2月7日から17日まで行われた「第69回ベルリン国際映画祭」で名誉金熊賞を受賞したシャーロット・ランプリング。ドキュメンタリー映画「The Look」の一般上映にサプライズで現れる一幕も! 現地ベルリンからシャーロットの最新コメントを速報!
シャーロットの女優人生はいつもセンセーショナルだった
スインギング・シックスティーズにロンドンでデビュー。1969年にルキノ・ヴィスコンティ映画『地獄に落ちた勇者ども』に出演、強制収容所の生き残りとナチス将校との複雑な恋愛を描いた『愛の嵐』(1974年)で主役となり、一躍、カリスマ的な存在となったシャーロット・ランプリング。2000年にはフランス人監督フランソワ・オゾン映画『まぼろし』で大人の女を演じ、人生の後半のキャリアも着実に築いてきた。2017年のヴェネチア国際映画祭では最新主演作品『ともしび』で主演女優賞を受賞している。この2月で73歳。彼女のライフタイムワークが称えられ、今年のベルリン国際映画祭では功労賞、金熊像を受け取った。
シャーロットは常に個性豊かな役どころを演じてきた。父親は軍人で、幼少期から親の仕事の関係でヨーロッパでの引っ越しを繰り返していたため、流暢なフランス語を話すバイリンガル。幼い頃から、様々な人や文化に接していたことから独自の創造性と研ぎ澄まされた感性が養われたようだ。しなやかでエレガントなミューズは映画監督のみならず、ヘルムート・ニュートン、ピーター・リンドバーグ、ユルゲン・テラーといった写真家も魅了してきた。
ベルリン映画祭での授賞式に駆けつけた『愛の嵐』のイタリア人監督リリアーナ・カヴァーニは初めてローマでシャーロットに会った時、直感的に主役はこの子だと思ったという。
舞台は第二次大戦後、10年が経ったウィーン。回想シーンでは強制収容所で上半身裸の黒いサスペンダー姿で歌うシャーロット演ずるルチアの姿が衝撃的だった。暗い過去の虐待を恨みながらも、ダークボ・ガード演ずる将校マックスとの愛情も生まれていた関係性を描いたこの作品は、70年代当時、タブー視され、物議を醸した。
「シャーロットは勇気あるところと、瞑想的なところと、2つの顔を持った女優です。政治的で複雑な役を彼女はひとつひとつ丁寧に演じてくれました。20世紀の最も悲しい歴史を素晴らしく演じたヨーロッパの大女優に金熊賞が与えられたことを誇りに思います」とカヴァーニの祝辞にシャーロットはうっすらと目を潤わせていた。
50歳を迎えて訪れた転機
フランス人監督フランソワ・オゾンの『まぼろし』でシャーロットに新しい幕が開いた。
「彼との初めての仕事は私が50歳になったばかりの時でした。自分の人生の中でも私は違った年代にさしかかっていて、もう若い女性という括りではなくなっていました。老女でもない、人生の真ん中にいました。当時、フランソワは32歳で、私の年齢の女性の体験を描いてみたかったのです」
フランスのリゾート地で突然、夫が行方不明になり、それまでの生活ががらりと変わるインテリの姿を演じた作品は映画ファンから再び高い評価を受けた。その後、再び、フランソワ・オゾンの『スイミングプール』で主役を演じた。ロンドンのミステリー作家が執筆のために出版社のフランスの別荘を訪れて起こる出来事。ウイットに富んだ、感情をあらわにした、チャーミングな演技の傑作だった。
シャーロットは自分が好まれるために、演じているわけではないと言う。出演する作品を選ぶことにも慎重だ。
「人として、俳優として、アーティストとして、何にコミットするか、受け入れるかということです。自分の選択が決定的であることです。例えば、『愛の嵐』のような映画を選ぶということは、ヒットすれば、その作品に出演した責任があります。俳優として成長していく上での責任があります。それは永遠に自分の一部であるからです」