坂東龍汰×岡山天音インタビュー 映画『我々は宇宙人』大人になって誰もが「なかったこと」にしていること

制作現場を感じた上での役作り

——本作の制作期間中に、坂東さんは作画現場を見学されたと伺いました。

坂東 ぜひ見に行きたいなと思い、スタジオを見学させていただきました。本当に皆さん、とても集中していて張り詰めた空間でした。伺ったときは、ちょうど宇宙船内の作画をされているところで、本当に1枚1枚、1箇所1箇所、配電盤のような細かいところまで手描きで描いていて、緻密な作画の迫力に圧倒されました。天音くんは、子役たちのアフレコを見に行ったんでしょ?

岡山 子どもたちのシーンは、僕らの収録より先に録り終えるスケジュールで。今回の役柄は子ども時代と二人一役なので、見ておきたいなという思いで見学させていただきました。

この作品は唯一無二の風合いの新しい作品だと思うんですよね。だから普通にアニメーションに俳優が声を当てると、「こういうテンション感で演じればハマるよね」というところがない。

どのぐらいのテイストの表現がハマるのかを探りながら、子役たちのアフレコを録っていて。キャラクターたちが何かに登るシーンだったら、実際に登る場所を作って、同じ動きをしてセリフを言ってもらうとか、試行錯誤されていました。監督がすごく戦っているなと感じました。
坂東 逆に、我々のシーンは、お芝居優先でアフレコしてくれていたじゃない。

岡山 うんうん。

坂東 僕らの声に合わせて、顔も口の動きも後から付け加えたっていう話もされていました。完成した本編を見ると、僕らの声に合わせて後から修正してくれたんだ、とわかるほど、 口の動きと声が綺麗にリンクしている。すごく感動しましたし嬉しかったです。

芝居に合わせる作画と世界観に合わせる芝居

——お二人ともアニメの声の出演は初めてではないと思いますが、今作のお芝居において、どう役柄を作り上げていったのかを教えていただきたいです。

坂東 天音くんが言っていた、この作品のテイストに合う声を自分がどう出すか。絵を見て、子役たちが当てたシーンを見て、監督の空気感を感じた上で、自分は、何を拾って何を感じなきゃいけないのか。そういうことに、すごく集中しました。

監督に「坂東くんは、大きい声でやりたいかもしれないけど、こういうシチュエーションだから、もう少し抑えてほしい」と言われたシーンがあって、抑えた中で出てくる表現で、翼の一番感情が乗った状態はどこだろう、みたいなことを話し合っていました。お芝居としての技術的なアプローチよりも、まず作品が持つ世界観を感じ取ることを最優先にしていました。

岡山 自分が想定していた表現じゃないものを、暁太郎には求められることが多かった。映画には、起伏のある暁太郎の人生の一部が集約されているので、それに合わせるように声音も、場面場面、一言一言、逐一すり合わせて調整して、「あっちじゃないね」とか「こっちならまだあれかな」とか、ずっと繰り返していましたね。

感情的なところでシンクロしても、表現をかなり調整しないと、自分にとって声のみの仕事は成立しないと思っているので。そのバランスが難しかったですね。

坂東 翼に関しては、監督も方向性が早く決まったけれど、暁太郎に関しては、天音くんと同じように監督も悩んでいたから、お互い、確認とすり合わせをしながら、すごく細かいニュアンスのところまで話し合っていたイメージがある。

岡山 本編中に暁太郎にとって何かが暴発する瞬間があるんですけど、フラットに見て、フィジカル的にも弱い立場の人じゃなきゃいけない。感情を込めただけの芝居では、どうしても暁太郎が強い存在に見えてしまいます。そのバランスを取るために調整が必要でした。

カンヌでも反響を呼んだ幼少期の思い出

——本作は第79回カンヌ国際映画祭の第58回監督週間でワールドプレミア上映されました。監督と一緒にお二人も登壇されたそうですが、現地で感じたことを教えてください。

坂東 実写の映画が多い中で、このアニメーション映画が上映されました。関係者だけじゃなく、本当に映画が大好きな地元の人が、とてつもない熱量と期待を持って、チケット買って観てくれました。劇場に入ったときから熱気をすごく感じましたね。

僕たちが「ボンジュール」と挨拶すると、「きゃあー!」といった黄色い歓声が上がりました(笑)。きっと僕たちのことは知らないはずですが、お祭りだから高揚感に包まれているのでしょうね。でも映画が始まると、観客の皆さんは静まり返り、非常に集中して鑑賞していました。特に、僕たちが気づかない角度からの視線や細部など、映画を深く鑑賞しようとする強い執念を感じました。特に笑いの部分は、リアクションが大きかったですね。

岡山 ウケてたね。彼らの本作に対する捉え方というか、モチベーションの持ち方が、とても新鮮でした。心の底から映画を楽しもうとしているんですよ。

——翼と暁太郎の幼少期のシーンは、「そういうことあったな」と自分に重なる部分がたくさんありました。それは日本人的な感覚だと思っていましたが、フランスでも通じる体験だったんですね。

坂東 男の子の執着や憧れみたいなものは、海外でもあるんじゃないですか? テレビもあるし、ゲーム機もあるだろうし。

岡山 翼とお母さんとの「隠れてゲームする、ゲーム機を隠す」みたいなやり取りは、めちゃめちゃウケてたよね。

坂東 反応を間近で感じることができたよね。「フランスでも、親子間で起きているんだ」というのが伝わってきた。

——お二人は小学校のときは、どんなことで遊びましたか?

