俳優でアーティストでもある北村匠海による短編監督デビュー作『世界征服やめた』の公開がスタート。彼が脚本も務めた本作は、影響を受けたというポエトリーラッパー 不可思議/wonderboyの楽曲「世界征服やめた」をモチーフに、自分の存在意義を感じられない社会人の青年の姿を描いていきます。キャスティングも北村監督によるもので、内向的な性格で社会人として行き詰まっている【彼方】に萩原利久、そんな彼を見守る陽気な同僚【星野】に藤堂日向が扮し、タイプの違う2人の青年を通して生きる意味を見出していきます。
スタイリッシュな映像演出と、説明セリフを排除した脚本で綴られる魂の叫びの本作で、【星野】という難役に挑戦した藤堂日向さんにインタビューを敢行。北村匠海監督との絆から俳優としての発見までたっぷり伺います。
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――まずは出来上がった作品を観て、どのように感じましたか。
初めて完成した映画を観た時の印象は、脚本を読んだ時に思った印象と違いました。北村匠海の脳内ではこんなふうに世界観を解釈していたんだって(笑)。それは、良い意味でも悪い意味でもなくって正直に驚きました。本当に彼の脳内を覗いているような演出だったので、匠海が持っている感性とこの映画のベースとなる不可思議 / wonderboyさんの名曲「世界征服やめた」が融和されていると僕は思いました。当時、匠海もこの曲を聴いて衝撃を受けたと思うんです。その曲をモチーフにして映画を作るということは、匠海が当時感じていた感情だと思うし、これだけは映したい、これだけは表現したいというものがあったはずです。だからこそ、匠海が当時くらった衝撃と色々な経験を積んだ今の匠海のフィルターを通して作られたのが、今作『世界征服やめた』だと思います。だから出来上がった映画を観た時、そんなふうに彼の年輪を感じました。若いところもあるし、大人びたところもあるし、苦悩と葛籐とかもたくさん散りばめられているから、僕はそういうのを観て「良かったな」と思いました。
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――冒頭、主人公以外の道行く人は静止しています。途中、フラッシュバックを映像で表現したりしながら、ある感情を経た後、通行人の人々が動いているんですよね。こうやって社会の流れに乗らないといけないけれど、ついて行くことが出来ない主人公の葛藤を表現する斬新さに驚きました。居場所を見失っている主人公が自分なりに生きる場所を見つける作品なんだと解釈していました。
生きる場所‥‥、そういうことですね。面白いですね。つまり、社会のスピードと生きる場所ですよね。凄いですね、さすがです。
――私はその後インタビュー記事などを読んで、この映画は北村匠海さんから藤堂さんへのメッセージも込められているんじゃないかと思いました。
そうですね。僕にこの【星野】という役を任せてくれたということも含めて、そうかもしれないですね。僕の心に響いたのは、やっぱり「現実ってこうなんだよ」というところです。匠海が僕にそのことをコツコツ言い続けてくれた時期があって。「でも俺(匠海)は日向を見守るよ」というタイプなんです。むやみに手を差し伸べたりはしないけれど、僕にちゃんと考えさせてくれる。だから、匠海と一緒に居ると僕も学べるというか、ちゃんと自分で考えて行動出来るようにしてくれるんです。そういう選択が出来る猶予を与えてくれる人で、本当に素敵な人です。
――お話を聞いていて、北村さんと藤堂さん、2人の絆がカッコイイと思いました。
そう言われると、ちょっと恥ずかしいです(笑)。
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――小栗旬さんが『シュアリー・サムデイ』(2010) を監督された時、小出恵介さん、鈴木亮平さん、勝地涼さんなど多くの俳優をキャスティングし、映画を作られました。北村さんも『シュアリー・サムデイ』に出演し、小栗さんから大きな影響をもらっていると話されています。自ら監督をし、自分が敬愛する俳優たちをキャスティングするという部分も繋がっているように感じています。
そうなんです。『シュアリー・サムデイ』を撮った小栗さんが当時キャスティングされた方々と、僕と(萩原)利久をキャスティングしてくれた匠海の感性が、監督目線の部分で小栗さんと匠海は似ているのではないかと思いました。僕の目では見ることが出来ない親和性が2人にはあるのかもしれません。
――私はこの映画を観て、藤堂さんは凄くチャーミングで、色々な引出しを持っている人だと思いました。
本当ですか‥‥、ありがたいです。頑張るしかないんですけど(笑)。
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