Netflixが誇る人気シリーズのひとつ「イカゲーム」が、シーズン3をもって完結した。昨年末に配信されたシーズン2から半年、物語の結末を待ち焦がれた人も多いだろう。一方で、「イカゲーム」の存在を知りながらも、未見の方もいるのではないのだろうか? このお盆休みに一気見するドラマシリーズのおすすめ作品として、本シリーズをシーズン1から駆け足で振り返る。
【シーズン1】 心を壊すデスゲームの始まり
まずは、シーズン1からおさらい。
ギャンブルに明け暮れ、借金を抱え、離婚して元嫁に引き取られた愛娘にも会えなくなった40代後半の男、ソン・ギフン(イ・ジョンジェ)。最悪の気分の中、ビシッとしたスーツを身に纏った謎の男(コン・ユ)に、1回勝つごとに1万ウォンがもらえる、メンコ勝負を持ちかけられる。ここで金を手にしたギフンは、さらに大金が稼げるというゲームに招待される。
集められたのは、組織から狙われるチンピラ、脱北者、出稼ぎ労働者に脳腫瘍を患う老人など、ギフンと同じように人生崖っぷち状態の456人。そのなかに、大きな負債を抱えたギフンの幼馴染の秀才チョ・サンウ(パク・ヘス)もいた。


彼らは、優勝賞金456億ウォンに目がくらみ、詳細は知らされないまま誓約書にサインをし、第一のゲーム「だるまさんがころんだ」に参加する。簡単な子どもの遊びに安堵する参加者たちだが、かつて「はい、死んだ!」といって指を刺していたように、動いた者は文字どおり射殺されて死ぬ。パニックになって逃げ惑う人々、それを確実に銃弾が彼らの頭を胸を貫いてく。ここで、優勝賞金の総計がひとりひとりの命の値段であることが明かされる。
恐怖に慄いた参加者たちは、ルールに基づき、ゲーム続行か中断かを投票で決することになる。しかし、彼らはギリギリの人生を送っている者たち。ゲームから解放されても、金に追われる地獄という現実を突きつけられ、再び、人生の再起をかけてデスゲームに挑んでいく。
彼らの逃げ場のない人生は観る者に重くのしかかる。そして、再開されたゲーム。「型抜き」「綱引き」「ビー玉遊び」「飛石ガラス板渡り」「イカゲーム」と、頭を使い個人で戦うもの、チームやペアを組み団体で挑むものなど、それぞれ変化していく。
その過程で、人と協力、または利用し騙し合う。ゲームを重ねるたびに、隣にいた者を裏切り、殺していかなければ、自分が生き延びる術はない。そうして参加者の心は少しずつ壊れていった。
優勝したのは、ソン・ギフン。彼もまた参加前の陽気な性格は見る影もなく、心を無くして生きていたが‥‥。
26日から配信されたシーズン2は、シーズン1のラストシーン直後、そのまま第1話が始まる。
【シーズン2】 復讐を誓うリベンジャーズ
シーズン2は復讐の物語。
ゲームに優勝してから3年。ソン・ギフンは、あの残酷でふざけたゲームを終わらせるために、ゲーム運営組織を倒すため、優勝賞金を使い、メンコ勝負するスーツの男を探し続けていた。


シーズン1では、楽観的で計画性もないが、どこか優しさにあふれる男だったギフンだが、シーズン2ではそんなキャラクターから一変。正義の鉄槌を下すため、笑顔も見せず終始シリアスな表情で物語が進む。


シーズン1で、デスゲーム運営の内情を暴こうとし、結果、何もできなかった警察官ファン・ジュノ(ウィ・ハジュン)とともにゲームの黒幕の存在を暴こうとするなか、ギフンは再びゲームに参加することを決意する。そしてシーズン2では、運営スタッフ側の視点も描かれ、イ・ビョンホンが演じたフロントマンが思わぬ形で、ゲームに参加することになる。果たしてギフンは真実にたどり着くのか‥‥。


