キーラン・カルキンとベンジー
アイゼンバーグにこの映画のアイデアを与えたのは、「ホロコースト・ツアー(昼食付き)」というオンライン広告だった。彼は最初、それを馬鹿げていると思ったが、その後、コメディーの可能性に気づいた。アイゼンバーグ自身は当初、ベンジー役を演じることに興味を持っていたが、デヴィッド役での出演を勧めたのは、プロデューサーとして名を連ねるエマ・ストーンだった。
彼女はアイゼンバーグとは『ゾンビランド』シリーズで共演した友人であり、キーラン・カルキンの元交際相手でもある。そして、キーラン・カルキンと出演交渉をしたのも彼女だ。
キーランは愛妻家で、家族をとても愛している。だから彼には、”家族と会わない時間を8日以上空けてはいけない”というルールがある。それゆえ、この映画のオファーを何度も断ろうとした。
しかし、エマは「だめ、だめ。あなたが辞退したら、すべてが台無しになる」と言いつつも、「でもそれはあなたのせいじゃない。そんなプレッシャーを感じるべきじゃないわ」とキーランの選択を尊重する。
すでにポーランドでロケハンが進んでいるなか、キーランは自分がこのオファーを断ることで多くの失業者を出すことを不安に覚えても、エマは「それはあなたのせいじゃない。私たちプロデューサーの仕事だ」とキーランを慮った。このやりとりの末、キーランはベンジー役を引き受けることになる。
キーラン・カルキンは、『ホーム・アローン』で世界中からスポットライトを浴びた、マコーレー・カルキンの弟である。キーランはカルキン家7人兄弟(5男2女)の4番目で、幼いころから俳優として育てられた。しかし現在、俳優として業界で目覚ましい活躍を見せているのは彼と弟のロリーだけ。
彼は、兄・マコーレー・カルキンについて米エスクァイア誌に次のように語っている。
「彼は本当にかわいそうだった。まだ幼かったのに、あんなに有名になり、その現実を受け入れなければいけなかった。当時、子どもながらに、”彼にとって最悪だ”と思ったのを覚えている」
https://www.esquire.com/entertainment/tv/a43427480/kieran-culkin-siblings-childhood-celebrity/
キーラン・カルキンは、2024年、第81回ゴールデングローブ賞テレビドラマ部門主演男優賞を受賞した、HBOドラマ「メディア王 〜華麗なる一族〜」の中では巨大なマルチメディア複合企業を経営する役を演じたが、兄がホーム・アローンを演じて以来、マスコミを信用していない。
1995年の両親の離婚の際、当時13歳のキーランは法廷に手書きのメモを提出し、マスコミの法廷への立ち入りを禁じるよう要請した。
「裁判長、お願いです。報道陣を法廷に入れることで、僕の家族がこれ以上、恥をかかないようにしてください。もうすでに僕たちはつらい思いをしており、これ以上の意味はないと思います」と。
https://www.esquire.com/entertainment/tv/a43427480/kieran-culkin-siblings-childhood-celebrity/
ベンジーはデヴィッドの仕事がデジタル広告販売だと聞くと、「クソみたいな仕事だ」と嫌悪する。情報の羅列には温もりがない。キーランのファミリーヒストリーを知ることで、ユダヤ人ではない彼が演じたベンジーと重なりが感じられる。