Oct 23, 2021 interview

小野花梨×見上愛が語る、出演作 映画『プリテンダーズ』で演じた役と自分自身について

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協調性を大事にする日本社会に一石を投じる映画が誕生。それは、ひねくれ者で引きこもりの花梨と彼女の親友・風子が、現実とフィクションをミックスした動画撮影から世直しが出来ると踏んだ2人の刺激的で危険なアイデアの行く末を描いたシスターフッドムービー『プリテンダーズ』。

監督は、『珈琲とミルク』(公開:2005年)で、ぴあフィルムフェスティバル/PFFアワード2005で審査員特別賞・企画賞・クリエイティブ賞を受賞し、『パーク アンド ラブホテル』(公開:2007年)で、第58回ベルリン国際映画祭・最優秀新人作品賞を受賞した熊坂出。本作は、熊坂監督によるオリジナル脚本であり、監督の熱烈オファーにより小野花梨が主人公・花梨を務め、俳優・志尊淳からの推薦で、監督と小野花梨が面接をした見上愛が風子役に抜擢。今回は劇中で親友を演じた小野花梨さんと見上愛さんに、自身の「内面」についても伺いました。

―― 演じられた主人公【花梨】は、高校で「前にならえ」の掛け声にも、手を横に広げてしまうくらいひねくれていますが、何故だと思いますか。

小野 裏設定として、お母さんを早くに亡くしていて、お母さんのことは凄く好きだったんですけど、お父さんは育児に干渉してこなかった人で、何もかも全てお母さんがおこなっていたそうです。そんな完璧なお母さんが大好きで、お母さんみたいに自分はならないといけない、妹にも凄く好かれないといけないし、完璧にお母さんをしないといけないと【花梨】は思っていたんです。それなのにお父さんは「学校にちゃんと行け」とか「何でお前は出来ないんだ」と社会的な評価を気にしている。その狭間に突き落とされた時に「【花梨】はあんな風になってしまった」と最初に監督とお話させて頂いた中で【花梨】というキャラクターが出て来たんです。

親からすればきっと凄く素敵な女の子だったと思うんですよ。お姉ちゃんとしていつも洗濯したり、ご飯を作ったり、家事をしている。もう少しお父さんが「いつもありがとう」と言ってくれていれば、きっと“変わっていたんだろうな”と思います。お父さんという、一番近い大人と上手くいかない、認められなかったということが一番大きな原因になったと感じています。

―― 小野さんは『彼女がその名を知らない鳥たち』(公開:2017年)で蒼井優さんが演じられた【十和子】というキャラクターに共感する部分があると仰っていますが、どんな部分に共感するのですか。

小野 【十和子】というキャラクターは女性の本質だと思います。女性って皆そうなんじゃないかな、だからこそ痛みが理解出来るし、共感もします。

―― そういう意味では『プリテンダーズ』という作品も本質を描いていますね。

小野 そうですね。【花梨】は、蒼井優さん演じる【十和子】にちょっと似ているところがあると思います。女性の嫌な部分とか、承認欲求や行き所のない感じなど、凄く似ているところがありますよね。

―― そんな【花梨】の傍に【風子】はずっと一緒にいますよね。どうしてだと思いますか。

見上 共依存に近いと思います。【風子】は自己肯定感が強くて、自分の存在意義を見い出しているみたいな感じですけど、本当のところは【花梨】と一緒にいることで自分(【風子】)の存在意義を見い出している。【花梨】の親面をして“私が居ないと【花梨】ちゃんは駄目だ”と思うことによって生きやすくなっている部分もあると思っていました。だからこそ喧嘩のシーンでは、【花梨】と【風子】それぞれの自立という意味での決別が描かれていると。

―― だから、あそこまでの喧嘩になるのですね。ある意味、親のような感情もプラスされて。

見上 そうですね。【花梨】とも戦っているし、自分自身とも戦っている状態だったんじゃないかな。

小野 面白いのが映画の前半では特に【花梨】が【風子】に金銭的にも社会的にも依存しているんですが、あの部分で【花梨】が【風子】に「風子って私に依存してない?」と言う台詞があって、そこで【風子】自身も“なるほど”と、「私がずっと依存されているし、やってあげていると思っていたけど【花梨】ちゃんがいなくなった時、私には何があるんだろう」と思うように作りたいと監督が仰って、リハーサルを結構しました。まさにキョウイズムというか。