ゲーム開始当初、前シーズンをなぞるように演出、構成がなされている。これは明らかに意図的な作りで、観客をニヤリとさせると同時に、シーズン1と2の違いを対比させることで強調させている。「イカゲーム」未視聴でより本作を楽しみたい方は一気見をオススメする。
シーズン2から新たに、元BIGBANGのチェ・スンヒョン、元IZ*ONEのチョ・ユリといったアーティストから、イム・シワン、カン・ハヌル、パク・ソンフン、パク・ギュヨンら豪華な顔ぶれが加わる。そして今回は、1ゲームが終わるごとにゲーム続行か中断が投票されるのだが、この際、⚪︎と×のワッペンをジャージに付ける。これにより個人の意見が視覚化され、人々の分断が進み、対立が激化してしまう。新たなゲーム参加者たちは、優勝経験者のギフンとどういった関わりをしていくのかも一つの見どころである。
コロナパンデミック、ウクライナ侵攻と、世界は危うさを孕みながら生活する日々が続いている。格差はさらに広がり分断も進んだ。『ロッキー』の地元の街は、笑えないくらいリアルな「ゾンビ・タウン」となってしまった。過酷な競争社会を反映させたシーズン1配信から3年経ったいま、新シーズンはどう描かれたのか? 2025年に世界独占配信が予定されている完結編のシーズン3までじっくりと見定めてほしい。
【シーズン3】 ついに最終章、それぞれの選択
シーズン3は、実質シーズン2の続編、パート2である。ギフンらが前シーズン企てたクーデターが失敗に終わった直後から始まる。否応なく、ゲームに引き戻される彼らのなかに生まれた喪失感と復讐心、妬み、そして掛け違いが、物語をより緊迫感ある状況に追い込んでいく。
「かくれんぼ」「大縄跳び」といった新たなゲームで次々と主要メンバーたちが脱落していく。そこには単純にゲームの敗者としてではなく、自らの尊厳のために、この非情なゲームから降りることを選択するものもいた。


最終ゲームで、「イカゲーム」は、現代社会のモブキャラが主役であることを思い出させてくれる。ドラマを観続けていると、どうしてもギフンをはじめとする主要人物の動向に考えを巡らせがちだが、そもそも主人公ギフンもフロントマンも、最初は借金まみれの一般人だった。決してヒーローではない、市井の人々が困難な状況で何を選択するか。その人間模様が、その生き様が映し出されるのが「イカゲーム」だ。視聴者は、仮面をつけたVIPのように高みの見物を決め込み、ゲーム参加者が、人生の選択をする瞬間を酔狂に眺めているのだ。
ゲームの観客は、その瞬間を点でしか見ていない。ゲームの参加者は、極限の状態でその先を見据えている。シーズン2からの参加者を見ると、親と子が明確にテーマのひとつとしてある。




ギョンソク(イ・ジヌク)は白血病を患う娘の治療費を稼ぐためにゲームに参加し、幼い息子を残し脱北したピンクガードのノウル(パク・ギュヨン)は彼を気にかける。クムジャ(カン・エシム)とヨンシク(ヤン・ドングン)は、これまで親子として育まれた絆を感じつつも、そろってゲームクリアする条件に頭を悩ます。妊娠中のジュニ(チョ・ユリ)と元恋人のミョンギ(イム・シワン)は、これから生まれてくる子どもを守るため考えを巡らせるが、その方向性に相違が見られる。人生に虐げられた親世代が子ども世代に何を未来に残すか、彼らのそれぞれの決断は、あなたを含む視聴者たちにどう映るだろうか。


ファン・ドンヒョク監督、ギフン役のイ・ジョンジェ、フロントマン役のイ・ビョンホンの3者が出演する特別番組「イカゲーム: 監督・出演陣が語る 」でも語られているように、最後には、あのハリウッドスターがカメオ出演している。昨今の時勢からみると、「イカゲーム」の舞台をアメリカに移そうとするのは、恐ろしいほどリアリティーがある。
これは、韓国だけの話ではないゲームの観客が、いつゲームの参加者になるかわからないのだ。
文 / otocoto編集部

膨大な借金や深刻なトラブルにより人生を諦めかけた者たちが、“人生一発逆転”できるほどの高額賞金を懸け、子どもの遊びになぞらえた「負けたら即死」のゲームに巻き込まれていく、世界的メガヒットのサバイバルスリラーの最終シーズン。
出演:イ・ジョンジェ
Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~3:独占配信中