11月30日、「泉佐野フィルムフェス vol.2」(大阪府・エブノ泉の森ホール)で、笑福亭鶴瓶主演の映画『35年目のラブレター』(塚本連平監督)が上映され、塚本連平監督、モデルとなった西畑保さん、夜間中学で西畑さんを指導した深澤吉隆さんが登壇した。

本作は、文字の読み書きができなかった65歳の男性・西畑保さんが、最愛の妻・皎子(きょうこ)さんへ感謝の手紙を書くため夜間中学に通い始めた実話を映画化したヒューマンドラマ。若き日の夫妻を重岡大毅と上白石萌音が演じ、現在の夫婦を笑福亭鶴瓶と原田知世が演じている。
塚本監督は映画化のきっかけを「妻がテレビで西畑さんのニュースを見て“すごくいい話がある”と教えてくれた」と説明。コロナ禍で直接会えず「LINE電話で毎日1時間、7回ほど話を聞きました」と企画の裏側を語った。

89歳の西畑さんは「最初は詐欺かと思った」と言い、観客席は爆笑。深澤さんは夜間中学で教頭を務め、西畑さんの“学び直し”を見守ってきた一人。「初対面のときに『僕のこと知ってますか?』と言われて驚いた。調べてみると、いろんなところで取り上げられている方でした。とても社交的で、周囲を明るくする方でした」と語る。映画内に登場する“生徒同士でスマホを教え合う”シーンは実際の出来事で「あれは本当にあった話。あの生徒のおかげで西畑さんもLINEが使えるようになった」と明かした。
塚本監督は夜間中学の取材で出会った人々の話にも触れ「45歳まで教育を受けられず、割引表記が読めなかった人」「内戦で帰国できず、日本語で作文を書く若いアフリカの女性」など、多様な背景を紹介。「想像を超える人生がたくさんあった」と深い取材姿勢を示した。
映画を観た西畑さんは「最初は自分の話じゃないみたいやった。でも2回目は泣ける場面が何べんもあった」と率直な感想を述べた。主演の笑福亭鶴瓶について「そっくりやと思った。素晴らしい方」と手放しで称賛。重岡大毅との対面についても「気さくに話してくれて素晴らしい人」と喜びを語った。

中でもうれしかったのは原田知世との対面だという。「撮影所の喫茶店で二人きりでお茶をすることができた。そこに鶴瓶さんがやってきて『勝手に俺の嫁としゃべるな』と文句を言われました。あれは嫉妬してたんだと思います」と笑って振り返った。
実際の妻・皎子さんとの35年の夫婦生活は「1度も喧嘩したことがない」と胸を張る。「僕が今の人生を歩めたのは、妻と出会ったこと、(雇ってくれた)寿司屋さんの大将、夜間中学の3つのおかげ」と語ると、会場から温かい拍手が送られた。

塚本監督は「西畑さんの人生と出会えたことで、自分も“何歳からでも挑戦できる”と勇気をもらった」と感謝。「この映画が誰かの一歩につながれば」と締めくくった。最後に西畑さんは「夫婦仲良く暮らしていけたらええなと思います。今日来てくれた皆さんに、明日が素晴らしい日になりますように」と穏やかな笑顔で観客へメッセージを送った。
取材・文 ・撮影 / 平辻哲也

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【開催概要】
開催日:2025年11月29日(土)~30日(日)
会場:エブノ泉の森ホール(大ホール・小ホール・マルチスペース 他)
主催:泉佐野フィルムフェス実行委員会
公式サイト izumisano-film