アングラな、暗い中に耽美の世界とか、そういうものに惹かれてました
それまでに読んでいた健康的な本とは違って、衝撃でした

──吉岡さんと本、といえば、吉岡さんが演じられていたNHK 連続テレビ小説「あさが来た」の田村宜ちゃんが蘇ります。

吉岡そうですよね。本当に本をよく読む子で(笑)。

──周りで何が起こっても集中して読んでるような宜ちゃんでしたが、吉岡さんもそういうタイプですか?

吉岡はい。できるだけ一人で静かに読む。あんまりカフェなどで読まずに、家で一人で読むのが好きです。小学生の時に“朝読書”みたいなことを学校でやっていて、それの名残なのか、朝読むのが好きだったりします。

──もともと子供の頃から読書好きだったんですか?

吉岡そうですね。活字だけじゃなくて漫画も好きですし、写真集も好きだし。紙媒体が好きなんだと思います。

──子供の頃はどんな本を読まれてましたか?

吉岡『わかったさんのおかしシリーズ』っていう本があって、とてもわかりやすくて子供でも料理が作れる本で。物語形式なんですけど、わかったさんっていう、「わかったわかった」が口癖の女の子がいろんなもめごとに巻き込まれて料理を作らないといけなくなるっていう内容なんです。あと、学校に置いてあった本で『ハリーポッター』とか『怪傑ゾロリ』っていう子供達が大好きな本だったり、結構たくさん読んでるんです。他にも名作童話とかできものシリーズとか。キュリー夫人やエジソンとか、そういうのは小学生の時に読みました。

──わりとインドア派だったんですか?

吉岡外でみんなと遊ぶのも大好きだったんですけど、喘息持ちで身体が弱かったので、一定の量の運動量を越えるとしんどくなっちゃって。みんなと遊ぶのも好きだけど、部屋の中でゆっくり本を読んだり音楽を聴いたりするのも好きでした。

──吉岡さんがお芝居を志すきっかけは?

吉岡一番始めは映画のエキストラに出たことで。

──それは何歳の時ですか?

吉岡18ぐらいの時で。本格的にお仕事としてお芝居させていただくようになったのはそれがきっかけで。その前に学生同士で映画を撮ったりしてました。

──吉岡さんは三島由紀夫原作や唐十郎の戯曲など、古典的なものに惹かれていた、というのを読んだんですが。

吉岡学生達がやっている小劇場にすごく惹かれて。アングラだと思うんですけど、暗い中に耽美の世界とか、そういうものに惹かれてましたね。少女の性の目覚めとか、男性の歪んだ友情とか、そういうものにちょっと憧れて演劇が好きだなと思うようになったんです。それまでに読んでいた健康的な本とは全然違っていて衝撃を受けて。

──今回ご紹介いただく3冊のうち、1冊が寺山修司の『ポケットに名言を』なんですよね。

吉岡そうなんです。寺山さんを知ったのも小劇場がきっかけで。その時『田園に死す』っていう名作を上映していて、そこで寺山さんの作品って面白いんだなと思って。今回『ポケットに名言を』をなんで選んだのかというと、よく読むからなんです。寺山さんが選んだいろんな言葉がまとめられている本なんですけど、自分が信用できる作家さんが選んだ言葉なので、どこかですごく特別な言葉に感じて。自分だと抜粋しない詩が抜粋されてたりして、そんな中からその時の自分に合った言葉を読むんです。気に入ったところにはページの端を折ったりして。あと結構演劇の話も多くて。だからわりと自分の今の経験値では到底できない世界に思いを馳せたいときはこの本を読んで、こういう捉え方ができる人がいるんだからもっと頑張らなきゃ、とか、こういう捉え方ができるようになりたいなとか思いながら読んでます。

──特に印象に残っている言葉はありますか?

