リメイク”の量産はいまに始まったことではないが、今度の『チャイルド・プレイ』が示すように、かつてのホラー映画の魅力だった原初的なスリル、映画ならではのやりすぎ感、作り物感が、改めて求められているのは事実のよう。
映画に限らず、何かと最近、“表現の自由”と言いつつも、炎上に気をつかって甘めの表現が増えている中、ホラー映画なら強烈描写もOKという言い訳ができる。70~80年代のホラーを観て育ったクリエイターたちが、自分たちが経験した恐怖の根源を再生させたい欲望も、1つの要因だろう。よく流行は“30年周期”と言われるように、映画界ではここ10年くらい、80年代ブームが静かに続いており、前述の『レディ・プレイヤー1』の他にも、80年代のジョン・ヒューズ監督の青春映画にオマージュを与えた『スパイダーマン:ホームカミング』(17年)などが挙げられる。ホラーに近いスリラーでも、今年の秋に公開されるイザベル・ユペール主演の『グレタ(原題)』は、『危険な情事』(87年)や『ミザリー』(90年)をもろに連想される“やりすぎ描写”が持ち味の作品だ。
ホラーと80年代が結びつき、2017年に大ヒットを記録したのが『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』。同じスティーヴン・キング原作の、80年代の名作『スタンド・バイ・ミー』(86年)の世界も受け継いでいた。このテイストは、Netflixのドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』も同じで、やはり80年代の復活は確実なブームと言って間違いない。
ホラー映画のスマッシュヒットが続く理由
今年はこれから、『IT~』の続編で完結編である『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』や、『シャイニング』(80年)の続編『ドクター・スリープ』が公開予定で、さらに80年代+ホラーのブームは加速しそう。そしてそのブームを支えるのが、つねに刺激を求める観客の“需要”と、作り手側の“自由奔放なアイデア”で成立する、ホラーというジャンルの特性ではないか。スターを必要とせず、低予算で作った映画が大化けするのも、このジャンルはじつに多い。アイデアと才能を試すうえで、ホラーは最適なのだ。
ここ数年だけでも、 肉体関係で “あるもの”が感染する『イット・フォローズ』(14年)や、盲目の老人相手に音を出さずに闘う『ドント・ブリーズ』(16年)、同じく音を立てると襲われる『クワイエット・プレイス』(18年)、人種問題+コメディ色も入れ込んだ『ゲット・アウト』(17年)、同作のジョーダン・ピール監督の新作の『アス』(9月6日公開)、あらゆるホラーの要素をつぎ込んだ『へレディタリー/継承』(18年)など、ホラーのジャンルからはじつにバラエティ豊かで革新的作品が生まれ、しかも大きな評判につながるケースが目立つ。
こうした途切れないブームを作り出すうえで、気鋭のスタジオ“A24”(『へレディタリー/継承』、『イット・カムズ・アット・ナイト』などを製作)や、プロデューサーのジェイソン・ブラム(『パラノーマル・アクティビティ』シリーズ、『パージ』シリーズ、『ハッピー・デス・デイ』シリーズ、『ハロウィン』、『ゲット・アウト』、M.ナイト・シャマランの『スプリット』などを製作)らのチャレンジ精神と勢いが後押しになっているのも事実だ。
80年代、およびホラーという、2つの要素のブームを実感している人にとって、新しい『チャイルド・プレイ』は最高に期待が高まる作品だろう。そして、その期待を上回る、怖さ、楽しさが待っていると断言したい。
文/斉藤博昭
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監督:ラース・クレヴバーグ
脚本:タイラー・バートン・スミス
出演:オーブリー・プラザ、ガブリエル・ベイトマン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、マーク・ハミル(声の出演)
配給:東和ピクチャーズ
公開中
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公式サイト:https://childsplay.jp
Blu-ray 通常版:4800円(税抜)
Blu-ray 2枚組:10000円(税抜)
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キングレコード
©1988 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.
Blu-ray:2381円(税抜) DVD:1429円(税抜)
発売中 ※R-15作品
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
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2019年9月6日(金)公開
配給:東宝東和
©Universal Pictures