Dec 19, 2025 interview

荒井晴彦 監督 & 咲耶が語る 妥協なしに作り上げた「昭和」の匂いが香る『星と月は天の穴』

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小説家の矢添克二は、妻に逃げられて以来10年、独身のまま40代を迎えていた。娼婦・千枝⼦と時折り躯を交えを交え、妻に捨てられた傷を引きずりながらやり過ごす日々を送る。恋愛に尻込みし不惑を過ぎても葛藤する矢添は、⾃⾝が執筆する⼩説の主⼈公に⾃分を投影し、20歳も年下の大学生との恋模様を綴ることで、「精神的な愛の可能性」を探求していた。そんなある日、矢添は画廊で⼤学⽣の瀬川紀子と運命的に出会う。

人間の本能たる “愛と性”を描き、観る者の情動を掻き立ててきた荒井晴彦。その手による脚本・監督で、綾野剛、咲耶、田中麗奈らを迎え、長年の念願だった吉行淳之介の小説「星と月は天の穴」を映画化する。恋愛に対する憎悪と恐れとともに心の底では愛されたいという願望も抱く矢添は、再び一人の女と向き合うことができるのか‥‥。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『星と月は天の穴』の荒井晴彦監督と大学生・瀬川紀子を演じた咲耶さんに、本作品や映画への想いなどを伺いました。

念願の吉行作品に挑む

池ノ辺 『星と月は天の穴』がいよいよ公開されますが、今のお気持ちはいかがですか。

荒井 不安です (笑)。大体、舞台挨拶が嫌だし、取材も苦手なの。

池ノ辺 でもこの作品の映画化は監督の念願だったんですよね。

荒井 いやあ、難しいことやっちゃったなと思いました。

池ノ辺 どういうところが難しかったんですか。

荒井 小説家の主人公が書いている小説を劇中劇にしたところがうまくいってるのだろうかと。それと、大学でシナリオを教えているんだけれど、ナレーションとかモノローグとかは所詮説明で、テレビじゃないんだから映画ではそれは使わないようにと教えているわけですよ。ところが今回は、やっちゃいけないと自分が言っていたことのオンパレードですからね、しかも、字まで写して読まそうとしている。どうなんだろうと (笑)。

池ノ辺 作品を拝見して、思ったのが映像がすごく美しい。ワンカットワンカットすごく構図も考えられているし、画作りも素敵だし、監督は撮影でずいぶんと粘ったんだろうなと思ったんですけど。

荒井 俺は何もしてないよね。

咲耶 何もしていないわけじゃないですけど、でも結構早撮りでしたよね。

池ノ辺 ここはもう一回撮り直そうとかなかったんですか。

荒井 そんなこと言えないんですよ。「どうしてですか」とか聞かれたら困っちゃうじゃないですか。実際そう言われたこともあるし (笑)。

池ノ辺 その時は何て返事したんですか。

荒井 いいからやってくれと (笑)。