Apr 03, 2026 column

大人たちよ、もっとバカになれ! 笑える中年讃歌 映画『俺たちのアナコンダ』

A A
SHARE

B級映画という青春の思い出

元ネタとなる”叫び声さえのみこまれる”というキャッチコピーの1997年版『アナコンダ』は、主演にジェニファー・ロペス、共演にアイス・キューブ、ジョン・ヴォイト、エリック・ストルツ、オーウェン・ウィルソンと豪華俳優陣を迎えながら、絶妙に漂うB級感が多くの映画ファンにハマり、世界で大ヒットを記録したカルト的人気を誇る作品だ。

ドキュメンタリー番組制作のためアマゾンに訪れた撮影隊がジャングルで巨大かつ獰猛な大蛇アナコンダに襲われる惨劇をスリリングに描いたパニック・スリラーである同作。映画作家役ジェニファー・ロペスの健康美、アマゾンで出会ったヘビハンター役のジョン・ヴォイトの怪演、聡明だが何も役にも立たなかった文化人類学者役エリック・ストルツ、すべてのアナコンダ強襲シーンで仲間を助け出す、カメラマン役のアイス・キューブの無双っぷり。大真面目のなかに漂う低予算感が観るものを魅了した。そして『アナコンダ2』(2002)、『アナコンダ3』(2008)、『アナコンダ4』(2009)、『ピラナコンダ』(2021)、『アナコンダVS.殺人クロコダイル』(2021)、『シン・アナコンダ -捕食領域- 』(2021)、『シン・アナコンダ』(2021)と続編が制作され、シリーズ化されていくことになる。

オリジナルの1997年版を見ていなかったとしても、”なんかB級感があって楽しそうだ”と思わないだろうか? それは本シリーズを民放TVの再放送で似たような作品を鑑賞した記憶があるからではないか。平日昼間の関東ローカル放送ながら、攻めたラインナップで全国区の知名度を誇る『午後のロードショー』(テレビ東京系)。2026年4月1日で30周年を迎えた『午後ロー』では、アクション映画、サスペンス・スリラー映画、アニマル・パニック映画が多く放送され、アニマル・パニック映画の中でも、アナコンダはサメ、ワニに続く定番タイトルだ。

おそらく本作は、TV放送で映画を観ていた世代にマッチするはずだ。誤解を恐れずに言うと、『午後ロー』が放送される平日昼間、または『サタ☆シネ』(テレビ東京系)が放送される土曜深夜に、映画をダラダラ観ることができるなんて、怠惰な生活を送っていたのだろう。モラトリアムだった学生時代、人生にくすぶっていたあの頃、そんな時期だったのではないだろうか。その焦燥感は奇しくも本作の登場人物たちの現在に重なってくるから、笑った後に感情を揺さぶられるのだ。

アメリカ本国の評論家のなかには、「本作のチープさはオリジナル作品をバカにしている」とみる向きもあるらしいが、こと日本において、そんなことはないと信じている。1997年版と同様に、本作の原題は『Anaconda』である。ここにリスペクトを感じつつも、邦題を『俺たちのアナコンダ』ととし、観客の気持ちをそのまま言葉にしたのは、作品内容を深く理解しているし、本当にグッジョブとしか言いようがない。

それに本作は”ストレートなリメイクではない”が、登場人物のキャラクターの要素、所作、行動、ストーリー展開は、オリジナルと同じ構造をしている。細かい部分、こじつけレベルかもしれないが、オリジナル版のオマージュがふんだんにスクリーン上に散りばめられている。なんせ、あの絶妙なタイミングでアイス・キューブが本人役で登場するのだから。