May 18, 2025 news

日本映画界史上、最速でカンヌのレッドカーペットを駆け上る早川千絵監督 映画『ルノワール』が第78回カンヌ国際映画祭でワールド・プレミア上映 

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75歳以上の高齢者に死ぬ権利を与えるとしたら‥‥、という刺激的なテーマを自身の初長編作品である『PLAN75』(2023)で見事に描き切り、第75回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で新人監督に与えられるカメラ・ドールのスペシャル・メンション(特別表彰)を受賞した、早川千絵監督。あれから3年後、遅咲きの新人監督は、長編第二作目「ルノワール」で、カンヌ国際映画祭の頂上決戦である「コンペティション」部門にノミネートされ、現地時間5月17日(金)にワールド・プレミア上映が開催された。

主演の鈴木唯、石田ひかり、リリー・フランキーらが早川千絵監督と一緒にレッドカーペットに登場。今回、着物で登場した石田ひかりと、もはや“カンヌ常連”であるリリー・フランキーがまさに夫婦のように鈴木唯を中心に軽やかにレッドカーペットを登った。上映後には約6分のスタンディング・オーベーションがあり、ほぼ満員の会場は早川監督のワールドを堪能した客が興奮冷めやらぬ状況で、キャストや製作者たちに駆け寄って声をかけていた。

上映直後のメディア取材では、石田ひかりが「今まで約35年役者としてやってきて、初めての海外の映画祭がカンヌという経験になり、何もかもに感動しています。お客様がプロだな、という厳しさを感じると同時に、本編の上映前に各社のロゴが出るたびに大きな拍手が起こったりするなど、我々作り手側に対する暖かいものを感じた」と述べた。また、少女から女性に変化する前の11歳の感情の機微を見事に演じた鈴木唯は「今まで経験したことのない人数が(会場に)いてびっくりした」と感想を述べる横で、カンヌの「コンペティション」部門の経験が3度になる(そのうちの2作は是枝裕和監督作品)リリー・フランキーが「この作品は、受賞するに値する作品」と太鼓判を押すコメントも出た。

©Kazuko WAKAYAMA

また、長編第二作目にして早くも最高峰の「コンペティション」部門に駆け上がった早川千絵監督は「カンヌは、本当にいろんな部門がありますが、それぞれの部門に合う作品が選ばれているので、どの部門が良いとかは決められない」と冷静に述べており、すでに世界の舞台で独自の道を開いていこうとする芯の強さが垣間見れた。

石田ひかりが「早川千絵監督がこの映画の撮影時に『私は言葉にできない思いを映画にしているんです』と話してくれた」とコメントするように、海外のレビューなどではすでに「早川監督が注意深く観察し辿ってきた道を進んでいる」(フランスの老舗新聞・リベラシオン紙より抜粋)など、長編2年目にして早くも早川監督の創造が世界の映画人を魅了しているようだ。

第78回カンヌ国際映画祭は、5月13日から24日まで、フランス・カンヌにて開催中。

文 / 高松美由紀

作品情報
映画『ルノワール』

1980年代後半のある夏。11歳のフキは、両親と3人で郊外の家に暮らしている。ときには大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性をもつ彼女は、得意の想像力を膨らませながら、自由気ままに過ごしていた。ときどき垣間見る大人の世界は、刺激的だけどなんだか滑稽で、フキは楽しくて仕方ない。だが、闘病中の父と、仕事に追われる母との間にはいつしか大きな溝が生まれていき、フキの日常も否応なしに揺らいでいく。

脚本・監督:早川千絵

出演:鈴木唯、石田ひかり、中島歩、河合優実、坂東龍汰、リリー・フランキー 

配給:ハピネットファントム・スタジオ

©2024『RENOIR』製作委員会/Ici et Là Productions/ARTE France Cinema/Akanga Film Asia/ Nathan Studios/KawanKawan Media/Daluyong Studios

2025年6月20日(金) 全国ロードショー

公式サイト happinet-phantom.com/renoir/