世界で最も売れたソロアーティスト、エルヴィス・プレスリー。ビートルズもクイーンも、彼の存在なしには生まれることはなかった。この伝説の「ロック」スター、エルヴィスの真実の物語、少年時代から人気絶頂での死に至るまでの彼の人生を、『ロミオ+ジュリエット』(1996 )や『ムーラン・ルージュ』(2001)の監督、バズ・ラーマンが映画化する。
無名時代のエルヴィスの才能をいち早く見いだし、生涯にわたってマネージャーを務め、彼を搾取し続けたとの悪名高いトム・パーカー大佐には、2度のアカデミー賞受賞の名優トム・ハンクス。そしてエルヴィス役には、多くのドラマなどに出演し、若者の間でも人気を集めるオースティン・バトラーが、今回大抜擢された。本作の撮影では多くのコーチに教えを受けて、ほぼ全編にわたり吹き替えなしの歌とダンスの圧倒的パフォーマンスを披露している。
本作品『エルヴィス』のプロモーションのため来日中のオースティン・バトラーさんに、エルヴィスの役作り、パーカー大佐との関係、ラーマン監督への想いなどについて、お話を伺った。
エルヴィスと自分の魂をつなげるように
―― あなたの演じたエルヴィスは、キュートだったりヤンチャだったり、あるいはセクシーだったり、本当に表情が豊かで、魅了されました。今回エルヴィス役に抜擢されて、どんなふうに役作りに取り組んだのですか?
ほぼ2年間にわたって、さまざまな準備をしました。まず、歌や演技のコーチ、会話のアクセントや空手のコーチなど、素晴らしいコーチについて学びました。自分ができるあらゆる方法で、エルヴィスの全てを吸収しようとしたんです。とにかく、エルヴィスの人間性へのキーとなるものをどうやって手に入れるかということが重要でした。つまり、自分の魂と彼の魂をどうつなげられるかということです。
―― エルヴィスの成長につれて、ご自身の中でも変化していくものがあったのですか。
確かに、彼は時代ごとに進化していきます。その変化した彼の魂に自分の魂がしっかりとつながるようにという思いで役作りをしていきました。それは、単純な外見の再現ではなくて、彼が何を感じていたかというような内面に寄り添うということです。
―― 撮影終了後には倒れて病院に搬送されたという話も伺ったのですが、それほど心身に大きな影響を与えたということですよね。
恐怖への向き合い方というものが、この映画の中では重要な一つのファクターになります。責任へのプレッシャーとか恐怖心をたくさん経験してその恐怖心を受け入れる。これはエルヴィスもやっていたことですね。でも一方で、その感情を別の方向に向けることができれば、素晴らしいものをクリエイトすることもできる。それは僕がこの撮影で知ったことです。
実際この2年間、全身全霊でエルヴィスに集中して、彼のさまざまな時期を経験し感情的なアップダウンも同様に経験しました。それは僕自身の人生にも大きく影響して、撮影が終了した時には自分が誰だったのか思い出さなければいけないというような状態だったのです。
―― まさにエルヴィスそのものだったんですね。
そうあるように全力を尽くしました。