2017年ヴェネチア国際映画祭で主演女優賞を受賞した『ともしび』
巨匠ヴィスコンティはシャーロットに「君は瞳ですべてを語れる」と言って、『地獄に落ちた勇者たち』に彼女を起用した。イタリアの大作での経験は彼女がキャリアをヨーロッパで続けていく理由にもなっているという。
最新作『ともしび』はベルギーの小さな都市で、人生の終盤を夫婦でひっそりと暮らす主人公のアナの夫がある日、収監され、平穏だった生活の歯車が次々と狂い始めるストーリーだ。カメラはひたすら、主人公のシャーロットを追い続けた。半世紀を経ても、変わらぬ瞳が多くを語り、この作品でヴェネチア国際映画祭の主演女優賞を受賞している。
「他の人のストーリーと頭の中で起こっていること、存在を、すべて身体で受け止めているわけです。誰かに教えてもらえることではなく、どんな方向に進んでゆくのかもわからないようなことが人生に起こっていくことを。その緊張感や痛みを捉えなければいけません。わからないことを、不確かなこと、ミステリーを表現しなくてはなりません。ホラー・ストーリーが自分の身体とマインドに入ってくるわけですから、演技するのは困難でした。でも、その難しさへのチャレンジを好んでもいました。見る方にも難しい映画だと思います」と本人にとってもやり甲斐のある役だったと振り返る。
「決して後悔しない人生を歩んでいる」
「人生は後悔するかしないかを選べます。私は後悔しない方を選びます。もちろん、ああすれば良かった!と苛立つことはあります。とにかく進行していることを続けること、生き残るにはいろいろな領域のトレーニングしておくことも必要ですね」
今まで通算100以上の作品に出演してきた。主役でも脇役でも妥協せずに役柄になりきって、いつもカメラの前ですべてを与えること、さらすことに惜しみない力を降り注いでいる。現在もイギリスやデンマークでの制作が進行中と引く手あまただ。これからも、ヨーロッパが生んだ大女優の華麗な演技を見つづけていきたい。
取材・文/浦江由美子
『ともしび』
第回ヴェネチア国際映画祭で主演女優賞を受賞したシャーロット・ランプリングの最新作。 人生の終盤、さまざまな業を背負ったひとりの女が、もう一度“生きなおし”を図るまでの、哀しみと決意を追う人生最後のドラマが、ミステリー小説のごとく描かれていく――。
監督:アンドレア・パラオロ 出演:シャーロット・ランプリング(『さざなみ』『まぼろし』『愛の嵐』)、アンドレ・ウィルム(『ル・アーヴルの靴みがき』『ラヴィ・ド・ボエーム』)他
2017年/フランス=イタリア=ベルギー/フランス語・英語/カラー/4Kスコープ/5.1ch/93分/原題:Hannah配給:彩プロ
シネスイッチ銀座ほか全国公開中