岡山 ケイドロとかSケンとかで遊んでいましたね、あとはゲーム。ポケモンとかドラクエとか。

坂東 僕はゲーム禁止だったから、隠れてやってた。それこそ、映画の中で翼がベッドの下にゲーム機をガムテープで貼り付けて隠していたじゃないですか。あれ、僕もやっていました。ベッドのシーツを干されるときにバレるからさ、あれが一番バレない。

岡山 すごいね。僕も「ゲームは1時間まで」とか言われましたね。その約束を破ったら没収されて隠されていましたね。で、勝手に見つけて‥‥みたいな。本当に映画のまんま(笑)。

坂東 誰もがゲームを隠される経験はあるよね。

子どもの頃の恐怖と宇宙人のような人々

——本作では、子どものときの「なんとも言えない恐怖感」がアニメーションとして描かれています。お二人は子どものときに怖かったものは何ですか?

坂東 「死んだらどうなるんだ?」とか思っていたよね。僕は暗闇とお化けは怖かったな。今も両方怖い。

岡山 村八分にされるのを恐れていたね。

坂東 僕は村八分にされたかったな。「みんなと違うぜ」みたいな(笑)。

——タイトルにかけて「宇宙人っぽいな」って思う人はいますか?

岡山 宇宙人ばっかりですけどね、この業界は。みんなオリジナリティがあるという意味で。そういう人たちに囲まれている。

坂東 確かに。僕は、自分が宇宙人だと思っています。会った人によく言われるんですよ「人間じゃない」って。だから「え、そうだよ。僕は宇宙人だよ」って答えています(笑)。

——演じる上でそれぞれのキャラクターの心情へ共感した部分はありますか?

坂東 田舎から上京して、お仕事して、いろんな人と出会っていく中で、昔のことに蓋をしてなかったことにしよう、という大人になった翼の感覚は、今の自分自身にも重なるところがあって共感できました。

幼少期はどちらかというと、暁太郎の方が自分に近いと思います。もう、超野生児でしたからね。僕は、海が目の前にある、親が自分で建てたような家に住んでいたので。いわゆる翼が住んでいるような一軒家に憧れていました。

岡山 具体的なエピソードで自分と重なる部分は、あんまりないですが。人間としてコンプレックスから来る憤りとか、感情面では、自分の暁太郎的な部分を感じていましたね。

あの頃を呼び起こす邦画的アニメーション

——完成した本編をご覧になった感想を教えてください。

岡山 自分の出演している作品は、いろんなノイズが頭の中で響いてしまうので、心をざわつかせながら観ました。それでも、すごくクオリティが高くて面白い。今作が持っている力を感じました。

坂東 長い年月をかけて描いた作画のクオリティに圧倒されました。アニメーション映画なのですけど、どこか邦画を観ている感覚になるようなリアリティで。

すっと作品の世界観に入り込めて、気づいたら、自分の閉ざしていた記憶の扉が開いている。自分が経験してきたかのように、物語の中の出来事をキャッチできる感覚がありましたね。あとは「すごいものを見たな」と、素直にその一言に尽きます。

この映画を観て、友達に薦めたくならない人はいないんじゃないかな‥‥。

岡山 まぁタイトルが”我々は宇宙人”だからね(笑)。でもそうだよね。試写を観たとき、そこで初めてお会いする方とか、知らない方もたくさんいましたが、みんな試写室に入る前と観終わった後で明らかに表情も空気が違った。

坂東 うん。主題歌を歌った上白石萌歌と一緒だった? 興奮してたでしょ? 「やばかった」って、速攻連絡が来たよ。 

——これから『我々は宇宙人』を観る観客の方にメッセージをお願いします。

坂東 僕が言わなくても、この作品は確実に広がってくとは思いますが、老若男女、すべての世代の人に届けたいというか、観てほしい。

例えば、親子で観たとしても、お父さんは「ああ、懐かしいな」というノスタルジックな気持ちになると思います。翼と暁太郎と同じ時代を生きていなかったとしても、たくさん感じるものが絶対にある。子どもが観ても、友達とケンカしたことを思い出して「明日こうしよう」とか、いろんな思いになる映画だと思う。

それでいて邦画ノアール的な要素も入っているから、アニメーションだけど、映画好きの人が観ても面白い。そこをカンヌが認めてくれたんだと思います。

岡山 本当はあったのに「なかったこと」になっている時間や感覚って、たぶん誰にでもあるんですよね。この映画はそういうものを呼び起こす作品だと思っています。 そういうことを思い出す体験って、本当にレアだと思うんです。だから劇場で、その感覚を思う存分味わっていただきたいなと思いますね。

取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 岡本英理

映画『我々は宇宙人』

平成のある田舎町。内気で“普通”であることに悩む少年・翼は、小学三年生の春、クラスの人気者で“特別”な存在の暁太郎と出会い、親友になる。二人だけの遊び、意味のない会話、夕暮れの帰り道──世界は確かに、彼らのものだった。しかしある日を境に、暁太郎はクラスの中で浮いた存在となり、噂や視線が彼を囲んでいく。やがて起こる、取り返しのつかない事件。「もしもさ、俺が宇宙人だったらどうする?」これは二人の青春物語なのか? それとも消したい記憶なのか? 30年にわたる友情を描いた、かぎりなく青い旅立ちの物語。

企画・脚本・監督:門脇康平

出演:坂東龍汰、岡山天音、山﨑天(櫻坂46)、松井ケムリ、槙木悠人、中込佑玖、鈴木咲、末永陽

配給:TOHO NEXT・NOTHING NEW

©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

2026年9月25日(金) 全国公開

公式サイト wearealiens