Feb 10, 2019 column

“誰もが楽しめるDC”への回帰!『アクアマン』特大ヒットの理由、DCEUの変遷を徹底解説

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本国アメリカでジョークのタネになっていた髭面の男は、2019年にDCエクステンデッド・ユニバース、ひいてはヒーロー映画の新たな希望となった。その男の名は『アクアマン』。昨年末の公開と同時に全世界で大ヒットを記録し、ブームを巻き起こし続けるDCEU映画『アクアマン』の魅力に迫ると共に、“大人向け”から解き放たれようとしているDCEUの過去、現在、未来について解説する。

 

様々な映画のエッセンスが散りばめられた完全無欠の娯楽作

 

2019年、DCEU第6作目として登場した『アクアマン』はヒーロー映画、そして映画界に大きな喜びをもたらした。日本ではほぼ無名の存在の彼は、昨年12月7日の公開を皮切りに、全世界で約11億ドルの興収を叩きだし、先日DC映画の売り上げトップを誇っていた『ダークナイト ライジング』(12年)の記録を突破。文字通りDC映画史の頂点に立った『アクアマン』。本稿を記している間にも世界中で『アクアマン』熱が増す今、どこまでその最高を記録し続けるのか? という領域にたどり着いたのだ。

物語は前作『ジャスティス・リーグ』(17年)における、異星からの侵略者たちを撃退してから続く。舞台は海洋帝国・アトランティス。海を汚す地上人に対しての怒りが爆発した若き王、オーム(パトリック・ウィルソン)は超技術と海洋生物を駆使し、地上、そして全地球の征服を企む。この危急存亡の事態に立ち向かわざるを得なくなった、地上人とアトランティスの女王の血を引くアーサー/アクアマン(ジェイソン・モモア)は、果たして義理の弟の陰謀を止められるのか……?

 

 

本作の大ヒットの要因は挙げればキリがない。なぜなら、完全無欠の娯楽作品として成立しているからだ。本作を手掛けたのは『ソウ』『死霊館』シリーズなどで馴染のジェームズ・ワン監督。鮮烈なビジュアルと恐怖描写、斬新なカメラワークで一代を築いた監督は、深海世界という難しい舞台を、カメラワークとアクション、映像美、あっと驚く演出で魅せていく。まず印象的なのは水の中に入るような揺らぎのある画。その揺らぎの画を最大限に活かすために、水中での浮力を再現するための“チューニング・フォーク”という特殊な装置を使用、浮力でなびく髪の毛は一人ひとり丹念にCGで再現と、観る者をさながら共に水中にいるかのような感覚をもたらす。

まるでジェットコースターのように観客をライドさせる斬新なカメラワークと共に超高速で動き回る海中移動シーンは、IMAXや3D/4Dで本領を発揮するだろう。肝心のアクションシーンも圧巻で、海中という舞台を最大限に引き出したアーサーとオームによる一対一での縦横無尽のぶつかり合い、中盤の目玉であるシチリアで繰り広げられる大破壊バトル、そしてラストの巨大海洋生物大戦争は、血沸き肉躍るという言葉を体現している。

 

 

豪快なアクション、美麗な映像だけでない。様々なエッセンスが内包されているのも『アクアマン』の特徴だ。アーサーが王族の末裔の荒くれ者から、一人前の王/英雄へと成長する物語は『アーサー王の伝説』を想起させる。そこから『ロード・オブ・ザ・リング』、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15年)のような“行きて帰りし”物語の要素も備えている(『バーフバリ』シリーズとの類似性を挙げる人も)。アーサーとメラ(アンバー・ハード)が、伝説の武器“トライデント”を求め、世界を旅し謎を解き明かしていく様は、さながら『インディ・ジョーンズ』シリーズ、シチリアの美しい街をバックに二人が育むロマンスはまるで『ローマの休日』(53年)だ。アーサー親子の家族愛描写、宿敵ブラックマンタ(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世)と彼の父との絆と復讐劇も泣ける。

海溝に潜む怪物“クランチ”による海上襲撃場面はワン監督十八番のホラー描写炸裂! そしてクライマックスに登場する、100メートルはゆうに超えるだろう最恐の怪物・カラゼンが潜水艇を相手に暴れ狂う姿には、怪獣映画ファン落涙必至……と、まさに陸と海を統括する“王”たるジャンルの包括ぶり! 全方位型エンタテインメントとして完璧な『アクアマン』。それまでのDC=暗いという概念を完全に吹き飛ばし、素晴らしい映画体験をもたらしてくれるはずだ。

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