Aug 17, 2016

特集10K+

少年役を女性声優が演じるという“常識”は野沢雅子が確立させた!? レジェンド声優の数々の伝説が明かされる。

平野

さて、マコさんと言えば、後進の指導にも熱心というイメージがあります。もう、何度も聞かれていると思うのですが、マコさんから見て、今の若手声優の演技はどのように映りますか?

野沢

う~ん、どうしても個性が薄いように見えてしまいますね。可愛い女の子の声はこういうふうに演じるとか、型にはまった演技をしてしまっているんじゃないかしら

平野

それは私も同感なんですよね。私が新人だったころは、周りにいる先輩方が皆さん個性的な演技をなさっていて、それにとても刺激を受けました。音響監督も舞台出身の方が多くて、個性をしっかり伸ばしてくださいましたし……。それがどうして今のようになってしまったんだろうというのはよく考えます。

野沢

“原因”の1つは声優学校の存在だと思います。

平野

でも、マコさんも教える立場に立たれたことがありますよね?

野沢

昔、勝田久さん(『鉄腕アトム』お茶の水博士など)にどうしてもって頼まれて……また、それを相談なしに肝ちゃん(肝付兼太さん)が引き受けてきちゃうんですよ。仕方なく何度かやらせていただきましたけど、今はもうやらないようにしています。
そもそも演技って教わるものではないでしょう? 右も左も分からない新人さんに「こういうシーンでは、こういうふうに演じましょう」なんて教えたら、みんなそう演じるようになってしまいますから。

 

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平野

実は『うる星やつら』のような作品がそういった流れを作り出してしまったのかな、と思うことがあります。可愛い女の子がアイドルのように活躍する様子をみて、テレビの前の若い子たちが、「俳優」ではなく「声優」に憧れるようになってしまった。
そして、そうして生まれた声優さんの出演作品を見て、次の世代の子供たちが同じような選択をしていく……。アニメを見て、アニメのマネをして声優になっていくので、コピーのコピーのコピーみたいな感じになっていくんですよね。結果、どんどん演技の幅が狭くなっていってしまうんです。

野沢

たまに事務所の後輩から「どうすれば一人前の声優になれますか」と質問されることがあるのですが、それには、とにかく周りを観察しなさいと言っています。そうやって自分だけの演技の引き出しを増やしていくことが大事なんです。今の若い子は、人の作った引き出しをそのままマネしてしまっているのがもったいないと思いますね。

平野

先におっしゃっていた、マイクの前に経つと自然とキャラクターの声が出てくるというのは、その引き出しがあってこそ、なんですね。

野沢

本当にその方法が絶対的に正しいのかは分かりませんが、少なくともこれまでは大きなNGをもらったことがないので、たぶん、合っていると……思います。

平野

でも、マコさんは国宝級の天才ですから、それができるんですが、普通の人にはそれはできませんよね。言うなれば長嶋茂雄タイプ(笑)。さすがにそこまで求めるのは酷かも知れません。
その上で、今の若手声優とマコさん世代の最大の違いは、「声優」という仕事に対するスタンスだと思うんです。今の若い子は基本的にアニメが大好きで、声優がやりたくて声優になった子ばかりですよね。でも、マコさんたちは演技が好きで役者を志したという人ばかり。結果、アニメにせよ吹き替えにせよ、映像の中の演技に、さらに自分らしさを加えようとします。それが大きな違いとなって現われるのかな、と。
でも、これって本当に大変。役者以上の技量を持っていないと、本当の声優にはなれないのではないかと思います。私たちの世代は現場でそういったスーパーレジェンドな皆さんのすごい演技を目の当たりにして育ってきたので、どうしてもそちらにあやかりたいという気持ちが強いですね。ただ、私たちの世代が巻き起こした「声優ブーム」に憧れた次の世代は、そこには目が向かなかったのかもしれません。

 

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野沢

でも、最近の若い子はみんな声を当てるのがすごい上手なのよね。ピタッと合わせてくる。私たちは「気持ちが優先でしょ」なんて言い訳して、少々こぼれてもいいやってなっちゃう(笑)。

平野

こぼれるくらいの方が気持ちが入ってて良いとか言われていましたよね(笑)。アニメもそういう作りになっていましたし。最近のアニメはキチッとした作りになりすぎていて、自由な演技がしにくいという面もあるのかも。セリフでストーリーを追っていくだけで精一杯になってしまっているのかな。ドライだなと感じる事が多いです。

野沢

もう少し内面的な芝居を重視するような作品が増えてくると違ってくるのかも知れません。ただ、それは「時代」もあると思うので、すぐには変わることはないんでしょうね。

平野

今後、そうでない、より人間ドラマを重視したウェットな作品が現われてきたとき、今の声優さんがどういう演技をするか、それはぜひとも見てみたいですね!

 

構成 / 山下達也  撮影 / 田里弐裸衣

 

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プロフィール

 

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野沢雅子(のざわまさこ)

東京都出身。青二プロダクション所属。劇団ムーンライト主宰。声優業の創生期から活躍。主な出演作は、アニメ『ドラゴンボール』シリーズ(孫悟空、孫悟飯、孫悟天)、『銀河鉄道999』(星野鉄郎)、『ゲゲゲの鬼太郎』(鬼太郎/第1~2作)、『あらいぐまラスカル』(ラスカル)、『ど根性ガエル』(ひろし)、『怪物くん』(怪物太郎)、『ONE PIECE』(Dr.くれは)ほか。

 

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平野文(ひらのふみ)

1955年東京生まれ。子役から深夜放送『走れ!歌謡曲』のDJを経て、’82年テレビアニメ『うる星やつら』のラム役で声優デビュー。アニメや洋画の吹き替え、テレビ『平成教育委員会』の出題ナレーションやリポーター、ドキュメンタリー番組のナレーション等幅広く活躍。’89年築地魚河岸三代目の小川貢一と見合い結婚。著書『お見合い相手は魚河岸のプリンス』はドラマ『魚河岸のプリンセス』(NHK)の原作にも。