吉岡一つがチェーホフ『手帳』からで、“ひょっとしたらこの宇宙は なにかの怪物の歯の中にあるのかもしれない”。これはたぶん、悩みとかはちっぽけに感じる言葉で、自分が想像してること以上のことが世界で起きていて、ごみ屑みたいにちっちゃい自分なんだから、今与えられたことを必死でやるしかないなと。あと、シェークスピアの『真夏の夜の夢』から、“およそ芝居などというのは最高のできばえでも影にすぎない。最低のものでもどこか見どころがある。想像でおぎなってやればな”。否定しているようで肯定していて、自分ってなんなんだろうと考えたり。この本を見る時は悩んでいる時が多くて、自分の価値観がズレ始めた時に、何か指針になってくれるような気がするんです。

──どこかに答えがあるみたいな。

吉岡そうです。心の先生みたいな感じですね。あと、私が持っている文庫の表紙は華恵さんっていう女優さんの写真なんですけど、この写真がすごく好きで。他の寺山さんの本の表紙もされていて、この着物姿と無垢な少女の顔が好きで、表紙で買ったところもあります。

──お芝居を始めてから、読む本は随分変わりましたか?

吉岡そうですね。今日選んだ本も『ポケットに名言を』は実家から持ってきた本なんですけど、他の2冊に至っては東京に来てからいただいたもので。せっかくだったら、人にもらった本を嬉しかったから紹介しようと思って選びました。

──『ラブレーの子供たち』は、どなたにいただいたものなんですか?

吉岡これは雑誌でお仕事をするようになった時の編集部の方がくださって。すごく好きだと思うから読んでみてって言われて。四方田犬彦さんは知らなかったんですけど、この方は映画史家という私の知らない職業の方でもあって、映画と関連している内容も勉強になるというか。著名人たちが食べたご飯を紹介してるんですけど、私は料理もすごく好きだし、その料理を食べた著名人の歴史ももう一度勉強し直せたんですね。

──簡単に本の内容を説明していただくと。

吉岡歴史上の著名人が重い馳せた料理を四方田さんの視点でもう一度作り直した、そんな特別なレシピ本です。お店の紹介もしていて、実際に今でも残っているお店が何軒かあるので、そこに行って実際に食べることもできます。私の好きなメニューは、斎藤茂吉さんの“ミルク鰻丼”っていうのがあるんですけど、当時、戦争に入る前に鰻の缶詰を大量に買い込んだ斎藤茂吉さんのすごい臆病なエピソード付きの紹介で。鰻が大好きで、でも高級品だから鰻の缶詰しか食べれなくて、その冷めた缶詰をどうにかして温かく食べる方法として、当時唯一飲めた温かいミルクをかけて食べたっていう。今こういう食べ方する料理ってないと思うんですけど、当時の歴史が背景にあって、こうすることしかできなかった切なさと、でもたまらなくうまいって書いてあるから、空腹は一番の調味料でしたっけ、そういうことだなあと思って。逆境の中で食べるご飯、出所したてのラーメンとか、働き疲れた後のビールとか、そういうことと通じててすごい美味しそうに感じたレシピですね。

──吉岡さんが何か大きな仕事をやり遂げた後に食べたいものは?

吉岡う〜ん……私納豆が大好きで、ダイエット期間を終えた後の大量の納豆ご飯(笑)。大盛りご飯で納豆を2パックぐらい使った納豆ご飯とかは私は贅沢ご飯だなと。ダイエット中はご飯を減らすので、ご飯を大量に食べるっていうのはご褒美ですね。ご飯のお供としては納豆と明太子とお漬け物とあと梅干しが好きです。

吉岡里帆さんが好きな本を
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ポケットに名言を

寺山修司

KADOKAWA / 角川書店

世に名言、格言集の類は数多いが、本著ほど型破りな名言集は珍しいのではないだろうか。畠山みどりの歌謡曲あり、懐かしい映画の名セリフあり、かと思うとサルトル、エンツェンスベルガー、マルクス、etc.と著者ならではの言葉のつきあいである。しかつめらしく覚えたり、読むのでなく、Tシャツでも着るようにもっと気軽に名言を自分のものにしよう! 思い出にすぎない言葉が、ときには世界全部の言葉の重さと釣合うことがあるのだから……。

※『ラブレーの子供たち』『ネコの吸い方』は電子書籍の配信はございません。