『ハケンアニメ!』(2022) や『傲慢と善良』(2024) なども映画化されている人気作家・辻村深月が、コロナ禍で部活動を制限された中高生が天体観測を行う競技[スターキャッチコンテスト]に挑む姿を綴ったのが『この夏の星を見る』です。その原作を実写化したのは、本作が劇場長編デビューとなる山元環監督と脚本家の森野マッシュというコンビ。茨城県の高校で天文部に入っている主人公【亜紗】には『交換ウソ日記』(2023) 他で活躍する桜田ひよりさんが扮し、先生と仲間と共にオンラインで[スターキャッチコンテスト]に参加してくれる学生を募集します。様々な場所から星を探す競技に挑む生徒の姿が綴られる中、東京の中学生【真宙】に扮するのは、現在公開中の『国宝』(2025)で吉沢亮さん演じる喜久雄の少年期を演じた黒川想矢さん。その存在感と演技力に注目が集まる現在15歳の俳優は、演技とどう向き合っているのでしょうか。お話を伺います。

――まず、映画『この夏の星を見る』はどんなところに惹かれたんですか。
僕はそもそも宇宙に興味があって天文学が好きなので、この映画のテーマに「ヤッター!」と思いました。脚本を読んだ時に何かを感じることは少ないのですが、完成した映画を観て改めて新たな発見をすることが多いんです。それでいうと望遠鏡を一斉に暗い空に向けて、レンズを覗くシーンがあるのですが、そのシーンが僕にとっては“祈っている”ように見えたんです。“祈っている”ということは“願い”ですよね。“願い”ということは“希望”だと思うんです。だから凄く勇気を貰えたというか、先が見えないことに対しても挑戦していくべきなんだと思いました。真っ暗な夜空の中でピントを合わせて星を探すように、他のことにも挑戦していきたいとこの映画を観て思いました。

――コロナ禍で各地の学生がオンラインで繋がり、[スターキャッチコンテスト]に挑戦するという物語ですが、黒川さんは「東京パート」で中学生の【真宙】を演じられていますね。特に難しかった撮影シーンがあれば教えて下さい。
人との距離感が難しかったと思っています。コロナ禍の中で僕が演じる【真宙】は、星乃あんなさん演じる【天音】に連れられて、だんだんと天文学を好きになっていきます。普通であれば、実際の距離もだんだんと近づいて行くはずですよね。でも、コロナ禍でソーシャルディスタンス、ということもあって心の距離は近くなっていくのに、実際の距離はずっと遠いままで、それが自分の中で凄く違和感があって、難しかったです。
――確かにコロナ禍は最近の出来事ですが、特殊な出来事でしたよね。
僕は当時小学生でした。事務所の代表の舘ひろしさん(黒川さんは舘プロ所属)と出会ったテレビドラマ「剣樹抄~光圀公と俺」(2021) が、ちょうどコロナ禍での撮影だったと思います。カメラが回っていない時は、フェイスシールドを着けたりして、ずっとアクリル板が1枚挟まっている感じで撮影を行っていた印象があります。



――あの当時、黒川さんはどんな感情を持っていましたか。
不安もありましたが、退屈の方が強かったと思います。結構最近の出来事なのにマスクを外し始めてから、あの時間が幻のような感じになってしまって、そう感じませんか?
――確かにそうですね。私も舞台挨拶の司会をしている時はマスクをして、登壇者との間にはアクリル板がある状況で舞台挨拶を行なっていました。
でも考えてみると実はコロナ禍だったから出会えた人や、退屈な時間があったからこそ始めた趣味とかもあったような気がして、なんだか不思議ですよね。「コロナは最悪」と言っても、出会えた人や趣味、時代劇に出られたのもコロナ禍だったから、巡り合えたとも思うので、それらを否定することになってしまう気がして‥‥。きっと皆がそういう気持ちを持っていると思うので、この映画は凄く共感出来ると思います。