Jun 24, 2018 column

日本映画界を牽引!俳優・綾野剛の多彩な魅力と才能を徹底解説

A A
SHARE

繊細な役からワイルドな役まで幅広くこなし、昨年はドラマ「フランケンシュタインの恋」で人間ではない役柄を類い稀な芝居センスで見事演じこなした綾野剛。最新主演作の『パンク侍、斬られて候』では“超人的剣客”の浪人・掛十之進を演じ、パンキッシュで型破りな時代劇に挑戦している。7月スタートのドラマ「ハゲタカ」の主演も決定しており、ドラマ・映画と主演作が後を絶たない彼の魅力を過去作とともに紐解いてみる。

 

映画『パンク侍、斬られて候』(2018年6月30日公開) ©エイベックス通信放送

 

最新主演作『パンク侍、斬られて候』は“綾野剛の幕の内弁当”!

 

綾野剛の待望の最新主演作は、作家の町田康が2004年に発表した傑作小説を実写化した『パンク侍、斬られて候』だ。『シャニダールの花』(13年)や『ソレダケ / that’s it』(15年)に続き3度目のタッグとなる石井岳龍が監督を務めたこともあり、前代未聞のエンターテインメント大作となっている。今作で自らを“超人的剣客”と表す浪人・掛十之進を演じている綾野について「シリアス、不良性、アクション、恋愛、ギャグと振り幅広く乱反射していくような掛というキャラクターを演じられるのは綾野君しかいない」と石井監督は語る。その言葉通り、多面性を持つ非常にユニークな演技を披露しており、例えばすぐハッタリをかまして誰彼構わずイキってみせたり、あるときは心の奥底に秘めたピュアさを感じさせたり、着流しで戦う殺陣シーンでは体を張ったアクションを見せるなど“綾野剛の幕の内弁当”と言ってもいいほど彼の魅力満載の映画なのだ。共演者も豪華な今作では豊川悦司演じる黒和藩筆頭家老の内藤帯刀と掛のシーンが多く、豊川の大人フェロモンと綾野の危うい色気が混じり合ってスクリーンからダダ漏れしているのも嬉しいポイント。江戸時代を舞台にしつつも宮藤官九郎脚本による今風の会話劇は楽しく、浅野忠信や村上淳、渋川清彦など映画好きにはたまらない面子と綾野との演技バトルも見どころとなっている。

 

映画『パンク侍、斬られて候』(2018年6月30日公開) ©エイベックス通信放送

 

先日行われた完成披露イベントで綾野は「剛くん、今回は宇宙と戦ってほしい」と石井監督の意外な演出方法を暴露して会場中が爆笑の渦に。さらに撮影中に豊川がぎっくり腰になってしまい、綾野がセットの中で60分間マッサージしたという素敵なエピソードも豊川本人から明かされると、たまらなく嬉しそうな表情を見せていた。イベントの最後には「今の自分の精神状態がどういう状態かによって、この作品は表情を変え、景色を変え、皆様に見せる豊かさも変わると思っています。今、ご自身に起こっていること、自分を肯定できること、この作品を通して、自分は正しいんだという、そういった解釈に立ち戻っていただけたら幸いです」と、彼らしい真っすぐな言葉で締めくくるところが座長らしくもあり、そういった誠実さが大勢の綾野ファンの心をグッと掴んでいたのも印象的だった。

 

ミステリアスなロングヘア時代、TVでの大ブレイクを経て本格派俳優の道へ

 

『クローズZEROII』(ブルーレイ・DVD 発売中) ©2009 髙橋ヒロシ/「クローズZEROII」製作委員会

 

今でこそ幅広い役柄やバラエティ番組で見せる人懐っこいキャラクターが人気の綾野だが、10年以上前の主演作『Life』(07年)では肩よりも長いロングヘアでミステリアスな雰囲気を醸し出していた。また一気に知名度をあげた『クローズZERO II』(09年)ではその風貌を120%活かし、晴れていても常に黒い傘をさして歩くクールな高校生を演じていたが、ひとたび戦闘モードに入るとロン毛を振り乱しながら恐ろしく狂気的な強さで観客を魅了したのである。

30代突入の年に出演した朝の連続テレビ小説「カーネーション」(12年)ではトレードマークとも言える長い髪をバッサリと切り、その後も大河ドラマ「八重の桜」や坂元裕二が脚本を手掛けたドラマ「最高の離婚」(13年)などで大ブレイク。その直後に出演した「情熱大陸」では、自身の写真集発売イベントで朝早くから並ぶファンの気持ちを考慮し、当日券を際限なしに出さないようスタッフに指示をする男気ある姿が多くの反響を呼んだ。このあたりから主演作も増え始め、『シャニダールの花』で植物学者を、『そこのみにて光輝く』(14年)で無精髭を生やした無職の男性を演じるなど、本格派俳優への道を着実に歩み始める。特に『そこのみにて光輝く』では呉美保監督こだわりのラブシーンにも果敢に挑戦。また、酒浸りの役を演じるうえで毎晩お酒を飲むなどリアルな芝居へのアプローチが強みとなり、他の若手俳優と一線を画していくのである。