映画『ババンババンバンバンパイア』吉沢亮×板垣李光人インタビュー コメディとカワイイは、その落差にある

銭湯で働く森蘭丸、その正体は450歳のバンパイア。究極の味わいである「18歳童貞の血」を求める蘭丸は、銭湯のひとり息子であるピュアボーイ・李仁の純潔を見守る日々だった。そんなある日、李仁がクラスメイトの葵に一目惚れしたから、さぁ大変 ! 李仁の初恋が成就、すなわちそれは童貞喪失の危機 !! 李仁の純潔を守るべく、蘭丸による決死の童貞喪失阻止作戦が幕を開ける。

「別冊少年チャンピオン」(秋田書店) にて好評連載中のマンガ「ババンババンバンバンパイア」がこの度、映画化される。主人公の森蘭丸役には、確かな演技力で日本映画界の第一線で活躍し続ける吉沢亮。蘭丸が血を求める天真爛漫ピュアボーイ・立野李仁役には板垣李光人。その他、李仁の初恋相手で、蘭丸に恋心を抱く篠塚葵役に原菜乃華。さらに、蘭丸に恨みを抱く兄・森長可役に眞栄田郷敦、バンパイアハンターとして蘭丸を追う坂本梅太郎役に満島真之介、葵の兄で不良たちをまとめる脳筋番長・フランケンこと篠塚健役に関口メンディーなど、豪華キャストが出演する。

すでに放送済みのTVアニメ版も話題が沸騰した前代未聞のバンパイア・ラブコメディ。メインキャストである吉沢亮さん、板垣李光人さんのお二人に、「コメディ」「かわいい」「思春期」をテーマとし、映画『ババンババンバンバンパイア』についてお話を伺いました。

振り切ったBL (バンパイア・ラブコメディ)

ーー本作のオファーを受けたときのお気持ちを聞かせてください。

吉沢:浜崎慎治監督から、オファーをいただいたのですが、監督とは以前『一度死んでみた』(2020) という映画でご一緒して、”すごく素敵な現場と監督だった”という印象がありました。だから、また声をかけていただいて、すごく嬉しかったです。それから台本を読ませていただいて、敵も味方も関係なく、登場人物が愛すべきバカでみんなが愛せるキャラクターだなと感じました。そんな安心感のある笑いが好きなので、今回演じさせていただきました。

ーー板垣さんはいかがですか?

板垣:お話をいただいて原作マンガを拝見したら、キャラクターの名前が”李仁”だったので「あ、同じだ」とびっくりしたんです。よくよくお話を伺ったら原作の奥嶋ひろまさ先生が、僕から名前を取って、キャラクターを描いてくださったみたいで。その事実だけでも滅多にないことで嬉しかったんですけど、実写化されて、その役柄を演じられるというのが本当に光栄で幸せで。すごく嬉しかったです。

ーー板垣さんを思って李仁くんのキャラが作られたなら、演じられるのは嬉しいですね。

板垣:“ちょっと他の人にはやらせられないな”と思いましたね (笑)。

ーー原作がマンガなので、ぶっ飛んだ設定の物語です。特に吉沢さんは、ピュアボーイ・李仁の血を渇望する森蘭丸というバンパイア役でしたが演じる際、どうアプローチしていこうと思いましたか?

吉沢:とにかく李仁といる場合と、李仁以外の人物といる場合のギャップをすごく意識しました。李仁といるときは、バンパイアというより、むしろものすごく人間臭く李仁を溺愛している部分を強調して、それ以外の人といるときは、同じ生物だとあまり思ってないみたいな、ちょっと冷たい部分でバンパイア感が出ればいいかな、と思いながら演じました。

ーーギャップといえば、先日公開された『国宝』では歌舞伎役者、今作では450歳のバンパイアと演技の振り幅がすごいですよね。

吉沢:ありがとうございます 。確かにテンション感から何から何まで違うので、ギャップは相当あるかもしれないです。これだけ違うテイストの作品をやらせていただけるっていうのは、ありがたいです。

ーー吉沢さんの違う部分を見ることができたなと思いました。今作では、ものすごく振り切った演技をされていますよね。

吉沢:そうですね。コメディは演じるのも観るのも好きなので、こういう作品は、結構楽しんじゃいます。蘭丸のバンパイアではあり続けなきゃいけないけれど、バンパイアじゃなくなるというか、それ、ただの人間じゃん ! みたいな瞬間が、観る人にとって笑えればいいかなと思っていました (笑) 。

板垣李光人はなぜかわいい?

