Jun 21, 2018 column

美少女フィギュアが体現する“MADE IN JAPAN”の未来 脅威の技術が生んだプラモ『ホシノ・フミナ』が発売

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発表時にその超絶な技術から大きな話題となったBANDAI SPIRITSのプラモデル『Figure-rise LABO ホシノ・フミナ』がついに発売となった。 (※「BANDAI SPIRITS」は、今年2月のバンダイナムコグループの再編によって、それまでのガンプラをはじめとしたプラモデルなどのハイターゲット向け製品担当の事業が移管された新会社。以下本文ではバンダイと記す)

「Figure-rise LABO」はバンダイのプラモデル新シリーズであり、簡単に言ってしまえばキャラクターフィギュアのプラモデルだ。以下の本文前に、とりあえず製品サイトを見ていただくのがいいだろう。 https://bandai-hobby.net/site/figurerise-labo/index.html

模型の歴史を振り返ったとき、美少女フィギュア模型は様々なメーカーからこれまでも多数が出ているが、この『Figure-rise LABO』はそのどれとも異なり、そのどれをも越える技術が持ち込まれている。大仰な言い方のように思われるかもしれないが、プラモデルの新時代に挑んだ野心的かつ画期的な製品だ。なにしろ公式画像にある写真は、多くのプラモデルの製品紹介にある「きれいに組み立て塗装をした状態」のサンプル画像ではなく「箱から出してパチパチとただ組み立てた“だけ”の状態」なのだ。 透明感がありツヤのない成形をされた肌部分。一方で水着部分は光沢のあるツヤで成形されており質感の違いを演出。眼も口もシールなどではなく、全てあらかじめこの色で成形されている。フィギュアを組み立てるのに「筆と塗料を全く必要としなくなった」というのは驚愕だ。

フィギュアプラモにはいくつもの課題がある。大まかに書けばメーカー側にとっては、素材をどうするのか?組み立てやすさをどうするのか?生産性をどうするのか?だ。ガレージキットと呼ばれるウレタン樹脂で製造された物では、マニア向けの少数生産の物でも商品にできるが大量生産には向かない。一般的な塗装済みフィギュア製品ではPVC(塩化ビニール)が主な素材となりこれは大量生産が比較的しやすいが、再生産・増産が即座に対応できないと言う弱点がある上に、経年劣化がプラスティック以上に避けられない。 一方で作り手にとっての課題は、組立と塗装にそれなりのスキルが必要なこと。肌色をきれいに塗って表現すること、服をきれいに塗り分けること、とりわけ難しいのは“眼”をきれいに塗装することだった。

それまでのフィギュアの眼は、自分で全てを塗装する場合は面相筆を使って描きこんでいた。が、正直これをキレイに描くのはかなりの技量が必要になる。対策として多くのメーカーが取り入れたのが眼を水転写デカールやシールにして貼り付けるという方式。さらに近年では塗装済み完成品フィギュア商品と同じように、あらかじめ眼をタンポ印刷するという方式がとられている物が多い。こうなると難易度はゼロで、可動美少女プラモデルブームに多くの初心者を呼び込めたのもこの事はかなり大きな要素であったと思う。

だがデカールや印刷の場合、顔(眼の部分)に造形的な凹凸が無いためどうしても立体感が乏しくなる。小さいスケールであればさして気にならないが、1/8とか1/6とかの大きさになるとこれは少々気になってくる部分だ。そこでバンダイはFigure-riseBustという胸像プラモシリーズにおいて、複雑な色分けがされているフィギュアの眼を、あらかじめ複数の色のプラスティックを組み合わせて一体成形する「レイヤードインジェクション(積層成形)」という技術によって製造した。眼は「白目・虹彩・虹彩の輪郭・瞳孔・ハイライト」の色で表現されるが、これをあらかじめ複数の色のプラを組み合わせ“眼”の状態とした1パーツにしている。(これは、模型趣味が無い人であっても、実際に見たら驚くこと請け合いだ)