2度のパルムドール大賞受賞をはじめ、世界中で100賞以上もの映画賞を受賞しているベルギーの名匠、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督。彼らの最新作となる映画『トリとロキタ』では、原点回帰ともいえる、BGMなし、演技未経験の主演俳優、無駄のない作劇に加え、先の読めないサスペンスを極めた。
この度、第75回カンヌ国際映画祭で75周年記念大賞を見事受賞した本作の本予告映像が公開された。
本予告映像は、ロキタがトリの学校の終わりを待ち「会いたくなった」とじゃれ合う様子や、ふたりで仲睦まじく歌うシーンから始まる。しかし、そんな明るい様子から事態は一転、トリは「どうして(ロキタの)ビザがおりないの?」と面接官に尋ねるが、「力になれない」と突き放されてしまう。
ふたりはアフリカからやってきて、ベルギーを目指す道中で出会った偽の姉弟。祖国にいる家族への仕送りのため、ビザを取得し正規雇用に就くことを望むロキタ。現在はトリと共に麻薬の運び屋をすることで生計を立てており、警察に目をつけられるなど常に危険と隣り合わせの暮らしをしている。
「ビザさえあれば働けるのに、どうしておりないの」とロキタが嘆くと「僕らが邪魔だから」とトリがいうシーンには思わず胸を締め付けられる・・・・。
ある日、ロキタは密航を斡旋した仲介業者に稼いだ金を奪われてしまう。一刻も早くビザを手に入れようと、ロキタは運び屋よりもさらに危険な仕事に手を出す。
目隠しされて連れてこられたのは暗くて怪しい倉庫のような場所。果たしてロキタは何をすることになるのか。そして精神的に不安定なロキタを支えるため傍にずっといたトリは、命の危険を顧みずにロキタの元へと向かう。「ぼくが守る」とロキタの手を握るトリ。再会したふたりに生き抜く道はあるのだろうか。
たった100秒の間でさえも、ふたりのゆるぎない友情とそれを断ち切ろうとする冷たい世界が観ている者の心を震わせる。シンプルでいてこれまでにないダルデンヌ兄弟の傑作の断片が垣間見える。
ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、分断が進む世界で、祖国を追われた者はどこで安息を得られるのか。いま、世界が直面している、人間の尊厳の在り方を突きつけ、ダルデンヌ作品で初めて、怒りまでをもにじませる。
映画『トリとロキタ』は、3月31日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国公開。
1999年『ロゼッタ』、2003年『ある子供』、2011年『少年と自転車』‥‥各年代に傑作を生みだしてきたダルデンヌ兄弟が20年代に生み出した新たな傑作。ドラッグの運び屋をして生計を立てている幼いトリとロキタが、過酷な運命に直面し、2人の絆が引き裂かれていく。
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:パブロ・シルズ、ジョエリー・ムブンドゥ、アウバン・ウカイ、ティヒメン・フーファールツ、シャルロット・デ・ブライネ、ナデージュ・エドラオゴ、マルク・ジンガ
配給:ビターズ・エンド
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2023年3月31日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国公開