ーー続いて板垣さんは、15歳の高校生・李仁を演じる際、どうアプローチしていこうと思いましたか?

板垣:蘭丸から溺愛されている役柄なので、観客のみなさんにも、少しでもそう思ってもらえるようにしたいなと考えていました。あと15歳の高校生の役なので、自分が思っている2〜3倍ぐらい表情を動かしました。この作品のテイストも他のキャラクターも個性が強いので、それぐらいでちょうど良くなるのかな ? という考えもありました。

ーー男から見ても、李仁くん、すごくかわいいなと思いました。自分が思っているより大きく表情を動かしたということですが、かわいいの魅せ方について、教えてください。

板垣:ありがとうございます (笑) 。かわいさについては、そんなに考えてはないですね。とにかく素直に全部受け取るし、受け止める。感情に全部出すことが、いわゆるピュアさ、かわいさにつながるのかなと思っています。その部分ですかね。大事にしたところというと。

ーー年齢性別問わず、板垣さんがかわいいなと思う仕草はありますか?

板垣:やっぱりギャップじゃないですかね? こういう仕事をしていると、特にそう感じるのかもしれませんけれど。普段テレビで観ている方たちのオフの瞬間、休憩中の雰囲気なんかを見ると、男女年齢問わず、かわいいなと思う部分はたくさんありますね。

ーーなるほど。では、吉沢さんがかわいいなと思った瞬間はありましたか?

板垣:吉沢さんは、普段は割と低めのテンションなんですけど、休憩時間、一緒にゲームをやっていると、すごくテンションが高くなる瞬間がありました。そのときは、”楽しいんだな、かわいいな”と思いました (笑) 。

吉沢亮が思うリヒトのかわいいところ

ーー吉沢さんに劇中で溺愛されていた板垣さんのかわいいところを伺いたいです。

吉沢:リヒトのかわいいところか‥‥それはどっちの ? 撮影中の ? 役の ?

ーー両方で (笑) 。

吉沢:何がかわいいって言われたら、もう存在がかわいいとしか言いようがないんですけど。

板垣: (笑) 。

吉沢:もちろん劇中の李仁は、すごく頼ってくれている感じがかわいい。それに、「枕の下に女の子から借りたハンカチを入れて寝ている」とか、他の人だったら、少し引いちゃうけど、それを李光人が演じるととてもかわいい。それはやっぱり李光人の力。劇中の李仁は分かりやすくかわいいけど、普段の李光人はとてもいい男なんで。かわいさはあるけど、賢い雰囲気もある。普段はかわいいというか、いい男だなって感じですよね。

板垣:僕、いい男でしたね (笑) 。

ーーでは、板垣さんにお聞きします。森蘭丸のように吉沢さんの頼れるところを教えてください。

板垣:コメディの経験が全然ないので、リズム感やテンポは、2人の掛け合いの中で勉強させて頂きました。吉沢さんと監督とのやり取りを聞いていると、”なるほど”と思う部分が毎回あって、演じながら理解していった部分がありました。この作品をつくる上では、とても頼りになりました。

やっぱり蘭丸と李仁の関係性が、この作品の中で大きな部分になっているので、蘭丸をこれだけ解像度高く演じてくださったことで、李仁をちゃんと生きている人間として感情を入れられました。本当にすごく頼らせて頂いています。

吉沢:(笑) 。ありがとうございます。

2人が18歳の頃

ーー本作でいうと「バンパイアにとって18歳童貞の血が究極の味わい」らしいです。青春真っ只中の18歳、おふたりはどのように過ごされていましたか?

吉沢:18歳のときは、仮面ライダーをやっていました。学園ものだったので、とても忙しかったです。だから、あまりプライベートで何かしたって記憶がないです。ずっと変身して、変身して (笑) 。

ーー板垣さんも仮面ライダーシリーズに出演されていましたよね?

板垣:僕が出ていたのは高1ですね。18歳のときは、ちょうどコロナ禍だったんですよ。

吉沢:一番大変なときだ。

板垣:そうです。卒業式も一人一人個別に学校へ行って卒業証書をもらって帰るといった、本来の形式じゃなかったんですよ。だから遊んでどこかへ行ったみたいな記憶があんまりない時期ですね。

ーー先ほどお話にも出ていましたが、「枕の下に女の子から借りたハンカチを入れて寝ている」といったような、思春期にした”ピュア過ぎて恥ずかしい思い出”ってありますか?

