Jul 30, 2025 interview

見里朝希 監督が語る ストップモーションの限界に挑んだ“かわいい革命” Netflixシリーズ「My Melody & Kuromi」

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マリーランドでケーキ屋を開いたマイメロディ。森でハートに出会ってから、マイメロディの周りでは不思議なことが起こるようになっていた。一方、マイメロディのお店の向かいにあるクロミの和菓子屋はいつもガラガラだった。マイメロディのケーキの人気の秘密を知りたいクロミ。そんな時、人気パティシエ、ピスタチオの審査で、スイーツコンテストが行われることになった。優勝を目指して張り切るマイメロディとクロミ。それがマリーランドの運命を揺るがす出来事につながっていくとは、まだ誰も知らなかったーー。やがて思いがけないトラブルに巻き込まれていくマイメロディは、大好きなマリーランドを救うため、クロミや仲間たちと力を合わせて動き出す。

サンリオの人気キャラクター、マイメロディとクロミ。ふたりを主人公にしたストップモーションアニメ「My Melody & Kuromi」が、この夏、Netflixで世界に配信される。監督は、これまで『PUI PUI モルカー』(2021〜) などでストップモーションアニメを手がけてきた見里朝希が担当。マイメロディとクロミはマリーランドを救うことができるのか。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、Netflixシリーズ「My Melody & Kuromi」の見里朝希監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

Netflixの規模だからこそできたこと

池ノ辺 最初にNetflixさんから「My Melody & Kuromi」の依頼があった時はどう感じましたか。

見里 これまで、Netflixで制作されるような大規模作品はやったことがなくて、でもやってみたいという憧れももちろんありましたから、大掛かりなことができるぞ、と舞い上がりました。

池ノ辺 本作は、コマ撮りのストップモーションアニメですね。

見里 コマ撮り、つまりストップモーションが、他のCGとかセル画によるセルアニメと大きく違うのは、人形を使うとその人形には重力があり関節があるので、表現の幅にアナログでの限界があることだと思うんです。だからこそ、今回のようにNetflix規模でできるのであれば、このストップモーションの表現の限界に挑戦してみたい、という思いもありました。

池ノ辺 そもそもマイメロディもクロミも世界中で大人気のキャラクターですからね。

見里 そうなんです。世界中で愛されているキャラクターに関わることができるというのは本当に光栄に思いました。同時に、長年愛してくれているファンの皆さまに納得していただけるような作品にしなければいけない、というプレッシャーももちろん感じました。ですから、ファンの方々には、マイメロディたちの住むマリーランドの世界を体験していただき、納得して、喜んでいただけるようなものにしたいというのと、せっかくこれだけの規模でできるのだから、ただかわいいだけじゃ終わらない、ちょっとハードな内容にまで攻めてみたい、そういう思いもあって、これを両立できるような作品づくりを目指しました。

池ノ辺 実際に監督が思い描いていたことはできましたか。

見里 だいぶ、やりたい放題できたと思います (笑) 。特に今回は、アニメ制作会社のWIT STUDIO (ウイットスタジオ) と一緒に、ストップモーションのスタジオを新たに設立したんです。そこは、出来上がったばかりということもあってかなり自由度が高い。ですから自分もデザインなどでかなり積極的に提案させてもらいました。さらに、コンセプトアート的なものを描いて、サンリオさんにチェックしていただいて脚本家の方と一緒に新たな物語を作る、ということなどもやってみました。少ない人数から始まったスタジオでしたから、ただ指示を出して終わりというのではなく、こだわりたいカットにはアニメーターとして参加したり、なんていうこともできました。ただ、少人数から急激に大所帯になったので、僕も監督として至らない部分があったんじゃないか、ちゃんとまとめ切れていただろうか、と反省点ももちろんあるのですが、全体としては思ったことの8割くらいはできたんじゃないかと思います。

池ノ辺 それは素晴らしいですね。では、ストップモーションアニメというのは、実際にはどういうふうに作っていくのか改めて教えてください。

見里 まず、キャラクターの造形物を作ります。それを、アニメーターがちょっと動かしては撮影して、またちょっと動かして撮影するという繰り返しの作業を行います。基本的には、1秒分で24枚の撮影をして、それを連続で再生させることによって動画にするんです。

池ノ辺 1秒で24コマ。

見里 そうです。でも、例えばカクカクした感じを出したいという時などは1秒で12コマという場合もあります。2コマ連続で、動かない同じものを撮影するということもあります。動きのメリハリが欲しいと思えばところどころ早く動いたように、あるいは遅く動いたようにして撮影を進めていきます。