Mar 02, 2017 column

宮沢りえ、妻夫木聡をはじめ、実力派俳優の華麗なる競演!
NODA・MAP『足跡姫 時代錯誤冬幽霊ときあやまってふゆのゆうれい』公演レポート

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宮沢りえと妻夫木聡、今年の日本アカデミー賞に名前を連ねる2大実力派俳優が出演する舞台、野田秀樹の『足跡姫 時代錯誤冬幽霊ときあやまってふゆのゆうれい』が2ヶ月間の長い公演を終えるのもあと10日間ほど。まだの方はぜひ当日券にて。

前半、ネタバレほぼなし、後半、ネタバレややありでレビューをお届けします。

 

宮沢、妻夫木のほか、古田新太、佐藤隆太、鈴木杏、池谷のぶえ、中村扇雀と腕に覚えのある俳優たちが集結したこの舞台、前売りチケットは発売日にあっという間に売り切れてしまったが、毎公演当日券が出て、たくさんの人が手に入れようと並ぶ。それだけ一見の価値のある芝居である。
なんといっても、昨年あまりの出来の良さで話題を集めた宮沢りえ主演の映画『湯を沸かすほどの熱い愛』や、現在公開中で渾身のイヤミスに打ちのめされる人が続出の妻夫木主演の映画『愚行録』での二人の芝居の妙味を、目の前で見ることができるのだから、それはもう体験するに限る。

千秋楽が近くなると俳優たちに疲れも出てくる一方で、初日から積み上げてきたものがいい感じに煮込まれて格別の味わいになっていく。とりわけ、消えゆくまでのこの一瞬を大切に最後まで駆け抜けるに違いないと思う根拠は、この公演が、2012年に惜しまれつつ亡くなった歌舞伎俳優・十八代目中村勘三郎にオマージュを捧げた作品だから。

勘三郎と縁の深かった野田秀樹と宮沢りえの強烈な思いが舞台に力を与えている。

 

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時代は江戸。女カブキご法度の令が出ているにもかかわらずこっそり女たちが芝居小屋でレビュー(ストリップみたいなもの)を行っている。座長で三、四代目出雲阿国(宮沢りえ)とナンバー2の踊り子ヤワハダ(鈴木杏)が限界までナイスバディを披露。男の客たちにとって眼福のなまめかしい公演を、伊達の十役人(中村扇雀)が取締にやって来る。三、四代目出雲阿国の弟・淋しがり屋サルワカ(妻夫木聡)が誤魔化す担当だが、そんな役割に飽き足らず戯曲『足跡姫』をしたためる。

 

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近年の野田秀樹は社会的な問題の突きつけが前面に出ていて、おいそれとエンターテインメントとして片付けられなかったが、この作品は、女が性を売り物にする仕事にゴーストライターと、とっつきやすい社会問題が入り口にあってじつに親しみやすい。
子供が一緒でも楽しく見られるのではないだろうか。そして、もしこの作品が子供のファースト演劇だったら、その子の将来は創造的な希望に満ちるに違いない。
笑いもいっぱい、言葉と視覚、同時に訴えかけられる充足感にあふれた3時間(休憩あり、2幕)だ。

今年、読売演劇大賞最優秀女優賞を獲った鈴木杏も、10代で、岩井俊二監督の『花とアリス』やTBS の大ヒットドラマ『青い鳥』などで多感で奥深い少女像を体現していたが、蜷川幸雄の舞台で鍛えられて、この舞台でもしたたたかな踊り子の可愛さとユーモアを振りまいていて見逃せない。

ここからややネタバレです。