Oct 28, 2017 column

小栗旬主演の伝説のドラマ『BORDER』続編がいよいよ10月29日に放送!前作を振り返っておこう

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いつものように殺人事件が起こり、亡くなった子供との交信から、石川は犯人・安藤(大森南朋)を追い詰める。だが安藤は、自分の犯罪を正当化する。石川が亡くなった子供を「無垢な子」と言うと、安藤は「(殺人によって)平凡な子を無垢にしてやった」「光を当ててやった」とうそぶき、世の中は、光と影があって成り立つもので「(正義と悪)どちらか一方しかない世界なんてつまらない」と不敵に言い放つ。自分は悪のために人が殺せるが、正義のために人を殺せるか。それができない正義は中途半端だと挑発された石川は、思わず安藤に……。

ついに石川は、絶対的な正義の領域に足を踏み入れてしまう。
それがラストシーンで、ドラマは終わった。

『BORDER』では、正義とは? 悪とは? と禅問答のような会話が延々繰り返されてきた。例えば、石川の上司、市倉(遠藤憲一)は彼にこんなことを言っている。

「強すぎると、ヒーローは怪人と変わらないんだ。人間じゃなくなっちまうんだよ」
「強い光が差すところには必ず濃い影も浮かぶもんだ。影に飲みこまれんなよ」

正しいことを成したいだけなのに、どうしてシンプルにいかないのだろう。どうして正義と悪が紙一重なのだろう。タマネギの皮は剥いても剥いても皮であるごとく、答は簡単に出ない。最近のドラマは、勧善懲悪で、白黒が簡単につくものが多く、それが好まれるが、こういう哲学的なことを考え続けるドラマもあっていい。その証拠に、ドラマの視聴率の初回は一桁台だったが、回を増すごとに上昇し、最高で16.7%まで上がり、その年のドラマに関する賞もたくさん獲った。

ラストシーンを演じた小栗旬は、戻ることのできない境界を超えたときの人間は、正義とか悪とかすっきりするのではなく、じわじわとよくわからない感情の波に晒されるのではないかという提案をしてみせる。これが実に見る者の感情を掻き立てた。

続編はその後から。
安藤に「こちらの世界にようこそ」されてしまった石川は、どうなるのか。深い思考を促すドラマではあるが、個性的な登場人物がたくさん出てくる。石川の相棒で、石川と違ってシンプルな熱血漢・立花(青木崇高)、スピンオフドラマ『検視官 比嘉ミカ 衝動』でも活躍した、クールな検視官・比嘉(波瑠)、石川を見守る人間味あふれる上司・市倉(遠藤憲一)のほか、それぞれ高い能力をもっている、情報屋の赤井(古田新太)、便利屋のスズキ(滝藤賢一)、ハッカーコンビ・サイモン(浜野謙太)とガーファンクル(野間口徹)など、彼らの活躍も問答無用に楽しめる。
さらに『贖罪』には、大森南朋のほか、國村隼、満島真之介、中村ゆりと確かな演技派が集結。川井憲次の音楽に乗って、さらなる重厚な世界を形作ってくれるだろう。

文・木俣冬

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番組情報

『BORDER 贖罪』

10月29日(日)21時~ テレビ朝日系列
公式HP:http://www.tv-asahi.co.jp/border/

文・木俣冬

文筆家。主な著書に「ケイゾク、SPEC、カイドク」(ヴィレッジブックス)、「SPEC全記録集」(KADOKAWA)、「挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ」(キネマ旬報社) 、共著「おら、あまちゃんが大好きだ! 1、2」(扶桑社)、「蜷川幸雄の稽古場から」、構成した書籍に「庵野秀明のフタリシバイ」、ノベライズ「マルモのおきて」「リッチマン、プアウーマン」「デート〜恋とはどんなものかしら〜」「恋仲」「IQ246~華麗なる事件簿」など。
エキレビ!で毎日朝ドラレビュー連載。 ほか、ヤフーニュース個人https://news.yahoo.co.jp/byline/kimatafuyu/ でも執筆。
初めて手がけた新書『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中!
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062884273

otoCotoでの執筆記事の一覧はこちら:https://otocoto.jp/ichiran/fuyu-kimata/


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