Jun 20, 2024 column

第49回:南仏 アヌシー国際アニメーション映画祭2024  ーコンペ映画13作品を予告編とともに一挙公開! 

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美しい仏アルプスの麓アヌシーで先週幕を閉じたアヌシー国際アニメーション映画祭。オフィシャルコンペ、コントラシャン(コンペ外)、新アヌシープレゼンツ長編映画部門の総勢35作品のほか、短編映画やテレビアニメもショーケースされ、幅広いジャンルのアニメーション、VR作品が一挙に披露された。長編コンペ部門の最高賞であるクリスタル賞には日本からの入選作品4本は選ばれなかったが、『映画 窓ぎわのトットちゃん』(2023) が特別賞ポール・グリモー賞を受賞。アニメーション映画が実写と分け隔てなく評価され始めた近年、このコラムでは2024年アヌシー映画祭から長編コンペ作品13本を中心に紹介しながら、あわせて、初夏、アニメーション映画産業の現状をお届けする。

猫好きにはたまらないコンペ映画の主人(猫)公たち

今年のアヌシー国際アニメーション映画祭、長編映画のコンペに選ばれた作品はさまざまなジャンルに分かれ、冒険、ファンタジー、歴史、ミュージカルほか、地球環境問題など幅広い。先月のカンヌ映画祭では、スタジオジブリに名誉パルムドールが授与され、アニメーション映画という長編コンテンツの確立をなしとげた40年間の偉業は、世界中の映画関係者にインスピレーションを与え続けていることが感じられる。

今年のアヌシーで際立ったのが主人公になった猫たち。スタジオジブリ映画でも『魔女の宅急便』(1989) の黒猫ジジや『となりのトトロ』(1988) の猫バスなど、魅力的な猫のキャラクターは多数登場してきたが、映画『Away』(2019) でセンセーショナルな長編デビューを果たしたラトビア出身のクリエイター、ギンツ・ジルバロディス監督の待望の新作映画は猫が主人公。映画『FLOW』(2024) はカンヌ映画祭の”ある視点”部門入りも果たした話題作。アヌシーでは、クリスタル賞は逃したものの、コンペの審査員賞、観客賞、さらにベストスコアの特別賞まで受賞し、賞の数ではナンバーワン。画とナレーション、そして音楽で描いた監督の作家性が飛び抜けている映画で、北米権利はサイドショーとヤヌスフィルムが獲得。物語の主人公は人類が浸水で滅び、水に覆われた地球で生き延びた猫。ボート難民(猫)となって避難しようとする動物同士の戦いは、サバイバルを求められた未来の人間の課題を考えさせられる。ラトビア、ベルギー、仏合作で、予告編を見るだけで心が昂る映画。

日仏合作映画『化け猫あんずちゃん』(2024) もカンヌ国際映画祭の監督週間で上映され、英題は『Ghost Cat Anzu』として人気があったようだ。いましろたかしの同名コミックが原作で、久野遥子監督、山下敦弘監督のこの映画は米デッドライン誌の批評でも取り上げられていて、「リアリティを追求したロトスコーピングなどのテクニックによって、水彩画の美しい映像がまるでルノワールやモネなどの印象画のように際立っている。しかし、物語のペースが遅く、主人公がどうして化け猫になったのかという点など、疑問が残った。」とある。

世界各国で描かれる猫のキャラクターは多種多様で、アメリカでも先月、2004年に公開作のリメイク映画『ねこのガーフィールド』(2024) が『マッドマックス:フュリオサ』(2024) の興収3週目を抑えてトップの座に君臨するなど大人気。日本でもTVアニメの「ラーメン赤猫」が話題のようで、食と猫までつながっていくのか‥‥猫から育まれるインスピレーションは計り知れない。