Apr 22, 2025 column

ヒュー・グラントの邪悪な話術 『異端者の家』が観客を挑発する

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『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズや『ノッティングヒルの恋人』(1999)、『ラブ・アクチュアリー』(2003)など、英国俳優ヒュー・グラントはロマンティック・コメディの“王子様”として絶大な支持を得た。

それから約四半世紀が経った今、グラントは想像を絶する新境地を拓いた。映画『異端者の家』は、『クワイエット・プレイス』(2018)の脚本家スコット・ベック&ブライアン・ウッズとタッグを組んだ「脱出サイコ・スリラー」。演じたのは、宣教師の少女2人を恐怖のどん底に突き落とす“異端者”ミスター・リード役だ。

邦題のとおり、物語の主な舞台はミスター・リードの「家」だ。密室×スリラー×ヒュー・グラント、思わぬ化学反応が観客を新たな恐怖と知的好奇心の世界へ誘う。

異端者の「変な家」

コロラド州の郊外。モルモン教徒の若い宣教師であるシスター・パクストン(クロエ・イースト)とシスター・バーンズ(ソフィー・サッチャー)は布教活動に勤しんでいる。なかなか成果は出ず、時にはひどい扱いを受けることもあるが、2人の相性はいいようだ。

大雨のなか、パクストンとバーンズは一軒家を訪れた。家主のミスター・リードは明るく快活な性格のようで、雨に濡れた2人を家に招き入れようとする。教義ゆえ男性だけの家に入れないパクストンとバーンズだが、リードから妻がいることを聞かされ、安心して家の敷居をまたいだ。

ところが、にわかに空気が変わりはじめる。いつまでも姿を見せない妻、神の教えを突っぱねて「どの宗教も真実だとは思えない」と語るリード。「家の奥でブルーベリーパイを焼いているから」と笑顔を浮かべる彼の罠に、すでに2人はかかっていたのだ。

玄関の扉は自動ロックで開かず、携帯電話の電波は通じない。したがって、家の外に出るためには廊下の奥に進んで裏口から出るしかない――なんて“変な家”! やがてリードは、2人にある要求をする。「あらゆる宗教を覆す、“奇跡”の証人になってほしい」と。パクストンとバーンズは、2人を支配しようとするリードの裏をかき、家から脱出することができるのか?