Jul 04, 2025 interview

米倉強太 監督が語る 「なんで自分なんだろう」から始まった初長編への挑戦『キャンドルスティック』

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刑務所を出所した元天才ハッカー・野原は、自分と同じく数字に色がついて見える“共感覚”を持つ女性・杏子と出会い、恋に落ちる。台湾の野心的な企業家・リンネは、FX市場を利用し一儲けするため、野原とかつての仲間たちに声をかける。その作戦は金融取引の番人であるAIを “騙す” こと。決行日は、元号が変わり、金融機関のシステムが一番油断して混乱し、円が最も隙だらけの日ーー2019年5月7日。一方、川崎工業地帯では難民・移民の子のための「夜光ハウス」が立ち退き寸前の危機に陥っていた。施設を守るファラーとイランのハッカー・アバンは返済のためのある計画を練る。2つの計画の日時は奇しくも一致していた。思いも寄らぬ黒幕のもと、様々な思惑が交錯し、手に汗握る駆け引きが展開。世界を股にかけ、10人の男女が大金を手に入れるため、前代未聞のミッションに挑む。

阿部寛主演、菜々緒、津田健次郎といった日本を代表する実力派に加え、台湾からはアリッサ・チア、リン・ボーホン、イラン出身のサヘル・ローズなど国際色豊かなキャストが集結した。 原作は川村徹彦による「損切り:FXシミュレーション・サクセス・ストーリー」(パブラボ刊)。本作が初の長編映画となる注目の新鋭・米倉強太が監督を務める。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『キャンドルスティック』の米倉強太監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

初監督作品に期待された化学反応

池ノ辺 プロデューサーの方が監督のことをすごく気に入って、この映画をぜひ撮ってほしいとオファーされたと聞きました。

米倉 「なんで自分なんだろう」と思っていました。2019年に最初のオファーがあって、でも実際に撮影が始まったのが、2024年で、撮影開始まで期間も空きましたからね。

池ノ辺 本当にやるのかなと。

米倉 ずっと思ってました(笑)。撮影が終わってから、プロデューサーの小椋(悟)さんが、僕を起用した理由を初めて話してくださったんです。

池ノ辺 なんとおっしゃってたんですか。

米倉 新しいことをやりたかったと。小椋さんは、あれだけ経験のある方なので、ベテランの監督さんにお願いすることもできる。でも、そうじゃないところをやりたかったんだと言われました。化学反応を起こしたいんだと、そういう話をされたんです。でもそんなことは撮影中には話してくれなくて。ですから自分もずっと悩みながらやっていました。

池ノ辺 これまでは広告や映像に携わってこられて、こんなに長く1つの映像作品に関わるというのは、なかなかなかったと思いますが、いろいろと大変だったんじゃないですか。

米倉 そうですね。違いということで言えば、広告などは一人になることってほとんどないんです。最後のポスプロの段階になってもそうです。でも映画って、はじめはたくさんいても、どんどんスタッフも少なくなっていって、最終的には僕とプロデューサーだけになる。その孤独感、心細さみたいなものはありました。でもそこで強くなって成長できた部分はたくさんあるんじゃないかなと今は感じています。

池ノ辺 プロデューサーとしても、任せてよかったと思ったので、最後に起用した理由を話してくれたんでしょうね。期待した化学反応があったんじゃないですか。

米倉 そう思われてたら嬉しいですけど(笑)。