吉沢:小学生の頃、半袖・半ズボンがかっこいいと思っていて、親友と「3学期に入るまでは半袖・半ズボンでいよう」と約束をしていました。冬休みの間、みんなが上着を着ている中、2人で震えながら外で遊んでいました。

板垣: (笑) 。

ーークラスに必ずいましたよね、そういう生徒。やっぱり寒いんですね。

吉沢:寒かったです。でもあれは、かっこいいんですよ、やっぱり(笑) 。

ーー板垣さんは、そういう経験ありますか?

板垣:僕は、なるべく恥の少ない人生を送ろうとしているので‥‥(笑)。でも、当時好きな漫画のごっこ遊び的なことをしていましたね。でも小学生の時なんて、やることなすこと今考えたら恥ずかしいことが多いですよね。

吉沢:そうだよね。

失いかけていた真っ直ぐな想い

ーーラブコメ要素が強い本作ですが、その他にもいろんな要素が盛り込まれている作品だと思います。これから本作を観る人たちに向けて、お2人が注目してほしい部分を教えてください。

吉沢:キャラクターそれぞれに、自分の持ち歌のような登場曲があって、それがめちゃくちゃかっこいいんです。他にも蘭丸と長可 (眞栄田郷敦) 2人のシーンでは、ライティング、カメラワークを含めて、まるで違う映画のようにガラッと雰囲気が変わります。”かっこいい部分が結構いっぱいあるな”というのが、僕が本編を観た印象です。コメディ部分とスタイリッシュな部分のギャップが、バンパイア映画として、いい意味で面白くなっているなと感じました。

板垣:吉沢さんが話されたように、基本的に面白いシーンが多いんですけど、たまに差し込まれる真面目なシーンとのコントラストがすごく効いている。ただ、喧嘩してお互い気持ちが高まるシーンなんだけど、森さん、全裸だし (笑) 。

吉沢:気づいたら俺、一人全裸でポツンと立っててね(笑) 。

板垣:改めて時間を置いて観てみると、特殊ではあるけれど、そのコントラストが癖になる映画ですね。コメディとしてもすごく面白いですけど、全体を通してカオスではあるんですが、一貫して大きな愛がテーマです。

吉沢:本当に登場人物たちのキャラクターが濃いので、誰かしら推しが見つかるんじゃないかな。内容的にも笑える部分とかっこいい部分以外に、ちょっとウルっとくるような部分もあるので、年齢性別問わずいろんな方に観ていただきたい作品です。

板垣: 登場人物たちはキャラクターが濃いですが、それぞれが芯のある愛をしっかりと持っていて、その姿は面白くもあるけどかっこよくもある。そういった失ってしまっていた、失いかけていた、真っ直ぐさも思い出させてくれる。コメディの裏に隠れた部分が、きっといろんな層のお客さんに刺さってくれるんじゃないかなと思います。ぜひ、いろんな楽しみ方をしていただけたら嬉しいです。

取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 岡本英理

映画『ババンババンバンバンパイア』

銭湯で働く森蘭丸、その正体は450歳のバンパイア。至高の味わいである「18歳童貞の血」を求め、銭湯のひとり息子である15歳の李仁の成長と純潔をそばで見守る日々だったが、ある日李仁がクラスメイトの葵に一目惚れ.。突如訪れた絶体絶命のピンチに、蘭丸による決死の童貞喪失阻止作戦が幕を開ける。ところが、葵の家を訪ねるも、バンパイアオタクである葵から逆に恋心を抱かれてしまう蘭丸。さらには蘭丸の命を狙うバンパイアハンター・坂本、葵の兄である脳筋番長・フランケンが次々登場。そして、そんな蘭丸のもとへ因縁の相手である兄・長可の影が忍び寄る。

監督:浜崎慎治

原作:奥嶋ひろまさ「ババンババンバンバンパイア」(秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載)

出演:吉沢亮、板垣李光人、原菜乃華、関口メンディー、満島真之介、堤真一、音尾琢真、映美くらら、笹野高史、眞栄田郷敦

配給:松竹

©2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 ©奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022

2025年7月4日(金) 全国公開

公式サイト movies.shochiku.co.jp/bababa-eiga/