Dec 19, 2025 news

名古屋発、新たな国際アニメーション映画祭ANIAFFがフィナーレ―金鯱賞は『エンドレス・クッキー』、『ひゃくえむ。』岩井澤健治監督が観客賞と個人賞のW受賞

A A
SHARE

日本の三大都市圏の中核のひとつである愛知県名古屋市にて、2025年12月12日 (金)~17日 (水)の6日間にわたり、新たな国際アニメーション映画祭として第1回「あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル (ANIAFF) 」が開催された。世界の作り手とプロデューサーが集う拠点を目指した映画祭として、特集上映、招待上映などのほか、トークイベントやシンポジウム、企画マーケットなどを実施。

井上伸一郎フェスティバルディレクター

開会初日には、『無名の人生』の鈴木竜也監督、『ニムエンダジュ』のタニア・アナヤ監督、『死は存在しない』のフェリックス・デフュール=ラペリエール監督による記者会見が行われた。また、映画祭の目玉のひとつである特集上映部門のディレクター・フォーカスでは細田守監督特集として映画『サマーウォーズ』が上映され、細田守監督がトークセッションを行い、主人公の小磯健二の声を演じた神木隆之介もサプライズゲストとして登壇するなど大いに盛り上がった。 

記念すべき第1回の国際コンペティションでは、29か国から45本もの長編作品が集まり、その中から選ばれた11本が最高賞を争った。栄えある第1回金鯱賞(グランプリ)に輝いたのは『エンドレス・クッキー』。白人の弟がカナダ先住民である兄にインタビューする様子を描いた、異父兄弟をめぐるドキュメンタリーアニメーションで、制作には9年もの歳月が費やされたという。 

銀鯱賞(審査員賞)は、中国の『燃比娃(ランビーワ)‐炎の物語‐』、赤鯱賞(観客賞)は『ひゃくえむ。』が受賞。観客賞は会場で鑑賞した来場者から最も多くの支持を受けた作品として選出されている。 

受賞コメントでは、ビデオメッセージで『エンドレス・クッキー』のセス・スクライヴァー監督、ピーター・スクライヴァー監督が、受賞の喜びと第1回の“最初の受賞者”であることへの特別な思いを語り、近いうちに名古屋を訪れるのを楽しみにしていること、賞金で日本に来て親戚にも会いたいと述べている。 

『燃比娃(ランビーワ)‐炎の物語‐』のウェンユー・リー監督は、受賞への感謝を述べるとともに、個人的事情で会場に行けなかったことへの残念さ、将来新作を携えて参加したいという願いを伝えた。 

そして観客賞『ひゃくえむ。』の岩井澤健治監督は、トロフィーの赤色が作品ビジュアルと重なることに触れつつ、スタジオを立ち上げて制作した作品であり、チームとしての評価が受賞につながったのではないかと喜びを語っている。 

金鯱賞(グランプリ):『エンドレス・クッキー』(セス・スクライヴァー、ピーター・スクライヴァー監督/カナダ)

銀鯱賞(審査員賞):『燃比娃(ランビーワ)‐炎の物語‐』(ウェンユー・リー監督/中国)

赤鯱賞(観客賞):『ひゃくえむ。』(岩井澤健治監督/日本) 

集まった作品の特徴として挙げられたのは、内省、家族の絆、文化的アイデンティティといった“人間性のある普遍的なテーマ”の多さ。貧困や鬱といった現実問題をメインストリームな表現で描く『オリビアとゆれる心』がある一方で、『エンドレス・クッキー』が提示するカナダ先住民の問題、『ニムエンダジュ』が示すブラジル先住民の状況など、これまであまり知られてこなかった社会問題にも光を当て、プログラム全体でグローバルな視点に取り組んだとされる。  重要なテーマに触れることで観る者の記憶に深く残り、名古屋という地域で多彩な映画体験を共有できたことへの喜び、上映中に伝わる観客のまっすぐな反応が作品理解をさらに深めたことも、総評の言葉として綴られた。 

さらに、ANIAFFではアニメーション文化の発展を目指す事業のひとつとして、スタッフの才能・業績を広く知ってもらうための顕彰も実施。今回、個人賞(カキツバタ賞、ユリ賞)とスタジオ賞(ハナノキ賞)の3賞が設けられた。 

受賞コメントとして、カキツバタ賞を受賞した岩井澤監督は、個人制作から始まり、3年前にスタジオを作ってチーム制作へ移行してきた歩みを振り返り、第1回の“1人目の受賞者”として、今後この賞のリレーがつながっていくことを願うと語った。

 

ユリ賞の廣瀬清志(株式会社エディッツ)は、受賞の驚きとともに、個人だけでなくスタッフ全員の日々の挑戦が評価されたこと、監督や制作会社、作品に携わるスタッフへの感謝、そしてこれからも編集で作品の魅力を引き出していきたいという思いを述べた。 

ハナノキ賞を受賞した株式会社ピーエーワークスは、地方で始めた制作会社としての歩み、人を育ててきたこと、業界を良くしようとしてきた姿勢、オリジナル作品への注力が評価されたのではないかと受け止める。そして、スタッフが語り合いながら“自分たちは何ができるか”を考え続ける環境づくりを大切にし、熱い作品を世界へ発信し続けたいとコメントしている。  

イベント情報
「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」

愛知県・名古屋市に誕生した新たなる国際アニメーション映画祭

会期:2025年12月12日(金)~17日(水)

会場:ミッドランドスクエア シネマ、ミッドランドスクエア シネマ2、109シネマズ名古屋などの上映施設ほか

公式サイト aniaff.com