ある時、竹中直人が大橋裕之原作の初期短編集となる漫画「ゾッキA」「ゾッキB」と再び出会ったことから、山田孝之、齊藤工に声をかけ、三人で監督をするという企画が生まれた映画『ゾッキ』。今まで俳優とプロデューサーを務めて来た山田は、自らプロデューサーを買って出て、今回、初監督。それぞれ自らキャスティングをし、今まで共演して来た俳優からベテラン、オーディションで選んだ子役、更には芸人、ミュージシャンと幅広い顔ぶれ。クスリと笑えてホロリとし、愛おしさと懐かしさに包まれる映画を作り出した竹中直人監督、山田孝之監督、齊藤工監督に、撮影時の思い出やキャスティングについて語らって頂きました。
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――まずは俳優陣がバラエティに富んでいて、監督それぞれのパートでのキャスティングについて教えて下さい。
山田:僕は原作の表情(顔)や言動を見て、そのキャラクターに合わせて俳優を決めていきました。回想シーンとかはオーディションをやらせて頂きました。
――ヤスさん(漁師)役を演じられている國村隼さん登場にさすが!と思いました。
山田:本当によく出てくれましたよね(笑)。僕が最初にイメージしていた人達が、ほとんど出演して下さったんです。“ラッキーだな。初監督だからなのかな。でも『ゾッキ』が面白いからだろう”と思っていました。
皆さん凄いキャスティングで、竹中(直人)さんのキャスティングはミュージシャンの方達がたくさん出演されているし、(齊藤)工君も”見つけて来るな、この人は”と思っていました(笑)
――九条ジョーさんから目が離せなかったです。よく見つけられて来ましたよね。
齊藤:九条ジョーさんは伴くん要素が凄くある生命体(人)だったんです。なんか匂って来たというか(笑)たまたま芸人の永野さんと一緒に作った長編映画『MANRIKI』(公開:2019年)という作品の番宣でフジテレビ『ネタパレ』に出演した時に、お笑いコンビのコウテイさんがネタを披露されていたんです。その右側に立っていたボケなのかツッコミなのかわからなかったんですが、そのヒョロっとした人が“伴要素しかない”という感じで、自分の中で勝手に坊主を想像していました。
山田:その場で坊主っぽくしてもらったんですか?
齊藤:その場ではしなかったです。でも“坊主になったら伴だ”と思っていました。同じ週に、たまたま森優作さんと同じ現場で共演したんですけど、そこで森さんはスタッフさんに俳優部という扱いを受けていない感じで、現場に忘れられてしまった森優作という姿を見て“これは牧田だな”と(笑)
そして『MANRIKI』の公開中に大河ドラマ『いだてん』で共演していた木竜麻生さんが『いだてん』チームの劇場に観に来てくれた時に“あれ?”となって、全員が同じ週に会ったという、まさに点が線になった流れがありました。
――映画を観ているとこの監督だからこのキャスティングみたいなものが、相関図みたいに浮かんで来ました。竹中監督にいたってはミュージシャンの方が多くて、倖田來未さんが出演されているのにはビックリしました。
齊藤:なんたって竹原ピストルさんと倖田來未さんですよ(笑)
山田:あとカニ(笑)
竹中:僕は自分の映画にはどうしてもミュージシャンを俳優として呼びたくなってしまうんです。ミュージシャンの方は役作りとかそんな次元のもんじゃなくて理屈抜きで役を感じてくれるんですよね。
山田:竹中さんは必ずミュージシャンを呼ぶ、工君は必ず芸人さんを呼ぶ。そういうことですね(笑)
竹中:“この二人(竹原ピストルさんと倖田來未さん)が歩いている姿を撮りたい”、とにかくピストルとクーちゃんのツーショットを撮りたかったんです。
一同:(笑)
――竹中監督のシーンで忘れられないシーンがあるんです。それは竹原ピストルさん演じる父が「カッコいいお父ちゃん」「守るお父ちゃん」になりたいのになれなくて、幽霊を前に子供を置いて走って逃げてしまう、それでも戻って来るシーンが凄くチャーミングだと思いました。
竹中:あのシーンは原作にもありますが、原作では子供と一緒に逃げるんです。それを脚本の倉持さんが良い感じにアレンジして下さった。父役はもうピストルしか考えられなかったんです。ピストルのあの【顔】です!子役のオーディションもやりましたが、もう会った瞬間にあの子(潤浩)だ!ってすぐ決まりました。
――音楽や編集にもこだわりを随所に感じました。例えば齊藤工監督の作品でいえば九条ジョーさんが演じられている伴くんが廊下で踊るシーン、あのシーンは『ジョーカー』(公開:2019年)ですよね。
齊藤:そうです。伴くんは日本版『ジョーカー』だと思ったので、映画の予告編を何度も見てもらい、横を向いて踊ってもらっています(笑)
山田:カーテンの中で喋っているシーン、大好きです。
竹中:いいですよね。