Oct 24, 2025 column

市民がつくる水戸映画祭 ーー40年の熱き想いを映画の過去と未来に寄せて

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市民の手により企画・運営されている水戸映画祭が第40回を迎え、現在開催中だ。去る10月18日、19日に行われたイベントの模様をレポートするともに、明日25日、26日に実施される魅力的な上映プログラムを紹介する。

18日、オープニングを飾ったのは、水戸出身の映画監督、巨匠・深作欣二の映画『バトル・ロワイアル』。上映後、水戸芸術館館長の片山杜秀氏、深作健太監督、映画史・時代劇研究家の春日太一氏によるスペシャルトークが行われた。25年前の作品でありながら、まったく古さを感じさせない『バトル・ロワイヤル』。この撮影当時、深作欣二監督は、すでにがんを患っていて、遺作になるかもしれない状況で挑んだということが明かされた。

スペシャルトーク後に上映された『バトル・ロワイアル』のメイキングには、その命を燃やすかのような深作欣二監督の映画作りが克明に記録されていた。この貴重な記録を一般に鑑賞できることを可能にしたことに、改めて驚嘆した。

翌19日には、筒井康隆原作の人生最期の讃歌『敵』、すべての人を翻弄する京都の奥の奥まで描いたシニカルコメディ『ぶぶ漬けどうどす』、多くの観客と作り手に愛された映画館を守り続けた家族の物語『『BAUS 映画から船出した映画館』』が上映され、それぞれ上映後に出演者のトークセッションが行われた。

「舞台挨拶は、この人たちが映画を見てくれたんだなという実感が得られるから好きだ」という長塚京三。自身12年ぶりの主演映画となった『敵』の上映後トークセッションに登壇した長塚は「敵とは何か?」という質問に「自意識」と答え、昨年の東京国際映画祭にて、主演男優賞・最優秀監督賞・東京グランプリの3冠達成した今作への理解を深めた。

『ぶぶ漬けどうどす』では深川麻衣が登壇。「京都が舞台の作品は数多くあるなかで、今作は、京都の文化や”本音と建前”を切り口に描かれた、とてもチャレンジを感じる作品だ」と述べ、「カレーやラーメンなどの食文化も奥深い京都は楽しかった」と撮影時の思い出を振り返った。

『BAUS 映画から船出した映画館』主演の染谷将太は、出演作に対して極私的な想いを語った。映画の舞台となった吉祥寺バウスシアター(現在閉館)には「学生時代からよく通っていた」そうで、思い入れもあり、演技をする上で「なかなか客観的になれずにいた」そうだ。

このように出演俳優、監督とともに映画を鑑賞し、彼らの想いを肌で感じ、映画への新たな視点が得られるのが映画祭の醍醐味でもある。

水戸映画祭は、自主上映会の企画、映画情報誌の発行をするなど映画文化発信に取り組んでいた、市民団体・水戸映評会の「水戸でも映画祭を開催したい」という熱い想いから開催されたものだ。行政に働きかけ、水戸出身の深作欣二監督をゲストに迎え開催された1986年の第一回から40年分の熱量が現在も積み重なっている。

水戸映画祭実行委員会 代表の寺門義典は、開催に際してこう語る。

「世界情勢も日本国内も、混沌の渦中にあり、暗中模索の日々です。氾濫する情報により自分のモノサシを見失いそうになります。そのような時だからこそ、”みんなで映画を観る”という行為を通して、世界にあるはずの、自分にあるはずの”見えていなかった””気づいていなかった”ものに、自分の目が開いていく実感を得ることの豊かさを大切にしていきたいと思っています」